特集は「保育園の洗礼」です。子どもが保育園や幼稚園で初めて集団生活をする中で、風邪などにたびたびかかることを指す言葉です。会社などを頻繁に休まざるを得ない保護者も悩みが深い問題。職場でも少しずつ「休みがとりやすい」体制作りが進んでいます。こども園と企業を取材しました。
■初めての集団生活で「洗礼」
園児:
「いただきます」
長野市のころぽっくるこども園の年少クラスです。4月に入園した子どもたちも、少しずつ慣れ始めましたが。
4月に入園した園児:
「ママがいい。(楽しいのは)おままごと」
「たのしい。げんきにすごしたい」
こども園ではこまめに手洗いをするなど、日常的に感染症への対策をしていますが、この時期は特に気を付けています。
3歳未満時クラスでは1日2回の検温も。
その理由は「保育園の洗礼」です。
数年前から使われ始めた言葉で、子どもが初めて集団生活をする中で、風邪などにたびたびかかることを指します。
■保護者はすぐに何度も休むことに
保護者(子どもが2歳半):
「1カ月のうち2週間通えればいいくらいで、ひどいときは3日とか4日しか通えなかったときもありましたけど」
保護者(子どもが年長と小3):
「0歳で預けたので、最初の頃は1か月に1回は必ず呼び出しがあって、熱が出て仕事を休むのが続いた」
子どもの体調も心配ですが、保護者は看病などのために会社を頻繁に休まざるを得ないことにも悩んでいます。特にこれまで育休中だった保護者は職場復帰後、すぐに何度も休まなくてはなりません。
慣らし保育中の保護者:
「5月から職場復帰なんですけど、熱出ちゃって呼ばれたりとか、自分の有給もどのくらいあるかなとか把握しながらやらないとと思って、ちょっとそこが不安なところ」
「これから仕事が始まります。まだ小さいので免疫がないので、それ(保育園の洗礼)は覚悟してがんばっていきます」
■医師「洗礼は避けて通れない」
「保育園の洗礼」を避けることはできるのでしょうか?
長野県松本市の小児科には「保育園の洗礼」を受けた子どもたちが受診していました。
高島小児科医院 水野史医師:
「経過からいっても胃腸炎、感染性胃腸炎」
こちらの子どもは園内で流行しているという「感染性胃腸炎」と診断されました。
医師は「保育園の洗礼は避けて通れない」と話します。
高島小児科医院 水野史医師:
「細菌やウイルスも、今までよりもかなり多く入ってくることになります。いろんな病原体に接して、咳・鼻ですとか、体も弱いものですから、熱を出す回数も多いと思います。そういうことを繰り返して、体が丈夫になっていく。免疫、抵抗を作ってくっていうことになりますね。どうしても避けて通れないところですよね」
入園後3カ月ほどは毎週のように発熱し、その後も季節性の感染症などで、1年ほどは頻繁に体調を崩す子どもも多いということです。
■「復帰して1週目にコロナに…」
避けて通れない保育園の洗礼。子どもの体調不良で急に仕事を休まざるを得ない現状を、職場も理解する必要があります。
八十二銀行松本営業部の永田唯奈さん(31)。2022年3月に双子の男の子を出産し、2024年4月に復職しました。
しかし、「保育園の洗礼」が。
八十二銀行松本営業部 永田唯奈さん:
「本当に、復帰してまず1週目で(子どもが)コロナにかかって1週間お休みをして、その次また1週間インフルエンザにかかってお休みするなどして、実体験として本当に大変だったなというような思いはあります」
共働きだった永田さん。夫は当初、単身赴任をしていたため1人で子育てしていて、頻繁に会社を休む必要がありました。
八十二銀行松本営業部 永田唯奈さん:
「(同僚などに)本当に申し訳なくて、『すみません』って話をしていたんですけど、ある時、職場の部長から『すみません』なんて言ってたら今の時代逆に良くないから、当然ですという顔で休んでればいいんだからと」
■1分単位で取得できる有休を整備
共働きも多い八十二銀行。2022年に子どもが満2歳になるまで1分単位の有給休暇を10日分使える制度を設けました。
八十二銀行人事部ダイバーシティ推進室 北條有咲さん:
「保育園からいきなりお迎えの電話が来た時とかに1分単位で使えるので、そういう意味ではすごく保育園の洗礼に対しては使いやすい制度になっているかなと思います」
永田さんも子どもが胃腸炎で入院することもありましたが、会社の理解もあり働き続けることができたということです。
八十二銀行松本営業部 永田唯奈さん:
「職場の仲間もすぐにフォローしてくれるような体制で支援してくれたので、なんとかやってこれたかなっていうふうに思います」
■「出社時は精いっぱいの貢献を」
また、育休中やその前後で人事部や上司と面談する時間を設けているほか、管理職などへの研修も行い、急に仕事を休んでも問題ない職場づくりを行っています。
八十二銀行人事部ダイバーシティ推進室 北條有咲さん:
「(急な休みなどが)発生するときはある制度を活用して乗り切ってほしいっていうところと、あとは出社できている時には自分にできる精いっぱいの貢献もできるように意識してほしいっていうことを伝えています」
■理解を深め、休みやすい体制づくりを
職場復帰して1年が経つ永田さん。現在、3人目の子どもを妊娠中で、間もなく産休に入ります。その後、再び復職する予定です。
八十二銀行松本営業部 永田唯奈さん:
「周りの人がすごく理解があるので同じ環境であれば3人目も育てられるかなと思って選択したっていうのはありますね」
八十二銀行人事部ダイバーシティ推進室 北條有咲さん:
「もしかしたら自分がこの後、介護に直面するかもしれないし、病気になって治療しないといけなくて、それでも仕事続けなきゃいけない状況にいつ誰が陥るかわからないので、いろんな私生活の事情があるっていうところを皆さんに理解していただいて、お互いさまっていうところの気持ちは(八十二銀行では)どんどんいろんな職場で育まれてきているなっていうのは感じます」
「保育園の洗礼」だけでなく、「介護」などでも仕事を急に休まざるを得なくなります。
一方、「急な休み」により職場もその分、負担が増します。
八十二銀行の担当者は労働人口も減る中で誰もが働きやすい環境を作るために、社会全体が理解を深め休んだり早退したりしやすい体制づくりをしていく必要があると話しています。