宮城県が去年、検討を表明した土葬墓地の整備。その背景には重要性を増す外国人労働者への対応があります。同じ職場で働き続けることを前提にした技能実習制度は再来年、転職が可能な制度に変わります。優秀な人材に働き続けてもらうために、地方は今、変化を迫られています。
埼玉県本庄市にある「本庄児玉聖地霊園」。4月、一人のイラン人男性が埋葬されました。58歳で亡くなった、イスラム教徒のアジジ・ハーメッドさん。湾岸戦争の戦禍から逃れるため来日し、以降、日本で暮らしていました。
埋葬方法は、土の中に遺体を埋める「土葬」。死後の復活を信じるイスラム教では土葬以外は認められていません。全国で土葬を受け入れている霊園は少なくとも10カ所。首都圏の周辺が多く、東北にはありません。
およそ2億8000万人の人口を抱えるインドネシア。国民の9割はイスラム教徒。およそ2人に1人が30歳未満という若く豊富な労働力を背景に経済発展を続けています。
県は2年前、インドネシア政府と人材の受け入れ促進に向けた覚書を締結。去年は現地の若者に県内企業を紹介し雇用につなげるイベントをジャカルタで開きました。
宮城県 村井知事
「宮城県は皆さんを家族として迎え入れたいと思います」
2020年におよそ138.5万人だった宮城県内の生産年齢人口は2050年には100万人を下回ると試算されています。そうした中県内の外国人労働者は去年、およそ2万人となり、この15年で5倍以上に増えました。県がさらなる獲得に動く背景には、外国人労働者を受け入れる制度の変化があります。
日本の技術を教えるという国際貢献を掲げ、1993年に始まった技能実習制度。外国人は最長5年間の滞在が可能ですが、実習先を変える、いわゆる転職は原則、認められていませんでした。
政府はこの制度を2027年までに「育成就労」という新たな制度に切り替えます。目的に、人材の確保を明記。一番大きな変化は同じ職種での転職を認める点です。
「私にチャンスをください。よろしくお願いします。3年間、5年間一生懸命頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします」
地方の企業にも人材を供給し、一定期間の「労働」を保証してきた技能実習。育成就労では、地方から首都圏へ人材が流出することが懸念されています。
外国人労働者に選ばれる地域になるために。土葬墓地の検討は、避けては通れないものになっています。
宮城県 村井知事
「『多文化共生社会』と言いながら、目が行き届いていないのは行政としていかがか。土葬墓地の整備は批判があってもやらないといけない」
早稲田大学の店田廣文名誉教授によると、イスラム教徒は全国におよそ35万人、宮城県内には4600人が暮らしていると推計されています。
一方で、土葬墓地の整備をめぐっては反対の声も上がっています。
「土葬反対!村井知事やめろ!」
外国人への依存が深まる中で、私たちの社会はどうあるべきか。議論をする時期が来ています。
イスラム教徒のイラン人
「日本では土葬はしないんですけど、土葬じゃないとムスリムは駄目。イスラム教とかいろいろな宗教がある。死んだときは宗教に合わせたやり方じゃないと良くない」
日本人にも、外国人にも選ばれる地域になるために。地方も変化を求められています。