横綱昇進が決まった大の里。昇進伝達式が行われた。
28日の伝達式も取材に行った相撲ジャーナリスト横野レイコさんの解説だ。

相撲ジャーナリスト横野レイコさん(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」より)
相撲ジャーナリスト横野レイコさん(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」より)
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■「唯一無二」の決意 新横綱・大の里が掲げる不変の覚悟

第75代横綱・大の里、注目されていた“口上”は「横綱の地位を汚さぬよう、稽古に精進し、唯一無二の横綱を目指します」とし、去年の大関昇進時と同じ、“唯一無二”という言葉を使った。

関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」より
関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」より

■「まだ6割の力」 10年の横綱を予感させる大の里の圧倒的伸びしろ

現段階でも非常に強い大の里ですが、関係者によると“伸びしろ”がまだまだあるということだ。

横野レイコさん:多くの親方に私も場所中、取材すると、『まあまだ6割ぐらいだろう』と。これから横綱になって、7割、8割、9割、10割。これ『10年の間、綱を張れる逸材だ』と言っていました。

(Q.“唯一無二”という口上については?)
横野レイコさん:“らしい”。ぴったりだし、月曜日に横審の会見を受けて、大の里関の取材があって、『(唯一無二と言う言葉を)1回使っちゃったんで』と言っていて、いくつか候補はあったみたいなんです。色々考えたけれども、自分の言葉に一番ぴったりくるのは、“唯一無二”だったということです。

27日の夜、この赤いひ毛せんを敷いた場所で、部屋のみんなの前でリハーサルをしたそうです。それで大の里は『唯一無二にします』、師匠も『それがいいんじゃないか』ということで、堂々とかまずに立派に言えてましたよね。

(Q.リハーサルがあるもの?)
横野レイコさん:前日の夜に、この場所で緊張しないように、若い衆を集めて部屋のみんなの前で練習したそうです。でも1回だけだったそうです。

相撲ジャーナリスト横野レイコさん(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」より)
相撲ジャーナリスト横野レイコさん(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」より)

■言葉に込めた覚悟 歴代横綱の口上に見る伝統の変遷

“四字熟語”を使った歴代横綱の口上

第65代・貴乃花「不撓不屈(ふとうふくつ)の精神で力士として、不惜身命(ふしゃくしんみょう)を貫く所存でございます」

第66代・若乃花「堅忍不抜(けんにんふばつ)の精神で精進していきます」

第72代・稀勢の里「横綱の名に恥じぬよう、正々堂々、力の限り土俵の使命を全うする覚悟です」

第74代・豊昇龍「横綱の名を汚さぬよう、気魄一閃(きはくいっせん)の精神で精進いたします」

青木源太キャスター:第72代・稀勢の里は、大の里の師匠、二所ノ関親方にあたります。そういった意味で言うと割とシンプルというか、師匠に似てますよね。

横野レイコさん:若貴時代から大関、横綱の伝達式に、四文字熟語を使うのがはやりみたいになって、我々も口上でどんな言葉を使うかが、スクープ合戦みたいになっていたんですよ。

だから昔の伝達式の時は大変でした。今みたいにスマホがないので、国語辞典を持ち込んで、四字熟語がでたらすぐ調べて、結構大変だったんです。貴乃花関は大関昇進の時に、「不撓不屈の精神で大関として頑張ります」と言ったのを、横綱昇進の時は両方入れたんですね。「不惜身命を誓います」ということを入れたんですよね。だからみんな、ほとんどの方が四文字熟語を使っていたんですけれども、一旦、師匠の稀勢の里関の所で、『シンプルに行きます』と戻したんですけど。

“四字熟語”を使った歴代横綱の口上(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」より)
“四字熟語”を使った歴代横綱の口上(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」より)

■東西に鎮座する若き横綱 異なるスタイルで描く相撲界の新時代

青木源太キャスター:東西に横綱が座って、豊昇龍とのライバル関係っていうのも、この後楽しみですよね。

横野レイコさん:楽しみですよね。やっぱり番付は東西に番付がありますから、横綱が2人そろうことが一番いいし、しかもタイプが全然違うじゃないですか。これは楽しみだし、千秋楽の一番で豊昇龍の意地を見せてもらったので、豊昇龍も伝達式を見たと思いますので、これから激しい稽古して、横綱としてどっちが先に初優勝をするのかというのが楽しみですよね。

石戸諭さん:豊昇龍26歳、大の里24歳。まだまだいけますよ。

横野レイコさん(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」より)
横野レイコさん(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」より)

■僕も横野さんに取材されるような力士になるように頑張ります

青木源太キャスター:横野さんは入門当初から取材をしていたそうですね?

横野レイコさん:実は入門前に会っているんです!見てただきたい写真があるんですけれども、これ実は入門のひと場所前。おととしの3月場所の大阪場所の二所ノ関部屋の千秋楽パーティーでの写真なんですが、この時、二所ノ関親方にお話を聞こうと取材に行ったんですね。

当時、日体大でアマチュア横綱を二連覇している中村泰輝は色々な部屋からスカウトがあったので、記者の間でも、『どこの部屋に行くんだろう?宮城野部屋かな?伊勢ケ濱部屋かな?佐渡ヶ嶽部屋もスカウトしてるらしい』と、話題になっていたんです。

そんな中で3月場所の千秋楽で、この中村泰輝くんを見たから私もうれしくなっちゃって、ここに来るということは絶対この部屋に入門するということだと思うので、『二所ノ関部屋に決めたんですか!?初めまして』とあいさつして、『写真撮らせてください』と撮った写真がこれなんです。

親方の喜び、うれしそうな顔を見てください。稀勢の里関の取材をずっとしていますけれども、ご自身が横綱になった時よりも、もしかしたらうれしそうな顔していた。『泰輝!ちょっとこっち来い。写真一緒に撮ろう』とものすごくうれしそうだったのが印象的でしたね。

青木源太キャスター:これがまだ2年前。24歳で、相撲界に入ってまだ2年というのもすごいですよね。

横野レイコさん:すごいです。取材で『横野レイコといいます』と挨拶したら、またうまいこと言うんですよ。『横野さんのこと知っています。僕も横野さんに取材されるような力士になるように頑張ります』って。おべんちゃらも結構上手だなと。

横綱昇進がこんなに早いとは...私たちの想像を超えるスピードなので、相撲担当記者も、戸惑っている。師匠の稀勢の里関の場合は、15歳で入門して、横綱になるまで15年かかっている。だから伝達式も感無量というか、ようやく何度も何度も失敗してやっとという思いで上がって来たんですけど、大の里関の場合は、『えっもうなったの?』みたいな感じで、逆の驚きがありましたね。

横野さん提供写真(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」より)
横野さん提供写真(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」より)

■“5”のつく代は大横綱に? 双葉山から大の里まで続く「正攻法」の系譜

そして横野さんによると、“大物”になる予感がある法則があるということだ。

“5”がつく代は大横綱になる?
第35代横綱:双葉山
第45代横綱:若乃花(初代)
第55代横綱:北の湖
第65代横綱:貴乃花
第75代横綱:大の里

横野レイコさん:75代が大の里関、65代は貴乃花、55代は北の湖、45代は初代若乃花、そして35代は相撲の神様・角聖と言われた双葉山ですよ。全員大横綱。

青木源太キャスター:10代ごとに、まるで規則性があるかのように、大横綱が出てきてると。

石戸諭さん:他の大横綱もいるでしょ(笑)。ここに入ってない大横綱も!白鵬関はどこに!?

横野レイコさん:白鵬関は69代なのでまた違うんですけど…。大の里関が先に豊昇龍関より先に、74代になってもおかしくはなかったわけですよね。でも先に豊昇龍関が上がった。75代は相撲の神様が大の里のために導いたんじゃないかなって私は思います。

石戸諭さん:系譜はなんとなく似てますけどね。北の湖さんもそうですけど、いわゆる横綱相撲が取れるというか、正攻法の横綱、相撲取りって感じの、これぞ力士って感じの並びです。

“5”がつく代は大横綱になる?(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」より)
“5”がつく代は大横綱になる?(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」より)

■「ちゃんこの味が染みてない」 歴代最多への挑戦が始まる24歳の無限の可能性

青木源太キャスター:ちょっと気が早いんですけど、歴代優勝回数を見ていただきたいのですが、白鵬が45回で最多です。『巨人、大鵬、卵焼き』の大鵬が32回。”ウルフ”千代の富士31回、朝青龍、北の湖、貴乃花と続いてますけども、長い相撲の歴史で20回以上優勝しているのは歴代で6人しかいません。今、大の里は4回。この系譜にどんどん名を連ねて行くという可能性もありますか?

横野レイコさん:もちろんそれを期待しますし、年6場所あるんですが、半分優勝してもこれから10年「綱」を張れますから、30回、34回になりますよね。けがなく大横綱の道を歩んでほしいとみんなが期待していると思います。

青木源太キャスター:もちろんライバルとの戦いもあるし、けがとか体調管理も、しっかりしていかないといけないですけれども、何と言っても、まだ24歳ですよね。

横野レイコさん:考えてみたら入社して、22歳で大学卒業して2年生なんですよ、相撲界に入って。相撲界では“ちゃんこの味がまだ染みてない”と言われます。相撲界に入って、色んなちゃんこのだしがあって、お野菜のだしが出ておいしいちゃんこになっていくじゃないですか。スピード昇進で横綱にはなったものの、まだ2年なので、相撲界の色んなしきたりとか、分からないこと、たくさんあると思います。そのあたりの不安点はありますけれども、そこは二所ノ関親方が手取り足取り全部。15年かかって苦労した横綱で、横綱になってからも悲運の横綱でしたけど、そういう経験を大の里に『折に触れて教えていきたい』と言っていました。

“5”がつく代は大横綱になる?(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」より)
“5”がつく代は大横綱になる?(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」より)

■小学生の頃からの憧れ ファンから弟子へそして共に「横綱」となった理想の師弟関係

青木源太キャスター:先ほど色んな部屋からのスカウトがあったなんて話がありましたが、師匠の二所ノ関親方とはどんな師弟関係なのでしょうか?

横野レイコさん:小学校1年生から相撲を始めて、大の里関は横綱・稀勢の里関の大ファンだったそうです。だからぶれずに稀勢の里関の部屋に入りたい。それから茨城県に部屋があるということも、新潟の高校を出た大の里には、相撲に集中できる環境ということで、二所ノ関部屋はぴったりだったようですね。だから迷いなく入ってきた。

大の里関と話してると、師匠のことが大好きだっていう、まだファンの域を出ていないぐらいな感じで、憧れの二所ノ関親方のことを言われると、何でも『はいはい、師匠に聞いてみてください』ということばっかり言うので、本当に師弟関係うまくいってるんだなあっていう気がしますね。

横野レイコさん(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」より)
横野レイコさん(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」より)

■「稽古量より質を重視」 基礎運動を徹底する新横綱と茨城の地の利が支える自己管理

関西テレビ 加藤さゆり報道デスク:まだ稽古が足りないとか、稽古が嫌いだと言われていますけど、この辺りは横綱になってからも大丈夫なんでしょうか?

横野レイコさん:稽古嫌いではないんですよ。ただ、昔の稀勢の里関とか、昔の人の稽古量、若貴時代の稽古量って、40番50番取るのが当たり前みたいな感じでしたけど、今は全体的に10番とか、20番ぐらいで『すごいやった』みたいに、全体的な稽古量が減ってきてるいんですよ。

だからこの稽古量で、こんなスピードで横綱になったということは、ものすごい稽古をしたらどんだけになるんだっていう感じもします。

二所ノ関親方は稽古の番数は少なくても、入門してからプロの体に耐えられるように、『四股、鉄砲、すり足を徹底させた』とおっしゃっていたんですよ。部屋の中で誰よりも基礎運動をするのが、大の里なんですって。だから横綱になったからといって、遅く稽古場に下りるようなことがあったら、叱ると言っていました。

青木源太キャスター:番付が上がって、大関になったり、横綱になったりすると、いわゆるタニマチとの付き合いとかそういうのが増えるんですか?

横野レイコさん:もちろん当然あるんですが、部屋が茨城県ですから、東京に毎日通っていたら大変なので、その辺りは自然と出かける回数は少ないと思います。

関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」より
関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」より

■「師匠から継承する雲龍型」 麻もみから土俵入りまで、一門挙げて祝福される横綱の門出

史上最速で横綱に昇進した大の里ですが、30日についに土俵入りとなる。

横野レイコさん:注目は何と言っても、師匠の目の前で雲龍型の土俵入りをすることです。二所ノ関親方(稀勢の里)が教えるんですよ、雲龍型を。それもあした楽しみで、感動的です。お天気だといいですよね。天気予報がちょっとあんまりよくないみたいですけど。大の里関は晴れ男なんですって。だから期待しています。

青木源太キャスター:大の里は故郷・石川県への思いも非常に強いですよね。

横野レイコさん:震災もありましたし、相撲の盛んな県ですから、そういう思いを本当に背負って、石川県のことを大事にしてるんですよね。だからそういう思いで頑張っていくと思います。

(Q.横綱になったら待遇が違う?)
横野レイコさん:もう全然変わりますよ。大関で月給で300万円以上になりますし、全てが違いますね。付き人も3人だったのが、10人ぐらい。綱を締めるのには10人ぐらい必要ですし。夢物語ですよね。あしたは一門の力士が集まって、みんなで綱打ち、綱を作っていくんです。それだけ横綱が誕生することは一門の喜びでもあるんです。

青木源太キャスター:私たちもそれを見守って今後の大相撲に期待をしましょう。

(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」2025年5月28日放送)

今週の予定は(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」より)
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関西テレビ
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