シリーズ「みんなと防災」。宮崎県は、地震・火山・台風・竜巻など多くの災害リスクを抱えている。その災害を正しく知って備えるには。自分の命、そして大切な人の命を守るにはどうすればいいのかを考える。今回は、『南海トラフ巨大地震 国が新しい被害想定を公表~被害を減らすには~』というテーマで、観測地震学が専門の山下裕亮さんと一緒に伝えていく。

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南海トラフ巨大地震は今後30年以内に80%程度の確率で発生するとされている。この地震で震度6弱以上または津波の高さが3m以上となる地域は、全国で合わせて31都府県764の市町村におよび、影響が超広域に渡るのが特徴だ。

南トラ地震、新被害想定発表

そんな中3月31日、国の有識者検討会は、南海トラフ巨大地震の新しい被害想定を公表した。 このタイミングになったというのは何か理由があるのだろうか?

宮崎公立大学准教授(観測地震学) 山下裕亮さん:
2011年の東日本大震災の後に被害想定が新しくなった。そこからもう10年以上が経過している。その間に、国や自治体が避難タワーを作ったり、いろんな整備をしてきた。そういったものの効果がある。あと、皆さん、10年歳をとった。高齢化が進んでいる。色々な影響も踏まえて、改めて定期的に被害を見直すということが大事で、それが今回行われたというふうに考えていただければいい。

新しい被害想定を見ていこう。まずは最大震度。こちらは前回からの変更はなく、宮崎市や日向市など8つの市と町で震度7、他の市町村も全て震度6強もしくは震度6弱と想定されている。2024年8月に日向灘で起こった地震が震度6弱なので、今まで経験したことがないような揺れになるということだ。

宮崎公立大学准教授(観測地震学) 山下裕亮さん:
震度7となったらもう、ほとんどの人が経験したことがないすごい揺れだと思うが、もうひとつ大事なポイントは、「揺れの強さ」だけではなく、「揺れの長さ」が長くなる事。2024年8月の地震の揺れは30秒ぐらいだったが、南海トラフ地震だとこれが2、3分になる。30秒の揺れが、5倍6倍長く続くということで、いろんなところで被害が出てくると思う。

Q.例えば地震の想定が震度7とか6強となっているが、もしかすると震度5だけど、揺れる長さは長い?

宮崎公立大学准教授(観測地震学) 山下裕亮さん:
間違いなく長くなる。地震の長さが長いときは、「津波が来るかもしれない」と考えてほしい。

続いて津波について見ていく。今回は、より精度の高い地形データを用いて算出したため、30センチ以上の津波が想定される面積が約1割広がった。津波高は串間市が最大で17m、津波の到達時間は日南市が最も短く15分だ。宮崎市では、これまでの国や県の想定より1分早まって17分になっている。

死者数を見ていくと、県内では最も被害が大きくなる冬の深夜に地震が発生した場合、最大で3万9000人が犠牲になる想定だ。 このうち津波による死者が約3万7000人と最も多く、次いで建物倒壊が約2000人、火災が約200人、急傾斜地崩壊が約40人となっている。

Q.津波による被害がほとんどを占めているが、これらの数字をどう捉えている?

宮崎公立大学准教授(観測地震学) 山下裕亮さん:
津波で3万7000人亡くなるという想定が出ているが、実は10年前からそんなに大きく変わっていない。国や県がいろんな整備をしてきた中で、意外と減っていない大きな原因は、「早期避難率」が関係している。地震が起きてからすぐに避難の行動に移っていない状態での数字で、いくら整備をしても皆さんの行動が伴わないと死者数が減らないことを意味していると思っていただければいい。

この3万人という数字は、発災後の早期避難率、すぐに逃げた人が20%だった場合の数字で、全員が発災から10分以内に避難をすれば、津波による死者を6000人にまで減らすことができる。 避難行動をするだけで、たくさんの命を守れるということだ。

とにかく警報がでたら「すぐ避難」

Q.新しい被害想定を受けて、山下さんが一番伝えたいことは?

宮崎公立大学准教授(観測地震学) 山下裕亮さん:
被害想定が今回また新しくなったが、被害想定に一喜一憂する必要はない。 やるべきことは、とにかく津波の危険性があるときには、強く揺れたときでも、弱く揺れたときでも、津波警報、大津波警報が出たら「すぐに避難」する。これが一番重要。避難することによって命を救うことができる。これをぜひ覚えていただければと思う。

(山下裕亮准教授)
宮崎公立大学。観測地震学が専門。日向灘の地震などを研究している。宮崎県地震専門部会委員

(テレビ宮崎)

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