6月14日で、岩手・宮城内陸地震の発生から17年となります。最大震度6強を観測した宮城県栗原市では、生きた教訓として残る災害現場で自然の脅威を伝える取り組みが続いています。

5月、「栗駒山麓ジオパークビジターセンター」で行われた研修会。栗原市の新人職員たちが岩手・宮城内陸地震について学ぶものです。今年4月に入った27人。その多くは地震発生当時、幼児だったため、地震の記憶がほとんどありません。研修は、地元で起きた大きな災害について自治体の職員として理解を深め、対応を学ぶことが目的です。講師は栗原市ジオパーク推進室長の佐藤英和さん。新人たちの先輩職員でもあります。

栗原市ジオパーク推進室 佐藤英和室長
「いつものように迎えた土曜日の朝、栗原市に激震が走りました。尊い命を含め、あらゆる生活の基盤が一瞬で姿を変えました」

2008年6月14日午前8時43分に発生した岩手・宮城内陸地震。震源地は、岩手と宮城の県境付近で、マグニチュードは7.2、県内では栗原市で最大震度6強を観測しました。内陸の直下型地震で山間部では大規模な土砂崩れや土石流などが多数発生。県内では14人が亡くなり、今も4人が行方不明のままです。

新人職員たちは地震で崩落し、当時の姿を残す場所を訪れました。冷沢崩落地と呼ばれるこの場所では、土石流や地滑りなど複合的な被害が発生しました。

ガイド
「ここは道路でした、向こうに急カーブになっていて、どうでしょう」

自分たちがこれから働く土地でどんな災害が発生したのか。新人職員たちは、地元自治体の職員としての自覚を強めたようでした。

栗原市の新人職員
「実際に見て、私が職員のうちにこういうことがもし起きたら、迅速に対応しないといけないと実感しました」
「実際、現場を見ることで、次の災害が起きた時に2次災害につながるかもしれない、など考えられるので、迅速に動いて2次災害を防ぐようにしなければならないと学びました」

研修で講師を務めた佐藤英和さんは、荒砥沢地すべりをはじめとするジオパークの整備に尽力した一人です。

栗原市ジオパーク推進室 佐藤英和室長
「単なる震災から復興して終わりではなく、これを伝承して伝えていく義務があると思い、これをこのような形で残してきました」

地震発生当時、佐藤さんは、震源地に近い栗原市金成地区にいました。強烈な揺れがおさまると、すぐに市の職員として避難所設営などを担当。被害の大きさは徐々に知ったといいます。

栗原市ジオパーク推進室 佐藤英和室長
「テレビをつけたところ、栗駒山の中腹でとんでもないことが起きていると、たくさんニュースで流れてきて、衝撃を受けたことを覚えている」

その後、栗原市が地すべり現場など災害のあとをそのまま残す構想を打ち出し、観光課の職員だった佐藤さんは強い思いで実現に奔走しました。

栗原市ジオパーク推進室 佐藤英和室長
「こういう活動が途絶えてしまったら、いつかまた地震が起きた時にここで暮らしている方々が間違いなく苦労する。起こった出来事を正しく伝えて未来の子たちが困らないようにしていきたい」

この日、佐藤さんは荒砥沢地すべりの現場にいました。行っていたのはジオパークのガイドたちの研修です。荒砥沢地すべりは栗駒山麓の荒砥沢ダム上流部で生じた日本最大規模ともいわれる地すべりで、土砂約7000立方メートル、東京ドーム54杯分が山から滑り落ちた場所です。

栗原市ジオパーク推進室 佐藤英和室長
「今見える崖の高さだけでも120mある。宮城県庁の高さが約90m、県庁よりも30m高い崖が目の前にある」

この日は、ジオパークの整備にあたってさまざまな助言をした東北学院大学の宮城豊彦名誉教授も、現地を訪れていました。

東北学院大学 宮城豊彦名誉教授
「地すべりのように普段なかなか見られないものは観察して感想を言い合って記録することが力になる。ここは保存されたおかげでそれができる場所になった」

宮城名誉教授は時間の経過とともに、災害の跡を残したことの重要性がさらに高まると話します。

東北学院大学 宮城豊彦名誉教授
「時が経つにつれて、いろいろな記憶が薄れてくるし、人も変わっていく。災害は「やってくる」「忘れる」。それが17年経った今もここに立って当時のことを追体験できる、非常に貴重な場所だと思います」

佐藤さんは、この場所で当時の出来事を感じ、自分の身に置き換えて考えてほしいと話します。

東北学院大学 宮城豊彦名誉教授
「実際、私たちは現地を見て、まず体感してほしいと思っている。たまたま17年前、こういう山地災害が栗原市で発生した。ただ、これは山を抱えている自治体であればどこでも起こりうること。自然災害を自分のことのように捉えて、明日からの防災減災に少しでも役立ててもらえれば」

17年前の災害を知らない世代が増えていく中、後世に伝える取り組みは続いています。

仙台放送
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