テレビ新広島は開局50周年を迎えました。
これまでお伝えしてきたニュースの中から広島の歴史をたどる「あのニュースは今」。
1994年の広島アジア大会のレガシーに迫ります。

1994年10月、アジア大会の歴史の中で初めての「地方都市開催」となった広島アジア大会。
42の国と地域からおよそ7000人が広島にやってきました。

■都市基盤の急速な整備

「スポーツの祭典」に広島が沸いたその背景には都市基盤の急速な整備があります。
メイン会場のビッグアーチだけでなく、水泳競技が行われたビッグウェーブの建設のほか県立総合体育館グリーンアリーナが整備されました。

また、市内中心部と広域公園を結ぶアストラムラインに加え大会の前年には県内の山陽自動車道が全線開通、広島空港が開港したのもこのタイミングでした。

大会本部が置かれたリーガロイヤルホテルや関係者の宿泊施設にもなったプリンスホテルも同じ年にオープンしています。
まさに、広島の発展はアジア大会で大きく飛躍したといっても過言ではありません。

■あれから30年

あれから30年あまりが経過。
老朽化が進む広島広域公園を広島市は今年度からおよそ27億円をかけて整備します。
大型ビジョンなどハード面の改修ほか大型遊具の設置などが検討され、再びをにぎわいを生み出せるのか期待されます。

【久保田千晶記者】
「今もまだ進化を続けているのはアストラムラインです。いまは、折り返し地点になっていますがここから延伸されることが決まっています」

広域公園前駅からJR西広島駅まで延ばす計画で、2036年度ごろの開通を目指しています。
建設にはおよそ760億円、それに見合う利用客が確保できるのかといった課題も残されています。

■今も続く「一館一国運動」

一方、広島アジア大会の”目に見えない”レガシーは地域の身近なところにありました。

【久保田千晶記者】
「きょうは当時を知る人たちが集まって打ち合わせがおこなれています」

集まっていたのは公民館の歴代館長など地域の人たちです。
この日、届いたのは中東・オマーンからの航空便。
中身は、現地で日常的に食べられているというヤシの実「デーツ」です。

「あはは」「どうです味は?」

来月行われる公民館のイベントでオマーンに関するブースを出し来場者に配ります。
オマーンとのつながりはアジア大会から。
「一館一国・応援事業」で広島市内の公民館ごとに応援する国が割り当てられました。

【広島オマーン友好協会・福島和宏会長】
「オマーンはどこにあるんだ?から始まってちんぷんかんぷん何もわからない。東京の(オマーン)大使館にお願いして資料を送ってもらって勉強した」

福島さんたちは大会中会場でオマーンの選手を応援。
母国から遠く離れた広島の地で国旗を手に応援してくれた日本人の存在は選手にとって大きな支えになりました。

【広島オマーン友好協会・福島和宏会長】
閉会式が近くなって大使館から突然電話があって選手団の団長がぜひお礼に公民館にいきたいと「うれしかった良かった」とおっしゃって」

■「広島オマーン協会」設立

その縁で「広島オマーン友好協会」を設立。
オマーンの要人が日本を訪れる際は外務省から依頼され広島を案内するなど繋がりが続いています。

一方で当時を知る人たちも年齢を重ねました。

【広島オマーン友好協会福島和宏会長】
「これからのちをどうするかは大きな課題です。宿題です」

大会当時にあった62の公民館のうちイベントなどの国際交流を続けているのは5つ、現地の衣装や記念品などを常設展示しているのは10の公民館でした。

【広島オマーン友好協会・福島和宏会長】
「(建物など)ハードの遺産はやがては壊れていくしなくなっていくが、こういうソフトの遺産はうまく引き継いでいけば長続きするものだな」

ここでは国を超えた交流が確かに、市民生活に根付いていました。

■アジア大会 広島の都市基盤を一気に整備

アジア大会のレガシーについてスポーツを生かした街づくりを研究する専門家は…

【県立広島大学・地域創生学部和田崇教授】
「スポーツ大会というものは都市の基盤を作る大きく変えるチャンスになるものですので、そういうことを理解されたうえで当時の行政あるいは経済界などが大会誘致し、それを通じて都市基盤を一気に整備したとそのように評価できると思います」

特に広島開催だからこそ強いメッセージ性があったと評価します。

【県立広島大学・地域創生学部和田崇教授】
「アジア大会がいかに平和の大切さ原爆の悲惨さを理解してもらえるかそういう機会にしたいというのが企画段階からありました」

■被爆の実相に触れた選手たち

大会期間中、選手らは平和公園へ足を運び、被爆の実相に触れました。

【県立広島大学・地域創生学部和田崇教授】
交通基盤施設あるいはスポーツ施設などの利用が行われ市民生活に役立っているという意味ではその影響は持続している。市民の国際感覚とか国際理解はそれをきっかけに大きく進んだと評価できます」

広島アジア大会は、広島のインフラ整備のきっかけになっただけでなく、そのレガシーは今もなお進化し続けています。

<スタジオ>

一方で、このアジア大会は、広島市の財政を圧迫し、後に財政非常事態宣言を出すことになるなど、そのレガシーだけではなく、負の遺産も残ってしまったということなんです。

今も続いているアストラムラインの延伸について、専門家は、やはりコスパが大事だと話しています。お金や利用者数などを時代に合わせながら、後世に負担をかけないようにしていく必要があると話していました。

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