能登半島地震をきっかけに「石川を代表するお土産」の開発に乗り出した男子高校生がいる。開発からお披露目までの活動に密着した。
能登の食材 県内だけで製造を完結
石川県小松市今江町にある「長池彩華堂」。長池製菓が営むこの店でお土産を開発しているのが地元の高校生「せいまくん」こと、向出惺真さんだ。

お土産は能登の塩とミルクを使用したゴーフレットのようなもの。なぜこの2つの素材を選んだのか聞くと、せいまくんは「能登半島地震、能登を何か元気にしたいという気持ちからこのプロジェクトが始まったので、能登の食材を使用して石川県内だけで製造を完結させるということで能登の食材を使用しました」と答えた。

土産開発の原点には、能登で心に残る出会いがあった。「能登に実際に足を運んだタイミングの時に、そこで出会ったおばあちゃんに『ただ来てくれる、話を聞いてくれるだけでうれしんだよ』というのを言っていただいて。そっか、みんな復興に繋げるには来てほしんだなというのが自分として気づきがあって、お土産というものはその場所と場所を繋ぐ重要なものなんだなと。お土産を開発することで石川県に多くの人が足を運んでくれるんじゃないかなと」
思い描いた商品が完成
製造を担当する長池製菓の長池さんは、せいまくんの情熱に応えて協力することを決めた。「昔から知ってた子で、お土産を作りたいという強い想いがあったので。手助けできることがないかな、というのが協力のきっかけですかね。やっぱり素材を生かしたものにしたいなという風に思いますし、せいまくんの想いを表現できたらいいかなと思っています」

完成したお土産を初めて試食したせいまくんは満面の笑みを浮かべた。「すごくおいしいです。自分の思い描いていた通りというか、能登のミルクと能登の塩がすごくマッチしていて、周りの外側のサンドしている外側も食感もパリパリしていておいしいです。さらにブラッシュアップしてみなさんにお届けできるように頑張っていきたいと思います」
兄と違う分野で勝ちたい
せいまくんの原動力は何なのか聞いてみた。「自分自身が何事に対しても反骨精神だったり負けず嫌いであるという部分も強くあるんですけど、それ以上に自分の家族の存在が大きいかなと思っていて。自分には7つ離れた兄がいるんですけど、兄もすごく勉強もできたし運動もできたっていうので、そういう分野で勝負してもどうしても勝てなかった。自分は兄とは違う分野でなにか勝ちたいし兄に認めてもらいたいという部分が自分の中であるんじゃないかなと思ってます」

学校の先生も彼を評価している。「行動力がありまして周りのことにも非常によく気づくので、クラスの周りの子に自分から声かけたりとか周りを引っ張っていくことができる生徒かなと思って見ています」
せいまくんが目指す復興の形
2月後半、能登食祭市場でお披露目会が行われた。商品のパッケージはSNSの投票で決まったデザインで、石川県とせいまくんが描かれている。さらに箱には石川県のグルメや観光情報が掲載されたサイトを見ることができるQRコードも。せいまくんの思いが詰まったお土産は好評を集めた。「おいしいです。塩もちょっときいてて」「甘みと塩、パンチがあっておいしいです」「こういう若者が増えてほしいなと思ってます。ずっと応援したくなるような人」

せいまくんは自身の活動についてこう語る。「お土産のプロジェクトの目的は、能登の地震の風化防止と、石川県を盛り上げたい。この2点が大きく上げられるかなと思っています。自分が目指したのは復旧ではなく復興の形ということで、ゼロに戻そうという考えはなく、むしろプラスを作りたいという考えのもと自分は活動している。能登が復旧する町として皆さんから印象持たれるのではなくて、これから発展し続ける町として、世間からみた能登の印象というものも自分自身のお土産を通して覆していけたらいいなと思っています」

3月、せいまくんが主催したイベント「notoフェス」が金沢駅もてなしドーム地下広場で開催され、多くの来場者でにぎわった。「ミルクとしお」は4月中に金沢駅で販売される予定だ。「僕が今回作ったお土産は、石川県を盛り上げることや、能登復興ということが関わっています。ぜひ手に取っていただいて周りの方に配っていただいて、実際に石川県に来ていただけるようなお土産になればうれしいなと思っています。これからも頑張ります」
(石川テレビ)