テクノロジーの力で農作物がアート作品に変わる。
これまでにない農業と福祉の連携に迫りました。
日本有数の活火山「桜島」をのぞむ鹿児島市。
市街地から少し離れたのどかな場所に、障害のある人たちが働く農場があります。
創業2年目のスタートアップ企業「BROTHER」の代表、藏(くら)脇健太さんは、「農福連携にメタバースや新しいテクノロジーを組み合わせた、障害をお持ちの方でも農業だけではなくてクリエイターとしても稼いでいける、そういう力を身につけながら社会に参画していけるような形を目指している」と話します。
“働いた対価が健常者に比べて安い”という課題の解決を目指し、この農場で実証実験を行っています。
就労継続支援農場で働く湊豊浩さん:
楽しいです、すごく。普段、農業をしているが、こういう機会に会えてすごく興奮している。
藏脇さんが見据える、未来の農福連携の形とは…。
藏脇さんが訪れたのは、小松菜やハーブなどを栽培から出荷、販売まで行う「イーエヌ水耕栽培」。
障害のある人たちが働く就労継続支援農場です。
ここで行っているのは、「BROTHER」と共同開発した「アグリバース」というメタバースのプラットホームを使い、収穫した野菜などの販売を目指すというもの。
協力するのは、この農場で働く、湊豊浩さん。
2人が行っているのは、3Dカメラのアプリを使った小松菜の撮影。
ゆっくりとカメラを動かしながら丁寧に撮っていきます。
撮影した物を見てみると、葉の細かい部分まで見え、とても新鮮なのが分かります。
撮影したデータは藏脇さんが編集。
きれいな3D画像にしてから、商品としてメタバース上に載せます。
アグリバースで販売予定のメロンは、クリックすると繊細な編み目までくっきりと見え、まるで作品のよう。
実は、アグリバースでは農作物を「商品」として販売するだけではありません。
BROTHER・藏脇健太代表取締役:
(3Dデータを)NFT化したものです。NFTがほしい、買いたいないう人には、QRコードから販売に飛んでもらい、URLで共有したりというのを今準備している。
デジタル世界での本物を示す証明書「NFT」を発行し、唯一無二の「作品」としても販売。
データの商用利用なども視野に入れています。
イーエヌ水耕栽培で働く湊豊浩さん:
1年を通して(農作物の)育ち方や、お店に出すときは、きれいな部分を出していると伝えたい。
農場の代表は、障害のある人たちの自信につなげることで、農業と福祉、双方の問題解決に期待を寄せています。
イーエヌ水耕栽培・茶圓武志代表取締役:
仮想空間上でしっかり現実の物も売れるのが楽しみと彼らは言っているので、“農家はクリエイター”だというところを、障害がある子たちを通じて世の中に発信できていけることによって、他のクリエイターとも連携できたら一番いいかなと思っている。
藏脇さんは今後、メタバース空間にアバターとして参加してもらうことで社会とのつながりのきっかけを増やしてもらいたいといいます。
BROTHER・藏脇代表取締役:
「こういうことをやったから、うちの子が社会に自信を持って参画できるようになった」など、そういう声が生まれて、より地域の経済としても「私たちは一緒に社会を作っていきたい」という文化が出てくるとうれしいと思い、今チャレンジしている。
テクノロジーの力で、農家とクリエイターの二刀流プレーヤーの誕生へ。
アグリバースは、6月末のサービス開始を目指します。