手話が語る福祉のコーナー、2025年4月からは佐藤理子アナウンサーがお伝えします。

(佐藤理子アナウンサー)
「おしゃれを楽しむだけでなく、コミュニケーションを通して心をケアする「福祉ネイル」を取材しました」

(内田侑紀さんと94歳女性のやりとり)
「お父さんは無口な人?」「あまり喋らなかった。お酒飲んだらよく喋る」
「本当」「でも喋るより歌ってた」
「歌が上手だった?」「上手だった」
「歌が上手ってかっこいいね」「よく酒は飲んでいたよ」

亡くなった夫との思い出を語るのは、94歳の女性。色鮮やかな指先に思わず笑みが溢れます。

ネイルを施すのは、福祉ネイリストの内田侑紀(ゆき)さんです。

福祉ネイルは一般的なネイルと違い爪の先端をとがらせたり、装飾品をつけたりしません。生活しやすいように形は丸みを帯び、視力が弱い人は濃くはっきりした色にするなど相手に合わせて提案します。

(内田侑紀さんと94歳女性のやりとり)
「どう?」「あらかわいい。先だけ、かわいい」
「全部かわいいですよ」

内田さんが最も大切にしているのが、コミュニケーションです。ふさぎがちな高齢者の心に寄り添いネイルケアを通して癒やしの時間を提供します。

自宅でネイルサロンを経営していた内田さんが、福祉ネイルをはじめたのは2年前。長年通っていた客が病気で来られなくなったことがきっかけでした。

(福祉ネイリスト 内田侑紀さん)
「いつまでお客様の爪を手入れできるか考えたときに、一生涯通ってもらえるサロンを作りたかった。そこで客から福祉ネイルを教えてもらい、これだったらお客様に長くネイルの施術をさせてもらえるかと思った」

内田さんはその後、福祉ネイリストの認定資格を取得。2024年4月には、もっと多くの人に知ってほしいと福祉ネイリストを養成するスクールを開校しました。

(佐藤理子アナウンサー)
「こちらでは、福祉ネイリストを目指して授業が行われています。和気あいあいとした雰囲気の中でも真剣な眼差しが光ります」

生徒は徐々に増え、これまでに25人が卒業しました。

(授業の様子)
「いっぱいコミュニケーションをとらないといけないので、技術は目をつむってもできるように」

最年少の生徒は小学6年生。親子で通い始めた理由を聞いてみると。
「(祖母が)体調を崩しているので祖母に塗ってあげたい。ハンドマッサージをしてあげたい」
「(祖母の)爪に絵を描きたい。おばあちゃんの好きな色(を塗ってあげたい)」

(内田侑紀さん)
「福祉関係者もいれば未経験も多いし、いろいろな志を持ったすごく心の優しい人の集まりだと実感しているので、生徒のパワーをもらいながら福祉ネイルの活動を広めたい」

この日、内田さんとスクールの生徒は特別養護老人ホームを訪れました。初めて福祉ネイルを施す生徒は、緊張を隠し切れない様子。

「自分の手を下にして・・・」

それでも・・・

「私の父親と同い年。昭和7年といったら。実は同い年」
「できました」
「水使わないようにしようと思う。おばあちゃんキレイだ、若くなったと言ってもらいたい」

(体験した人は…)
「最初は緊張したが、キレイになったと喜ぶ姿を見てとても幸せな気持ちになった」

ネイルはあくまでも相手に寄り添うためのツールだと話す内田さん。この日は85歳の横山三登美さんにネイルを施します。

(内田さんと横山さんの会話)
「昔は花見といったらどこに行った?」「後楽園」
「誰と?」「お父さん(夫)と」
「仲良いね」

内田さんは、三登美さんが亡くなった夫とよく花見をした後楽園のサクラをネイルで表現します。

(内田さんと横山さんとの会話)
「できました。桜」「うわ、キレイ。こんな色は初めてした。目が覚める」
「良かった。元気がより元気になる?」「これで元気になる」

(横山三登美さん)
「(Q:やっぱり気分も変わりますか?)全然違う。若い時したことなかったから今が青春」

(老人ホームの職員は…)
「すごく表情がイキイキしたり、話し方も明るい声になって、笑顔を引き出す魔法みたいな」

(内田侑紀さん)
「福祉ネイルをすることで元気になって、心も身体も若返り、リハビリのような効果があると思っている。介護の現場に当たり前に福祉ネイルサービスが導入されるような未来になってほしい」

指先をケアして癒やしと元気を届ける。福祉ネイル。きょうもどこかで笑顔の花が咲いています。

(佐藤理子アナウンサー)
「爪を彩ると、心も彩る。福祉ネイルを通して様々な人と会話が生まれ、心安らぐ温かな時間が流れていました」

岡山放送
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