4月15日、一人のアスリートが今シーズンをもって競技者としての第一線を退くことを発表した。
女子100mハードルの元日本記録保持者、寺田明日香(35)。

史上最年少18歳にして日本選手権を制したものの、度重なる故障などを理由に寺田は23歳で一度現役を引退。結婚を経て24歳で長女の果緒さんを出産すると、母親としての日々を送る中で彼女は「トラックにはもう戻らない」、そう思っていた。
しかし、26歳で転機が訪れる。
アスリート第2章は愛娘の存在が後押しに
高校時代からの親友で7人制ラグビーのリオ五輪代表であった桑井亜乃に誘われ、ラグビーを始めた寺田は、キャリア半年ながら、当時の日本代表に欠けていた「スピード」という新たな武器をもたらし、7人制ラグビー日本代表のトライアウトに合格。

将来的な代表入りが期待される“練習生”として活動する中で、新たな目標を抱きはじめた。
寺田:
東京五輪で活躍する母親の姿を娘に見てもらいたい。
引退した時には陸上競技を嫌いになっていたが、ラグビーを通じてもう一度走ることが楽しいと思えるようになったという彼女は、28歳で再びトラックに戻る。
寺田:
母親が好きなことに向けて頑張っている姿を見せたほうが、きっと彼女の中に残るものがあると思った。
愛娘・果緒さんの存在を原動力に、復帰後わずか9カ月で13秒の壁を破る日本新記録を樹立。世界ランキング30位となり、40位までに与えられる東京オリンピックの切符を目標通り手にした。
しかし親子の夢だった東京オリンピックはコロナ禍の影響を受け無観客開催。
100mハードルで日本勢21年ぶりとなる準決勝進出を果たすも、その姿を果緒さんに会場で見届けてもらうことはできなかった。

集大成は“約束の場所”で
陸上競技と向き合う母の姿をそばで見てきた果緒さんは、今年10歳となり、陸上競技を始めた。入れ替わるように寺田は東京で世界選手権が行われる今シーズンで区切りをつけることを決意。

その世界選手権の会場は東京オリンピックと同じ国立競技場。
出場のためには7月に行われる日本選手権までに自己ベストの12秒86を上回る参加標準記録12秒73を突破し、日本選手権で3位以内に入ることが求められる。
4年前かなわなかった親子の夢を最後に実現するべく、5月11日、母の日に挑んだ木南道隆記念陸上。
母の日のプレゼントとして果緒さんから贈られたお守りとともに臨んだレースだったが、向かい風というコンディションの下、13秒08という結果に終わり、参加標準記録突破とはならなかった。

それでもレース後に果緒さんから贈られた手作りのメダル。そこには“約束の場所”国立競技場が描かれていた。

第一線を退く今秋からは次世代にバトンをつなぐ活動をしていきたいと語る寺田。
世界選手権に出場して陸上競技を始めたばかりの果緒さんにしっかりとバトンをつなぐため、ラストシーズンで寺田は自己ベストを上回る高いハードルに挑戦し続ける。
『すぽると!』
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