2024年12月の火事で焼失した長野県佐久市の老舗の酒蔵が、酒造りを再開しました。手を差し伸べたのは佐久地域で酒蔵を営む仲間たちです。
タンクの中でかき混ぜているのは、日本酒造りに使う酵母です。
古屋酒造店・荻原深さん:
「やっぱり疲れますね、酒造りは。3カ月なまっていた体ですので、こたえます」
作業していたのは、佐久市の酒蔵「古屋酒造店」の5代目・荻原深さんです。特別な思いで、16日の仕込みを行っていました。
古屋酒造店・荻原深さん:
「火災直後には酒造りのことって何も考えることはできなかったので、本当に感慨深い」
激しい炎に包まれた建物。酒蔵は2024年12月、火災に見舞われました。鎮火まで16時間以上かかり酒蔵と住宅が全焼。保管していた原料の米や酒造りの設備を焼失しました。
古屋酒造店・荻原深さん:
「ただ蔵が燃えてるのを見つめているというような感じで、悔しさ、自分の無力さも感じた。火災直後は、もう本当に酒造りに関して全く何も考えることができない状態でした」
酒造りをあきらめかけたという荻原さん。そんな時に手を差し伸べてくれたのは同じ日本酒造りに取り組む仲間たちです。
佐久地域にある13の酒蔵では、共同で酒米づくりや仕込みをするなど蔵の垣根を越えて連携しています。
荻原さんもメンバーに入っていて、火事の直後から仲間たちが声をかけてくれてたと言います。
古屋酒造店・荻原深さん:
「佐久の13蔵の皆さまが『うちで酒造れよ』と温かい声かけていただいたので、少しずつ酒造りに対して前向きに向き合うことができてきた」
火事から間もなく4カ月。荻原さんは酒造りの再開を決意し、佐久穂町の黒澤酒造の設備を借りて作業を始めました。
黒澤酒造・黒澤洋平さん:
「昔からの付き合いもありますし、同じ酒造業として一歩踏み出すにあたって協力できれば」
16日行ったのは1番最初の工程、「酒母仕込み」。佐久市産の米麹と酵母を混ぜ合わせ、酒のもととなる「酒母」をつくる作業です。
今後、仕込みや発酵を重ね1カ月後には1500リットルほどの日本酒ができ上がるということです。
古屋酒造店・荻原深さん:
「きょう米を触って、水に触れて、やっぱり酒造りたいなっていうのは改めて感じた。皆さんから本当に返しきれないほどのご恩をいただいたので、またあの場所でお酒を造ることが、何かしらその恩返しにつながれば」