2年ぶりのでか山巡行となった石川県七尾市の青柏祭。祭りを成功させようと町の「祭人」たちが一丸となって奮闘する姿を追った。
「祭人」たちの決意
青柏祭の主役、でか山が動く少し前。曳手たちが、総代代行・桶成隆久さんの家で酒を酌み交わしていた。「これは髙木さんが還暦の時に作ったタオルで」鍜冶町の前総代・髙木純二さんは2025年1月、病に倒れ亡くなった。桶成さんは、総代の代行として髙木さんが着ていた半纏を身にまとい、祭りに参加する。「本当に身の引き締まる思いです」

観客と曳手にけがをさせることのないよう、でか山を安全に神社に送り届けるのが総代の役目だ。3つの町のうち、先陣を切って鍜冶町が大地主神社に向かって出発した。

2年ぶりとなるでか山を一目見ようと、多くの見物客が神社までの道を埋め尽くした。「みんな一体となっている感じがして、こういう祭り、初めて見たのでよかったです」無事にでか山を納めることができ、桶成さんは安堵の表情を浮かべていた。続いて、府中町のでか山が出発する。
復興の象徴は3台のでか山
6時間かけ大地主神社に到着した。3台のでか山が勢揃い。本格復興を目指して再始動、その象徴になる光景である。大地主神社で、以前出会ったでか山大好きっ子、髙山葉槻くんと再会した。相変わらず、でか山が好きでたまらない様子だ。「大きくなったら木遣りやりたい?」「うん」将来が楽しみだ。

魚町、府中町のでか山が戻った後、鍜冶町のでか山も戻る。前総代・髙木さんの遺影と共に再びでか山が動く。桶成さんは「自分も楽しんで、周りの人も楽しんで…その方が髙木さんも喜ばれると思うし、しんみりしながら祭りしとっても『お前ちゃ、何しとるがいや』って、あの人やったら言うと思いますよ」と話した。
伝統の技「辻回し」と町の連帯感
でか山が一旦、曲がり角で停まった。「今、4つの車で前進してきました。この状態で90度曲げるというのは無理なもんですから、大梃子という道具を使って山がグーッと曲がると…」でか山には、進むための4つの車輪に加え「地車」という方向転換のための車輪が備わっている。大梃子と呼ばれる角材で、テコの原理を使い進行用の車輪を一旦浮かせるのだ。

でか山を90度回転させる。これを「辻回し」、または「大梃子」と言う。他の町のでか山も同じ。道幅が狭いため、建物や電柱にぶつけないように回すには経験と技術、度胸が必要だ。最後に桶成さんは「でか山を納めて、6日に無事山を解体して蔵に全部しまった後で、私の今年の総代の役目は終わったかなという、胸を撫で下ろしたという気持ちですかね」と安堵した様子だった。
祭りを支える次世代のまなざし
間近で見たでか山は、まるでビルが動いているような迫力で驚いた。そんな巨大なでか山を動かすためにおよそ100人が携わっている。それほどの大人数が関わりながら、なぜ見事に統制がとれるのか不思議だったのだが、理由として一つ感じたのは「子どもたちのでか山への憧れ」だ。幼心に見るでか山の大人たちの雄姿に尊敬を抱き、「大きくなったらでか山に携わりたい」と、願いながら成長する。こうして生まれる「町の連帯感」こそが、でか山運行の原動力ではないか。七尾もまだまだ復興の途中であるが、今後もこの団結力で乗り切ってもらいたい。
(石川テレビ)