長崎県壱岐沖で3人が死亡した医療搬送用ヘリコプターの事故からあすで1カ月です。国の運輸安全委員会は2日、これまでの調査の結果、機体を制御する備品が破断していたと明らかにしました。一方、離島で暮らす人たちはこの事故をどう受け止めているのか、唐津市の離島の診療所を取材しました。
【住民】「島だとやっぱり急に命に関わるようなことが起きたらもう終わりかなっていう。どこの人でも離島はそういう思いはあると思います」
4月6日、長崎県の対馬を離陸した医療搬送用のヘリが壱岐沖の海上で見つかり、3人が死亡した事故。
国の運輸安全委員会は引き揚げた機体から回収した装置などの調査を続け、今月2日、機体後方の部品に破断があったと明らかにし、機体は不時着水したとしました。破断していたのはテールローターのコントロールロッドの前方部。機体を制御するのに重要で破断すると事故が発生する恐れがあるとしています。
一方、運航会社である佐賀市のエスジーシー佐賀航空は、現在ヘリの運航を自粛しているということです。
県内では唐津市に7つの離島があります。
【野口貴史】「唐津市の加唐島に来ています。これから離島の医療の現状について取材します」
呼子港から船で20分ほどの場所にある加唐島。
唐津市によりますと島には59世帯が住んでいて住民は半数近くが65歳以上。県の平均と比べても高齢化が進んでいます。
加唐島の医療体制は…
【坂本正一郎区長】「診療所の先生もおられるからですね大丈夫とは思うんですけど、先生がおられないときはもう仕方がなかですね。我慢するか呼子の方に行くかですね」
島にある唯一の医療施設が加唐島診療所。医師が住み込みで常駐し看護師らと3人で診察などにあたります。所長の医師・牛島宏貴さんは加唐島を担当して3年目です。
【牛島宏貴所長】「ほとんど慢性期の疾患が多いですね急病とかはやっぱり担当するんですけどいかんせん検査ができるものが少ないからですね。非常に苦労しながらやっております」
島で暮らす患者のカルテは唐津市や離島の病院同士で共有し、牛島所長が島を離れても別の医師がオンラインで対応できる体制を整えています。しかし、診療所の設備には限界もあるといいます。
【牛島宏貴所長】「私たちへき地医療に携わる人間みんなそうですけども、医療リソースがかなり限られていて搬送の手段もかなり限られている」
島にはない総合病院などで診察や治療が必要な場合、緊急性に応じて船やヘリでの搬送が検討され、脳卒中といった一刻を争う事態にはヘリを要請します。加唐島では去年ヘリによる搬送はありませんでしたが、過去には、年間4件ほど運航した年もあったということです。
医療用ヘリの事故を住民はどう受け止めているのでしょうか。
「ほんの近くでこういうことがあったからですね、びっくりしましたよ」
「もしもて思うときはやっぱり心細かね。救急で行かないと、と思った裏に事故があったというのはやっぱり」
「まあけど、命に関わるようなあれがあったら覚悟はきめないかんでしょうね」
離島特有の医療体制を理解しながらも、住民にとって衝撃なできごとになった今回の事故。一方で牛島所長は船よりも30分ほど早く搬送ができるというヘリの存在が離島診療の支えにもなっていると話します。
【牛島宏貴所長】「救急ヘリを飛ばしてほしいと願う瞬間も多くて私たちにとっても患者さんにとってもドクターヘリっていうのは非常になくてはならないインフラ、欠けてはならない最後の砦のような存在だという風に思っております。」