高校生がゲームを活用して、町おこしのプランを練り上げます。
町の課題を洗い出し、解決策を練り上げる。
シミュレーターとして使うのは、あの人気ゲーム。
大人も巻き込む高校生の本気の都市計画とは。
福井・坂井市が2023年度からスタートした「デジタル帰宅部」。
坂井市にゆかりのある高校生が、自分たちの住む町をよくしようと観光施策などについて提言し、実現化を目指す都市計画事業です。
福井・坂井市 企画政策課・長谷川正広課長:
人口減少の社会において、坂井市内で学んだ高校生が将来、坂井市に定住し、勤めてほしいのが狙い。そのために「坂井市の魅力に気づいてほしい」というのが理由。(坂井市の)ファンを増やしたい。
課題は、坂井市の観光地、丸岡城・東尋坊・三国湊をより活性化する施策を調べ、考えること。
総合コンサルティング企業である「アクセンチュア」が、坂井市や地域の市民団体と並走しながら高校生の活動をサポートしています。
最終プレゼンには、建築やクラフトを楽しめるシミュレーションゲーム「マインクラフト」を活用。
ゲームを活用した教育活動を行うタツナミシュウイチ氏も協力し、メタバース上に再現した3名所に自分たちのアイデアを落とし込み、視覚化します。
3チームに分かれ、約半年間続けた部活動。
集大成として、市長への報告会が開かれました。
三国高校2年・木村魁里さん:
「地元民が丸岡城に来る理由」を作ることが必要。これを改善するために、私たちは屋形船を提案します。
地元住民が足を運ぶことを狙いに提案した屋形船。
中には漫画喫茶を作りたいと言います。
三国高校2年・内田幸歩さん:
気軽に過ごせる場を提供すれば、若者の興味を引き付けられるのではないかと考えました。
さらに、他の観光地の食べ歩きの成功例を参考に、越前のかにを使ったカニクリームコロッケを提案する人も。
通りには、なぜか“寿司のシャリ部分”だけを表現した白いベンチが。
金津高校3年・坪川勢和さん:
私たちがこの上にやることで、「お寿司」、そして「SNS」、両方の「ネタ」になることができる。それらをインスタグラムやTikTokで拡散してもらい、いろいろな人に知ってもらおうと思います。
さらに、地元の歴史的建造物・旧森田銀行を活用した高校生運営のカフェの提案も。
丸岡高校2年・渡邉芽姫さん:
運営に関わる高校生としては、経済と地域を理解する機会になること、お客さんとしては、旧森田銀行やその地域に来たことがない人が来るきっかけになると考えています。
福井 坂井市・池田禎孝市長:
私らにとってもありがたいというか、素晴らしい政策だったなと思う。旧森田銀行を使ったレストラン、これはぜひみんなでやってほしいなと思う。お金は用意しますので、ぜひやってほしい。
こうしたアイデアは市政への反映を目指し、さらにブラッシュアップを重ねていきます。
丸岡高校2年・渡邉芽姫さん:
やる気に満ちました。「どこに」「誰に」「どんな価値があるのか」「どこに焦点を絞るのか」がすごく難しくて、でもそれを考えている時間が楽しかった。
坂井高校2年・新谷太一さん:
今までは「自分が住み心地が良くていいな」で終わっていたが、それを「他の人にも共有したい」と思うようになった。(この先も)積極的に携わっていきたいなとは思う。
坂井市は2024年、新たに「アナログ企画部」と題した高校生のアイデアを実践に移す事業もスタート。
提案の実現性や有効性を検証する活動も始めました。
東京大学大学院 情報学環 客員研究員・タツナミシュウイチ氏:
ゲームの空間の中で終わらせない。みんなで考えたものをちゃんと具現化する。アイデアをきちんと、自治体に対してアピールしていく。そして、それを実現させて、そのフィードバックを自分たちの糧にするという、貪欲な学びの姿勢が彼らにはあったんじゃないかと。真剣に大人も受け止めて、「分かった。じゃあ、これはお金出そう」となってくれる。まさに地方創生の舞台そのものだと思う。