大阪府内の80代の女性から現金をだまし取ろうとした疑いで、特殊詐欺で現金などを受け取る役割の「受け子」とみられるマレーシア国籍の男が現行犯逮捕されました。
警察庁が「特殊詐欺防止」の協定を結ぶ金融機関が多額の引き出しを不審に思ったことをきっかけに、逮捕につながりました。こうした「連係プレー」での検挙は大阪では初めてです。
■80代女性のもとにかかってきた電話…その中身とは
今月7日、大阪府内に住む80代の女性の自宅にある電話がかかってきました。
電話に出ると、「警視庁のヤマダ」を名乗る男は、次のように話しました。
【「警視庁のヤマダ」名乗る男】「あなたの口座が犯罪に利用されており、身の潔白を証明するためには、口座内の現金を調査する必要があります」
【「警視庁のヤマダ」名乗る男】「優先的に捜査してもらうためには、『検事のモリタ』さんとも連絡を取ってください」
こう持ちかけられた80代の女性が「検事のモリタ」だという人物に連絡を取ると、さらに指示を受けます。
【「検事のモリタ」名乗る人物】「暴力団から受け取った金かどうか調べるには口座の金をすべて引き出す必要がある」
こうして80代の女性は金融機関へ行き、複数回に分けてあわせて1600万円を引き出しました。
もちろん、これらはすべてうその話、指示で、典型的な特殊詐欺の手口です。
(手口は大阪府警への取材より)
■詐欺かも…気づいたのは警察と「特殊詐欺防止」の協定結ぶ金融機関の職員
ここで女性が金を引き出した金融機関の職員が、多額の引き出しが不審だと気付き、「犯罪被害にあっている可能性がある」と大阪府警に通報しました。
通報を受けた大阪府警が80代の女性に接触し、話を聞いたところ、連絡を取っている「警察官」や「検事」などの存在から特殊詐欺と判断。
引き続き80代の女性には「だまされている」ように装って連絡を取ってもらったところ、3日後に「ヤマダ」から「紙袋に1600万円を入れて、自宅の出入り口に置くよう」指示が来たため、警察が現金を入れずに紙袋を置いたところ、金の回収役「受け子」とみられる男が現れたため、詐欺未遂の現行犯で逮捕しました。
男はマレーシア国籍のオリバー・リム容疑者(20)で、日本語を話すことができず、警察は日本に来た理由や経緯のほか、特殊詐欺グループの上位の人間が背後にいるとみて捜査しています。
■金融機関がモニタリング「不審な取り引き」あれば警察へ通報 警察庁と一部金融機関が協定結ぶ
今回、「特殊詐欺かもしれない」と気づいた金融機関の職員が迅速に警察に通報したことで、被害を未然に防ぎ、犯人逮捕につながりました。
実は「ゆうちょ銀行」など一部の金融機関は、警察庁と協定を結んでいて、口座をモニタリングした上で、不審な取り引きなどを発見した場合、都道府県警に通報する仕組みが導入されています。
この仕組みが始まる前には、被害者から申告を受けて初めて捜査することが多かったということで、迅速に対応することで特殊詐欺を減らすことが狙いです。
協定に基づく情報提供がきっかけで逮捕に至ったのは、大阪府警では初めてだということです。
6月1日からは、大阪府警と大阪に本店を置く「池田泉州銀行」との情報共有も始まる予定で、より効率的な対応が期待できます。