医療搬送用のヘリコプターが、長崎・壱岐沖の海上で転覆した状態で発見され、患者など3人が死亡した事故で、ヘリを運行していた「エス・ジー・シー佐賀航空」が、過去にも複数の重大な事故を起こしており、今後、国の航空事故調査官が、運行状況についても詳しく調べることになりそうだ。

福岡⇔対馬空港 当該ヘリの動き

事故に遭ったのは、中山運輸所有で「エス・ジーシー佐賀航空」が管理・運行している民間の医療搬送用ヘリコプター。

事故ヘリと同一機(福岡和白病院HPより)
事故ヘリと同一機(福岡和白病院HPより)
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エス・ジー・シー佐賀佐賀航空によると、事故が起きた4月6日午後0時30分、当該ヘリは、患者を対馬から運ぶため、医師や看護師などを乗せて福岡・和白病院を離陸。約40分後の午後1時11分に対馬空港に着陸した。その後、すぐに患者と付き添いの家族を乗せ、計6人で約20分後の午後1時30分に、対馬空港を離陸。搬送先の福岡・和白病院に向けて出発していたという。

しかし、離陸から約40分後の午後2時10分、和白病院に駐在している佐賀航空の運行管理担当者から、佐賀航空本社に「ヘリと連絡がとれない」との報告が入り、すぐに関係機関への通報を開始したとのこと。

エス・ジー・シー佐賀航空 村田将一安全推進室長
エス・ジー・シー佐賀航空 村田将一安全推進室長

事故発覚後の6日の佐賀航空の会見では、「ヘリ離陸から約13分後の午後1時43分、機体の航跡を確認できるモニター上で、航跡が動かなくなった。電波の状態によっては、これまでも航跡が止まるような表示をしたことがあったため、状況を注視していたが、到着予定時刻が近づき、無線で呼びかけてもヘリからの応答がなく通報した」とコメント。ヘリと運行担当者との正確なやりとりは、国の事故調査委員会の調査の中で明らかになるとみられている。

救助へ向けた海上保安本部の対応

第七管区海上保安本部に事故の第一報が入ったのは、4月6日午後14時50分頃。東京救難調整本部(ARCC)から北九州市にある第七管区海上保安本部の運用指令センターに「対馬空港を出発し、福岡県内の病院に向けて飛行していた民間ヘリが消息不明」との通報があった。これを受け、七管本部は、すぐに巡視船艇5隻、航空機2機を現場海域に急行させた。

救助活動を行う巡視船やヘリ(第七管区海上保安本部提供)
救助活動を行う巡視船やヘリ(第七管区海上保安本部提供)

17時5分、転覆状態の事故機を捜索中の海上保安本部の巡視船が発見。機体は、転覆状態にあったが、フロートで浮いていて、フロートに3人がしがみついた状態だった。3人は、午後5時17分から40分にかけ、海上保安庁のヘリが救助を完了。低体温症の疑いがあり、すぐに福岡市東区の福岡和白病院に搬送された。救助された3人は、①機長のハマダ・ヒロシさん(66)②整備士のヨシタケ・カズトさん(67)③看護師のクニタケ・サクラさん(28)。

第七管区海上保安本部 提供
第七管区海上保安本部 提供

残りの3人(④~⑥)については、自衛隊のヘリが、午後6時38分から59分の間に救助を完了。福岡市東区の奈多へリポートに搬送し、救急隊に引き継いだが、3人とも心配停止の状態だった。

福岡和白病院に搬送される救助者
福岡和白病院に搬送される救助者

その後、搬送先の福岡和白病院にて、④医師のアラカワ・ケイさん(34)⑤患者のモトイシ・ミツコさん(86)⑥付き添っていた息子のモトイシ・カズヨシさん(68)3人の死亡が確認された。

福岡和白病院に搬送される患者(6日)
福岡和白病院に搬送される患者(6日)

今回、事故に遭った福岡市東区の「福岡和白病院」は、北部九州では唯一民間病院として独自に医療搬送用ヘリコプターを運航し、離島や僻地の救急医療を行っていた。福岡和白病院の富永隆治院長は「今回の事故は本当に悲痛の極みであります。安全であるという説明を受けて、実際、私も乗って大丈夫だと判断したんですけど」と6日夜、悲痛な面持ちで記者会見に臨んだ。

会見する福岡和白病院 富永隆治院長 (6日)
会見する福岡和白病院 富永隆治院長 (6日)

また、ヘリコプターを運行していた「エス・ジー・シー佐賀航空」の村田将一安全推進室長は、事故原因について、「全くわからない状況」とした上で、「機体は海上でフロートが開いた状態で見つかったことから、墜落ではなく不時着水」との見方を示した。

佐賀航空ヘリ 過去にも相次ぐ事故

エス・ジー・シー佐賀航空の小型ヘリをめぐっては、2002年から2022年までの間に計5件の事故があり、うち2件が重大インシデントに認定。2024年7月にも福岡・柳川市の農地に墜落し、搭乗者2人が死亡する事故が起きている。

登場員2人死亡したエス・ジー・シー佐賀航空の事故(2024年7月 福岡・柳川市)
登場員2人死亡したエス・ジー・シー佐賀航空の事故(2024年7月 福岡・柳川市)

エス・ジー・シー佐賀航空は、6日の事故については、「朝の点検で異常はなかった」と話している。

国の運輸安全委員会は、航空事故調査官2人を担当調査官に指名し、現地に派遣。7日午後3時半から午後4時頃、福岡市の福岡和白病院に到着予定で、すぐに関係者から話を聴くことにしている。

 (テレビ西日本)

テレビ西日本
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