年間約1万1000人~1万5000人の乳幼児がかかる川崎病。原因不明で全身の血管に炎症が起き、対処法もない。適正な治療が受けられない場合は心臓に後遺症が残ることもあるという。症状や受診の目安を医師に聞いた。
原因不明、対処法なし
川崎病について話を聞いたのは、福井愛育病院小児科の石原靖紀院長。「熱が出る熱性疾患で、遺伝的要因や環境的要因が関係しているといわれているが、原因は突き止められてない」とする。

日本人は罹患率が世界一
1967年に川崎富作博士によって初めて報告されたた川崎病。アジア人や日系人に多く見られ、遺伝的要因からか日本は罹患(りかん)率が世界一と報告されている。かかりやすい年齢は生後6カ月から5歳未満で、女の子よりも男の子がかかりやすいとされている。

心臓に後遺症が残ることも
「心臓に後遺症ができるのが一番怖い」と石原医師。「治療が適正にされなかった場合は20%から25%程度の割合で冠動脈瘤といって心臓の周りの冠動脈にこぶ=動脈瘤ができるといわれている」。

一般的に、川崎病にかかると10日~2週間の入院が必要になる。発熱が10日~11日続くと冠動脈瘤が出現する可能性があるため、9日目ぐらいまでに熱を下げられるかが一つのポイントになってくる。
福井県内に住む1歳4カ月の女の子は、1週間程度熱が下がらず当初は風邪と診断された。しかし、全身に強い発疹が出て川崎病だと分かり、入院することになった。

見逃せないサイン
石原医師は「初めは必ず『風邪でしょう』と言われるが、見逃せないサインは主に6つある」という。
<川崎病みられる症状のサイン>
▼5日以上続く発熱
▼発疹:特にBCGを接種した周辺の赤み
▼目の充血
▼真っ赤な唇とイチゴのようにブツブツの舌
▼手足の腫れ
▼首のリンパ節の腫れ
この6つの症状のうち5つ以上が当てはまれば、川崎病と診断される。石原医師は「風邪っぽくない症状があり心配だったら、何度でもいいから小児科を受診するのが良い」とする。

感染症との因果関係は調査研究中
患者数は全国で年間1万1000人~1万5000人程といわれ、年々、患者数が増えている。1980年代の3度の大流行の後、感染者が年々増え、2018年には過去最高の1万7000人を超えた。しかし、2009年の新型インフルエンザの流行期と2020年の新型コロナウイルス感染症の流行期に大きく減少。特に顕著だった2020年のコロナ禍には前年比で35.6%、患者数が減少した。

石原医師は「少子化なのに患者数がどんどん増えたので、稀な病気じゃないという認識になっていたが、コロナ禍で3分の2ぐらいに患者数が減少した。感染症の証拠はつかめていないが、(遺伝や環境的要因のほかに)感染症もかかわっている可能性がある」とする。こうした患者数の変化から病気の原因を解明し新たな切り口につなげようと、現在、調査や研究が進められている。

とはいえ、原因不明で明確な対処法もない川崎病。後遺症を防ぐためには、早期発見と早期治療で「治りにくいただの風邪」だと自己判断せずに、気になる症状があれば医療機関を受診することが大切だ。