大阪府の公立高校で定員割れが相次ぐ中、全国に先駆けて導入された高校授業料無償化の影響と課題が浮き彫りになっている。
関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」に出演した橋下徹氏が、その背景と今後の展望について語った。

■相次ぐ公立高校の定員割れ
大阪で今回定員割れとなったのは、偏差値が60台の寝屋川高校、鳳高校、八尾高校。これらの高校は同志社大学や立命館大学など、有名私立大学に生徒を多く輩出してる高校だ。
鳳高校は2年連続の定員割れとなった。

関西テレビ 加藤さゆりデスク:大阪府は2012年に、府立学校条例を成立させまして、3年連続定員割れした学校については、統廃合・再編成の対象にするということを決めました。橋下徹さんがかなりけんかをして、条例を作った記憶があります。
橋下徹氏:教育委員会が猛反発しました。僕が市長選挙に出る時に民意に問うということで、選挙で勝ったので、この条例を制定して今進んでいるとこなんです。
青木源太キャスター:いま定員割れの学校が出てきてるというのも、仕方がないというか、未来図としては予想していたのですか?
橋下徹氏:15年前に僕は今の事態を予測して、15年前にこういうルールをいろいろ作りました。これは僕が意図した通りに進んでいます。

■「子供の数が減っているのに、学校の数は減っていない」
2023年度まで19校の府立高校の廃止が決まっている。
府立高校の廃止に関して橋下氏は「皆さんから異論、反論いただきたい」と前置きしたうえで、「少子化時代これでいい」といい、大阪府の公立高校再編の背景にある少子化を指摘した。
橋下徹氏:(ピーク時より)高校生の数が3分の2近くまでになっているのに、学校の数は減っていない。これはおかしい。
学校に限らず、人口減少に合わせたインフラ縮小の必要性も強調した。
橋下徹氏:日本は今まで高度成長時代でいろんなものを作ってきましたけども、少子高齢化で人口減少する時に、今まで日本が高度成長時代に作ってきたものを全部維持するんですか?
橋下徹氏:僕はそれできないと思っているんで。これは政治家が誰も言わないことなんですが、人口減少に合わせてどうインフラを縮小していく1つとして。僕はありとあらゆるもの全部、手をつけていきました。

橋下徹氏:その中の1つで、学校というところも縮小していかざるを得ないんですよ。
(Q.私立も公立も?)
橋下徹氏:あとは生徒の選択です。だから『公立がなくなる、なくなる』と言われていますけど、私立が選ばれなくなれば、私立がなくなっていくんです。いま単に公立が選ばれていないだけなんです。
橋下氏は「校長に一定の権限を与えて、高校が独自に特色を出せるようにしている」ということを説明した。
橋下徹氏:大阪府の条例でそういうルールを作りまして、校長に一定の権限を与えて、これ義務教育でありませんから、高校が独自に特色を出していけばいいと。大阪府の教育方針に出しているんです。あとは生徒が選べばいい。
公立高校の生き残りには、生徒に選ばれる独自性が重要だと橋下氏は指摘した。

■現場の校長はどう感じている?
番組では校長にも話を聞いています。
大阪・阪南市では市内唯一の公立高校が閉校となります。
大阪府立泉鳥取高校 橋本敏和校長:学校を選べる選択肢が増えるのはいい事ですが…子どもの数が減少している今、県境にある学校は、再編整備(統廃合)の対象になることが増えるのでは。
2025年度入試で、入試定員割れをした高校の校長は…。
大阪府立佐野工科高校 松野良彦校長:技術系の仕事に就きたい子供たちの選択肢が狭まる可能性はある。
番組コメンテーターの北斗晶さんは公立高校が減っていく事に関して、次のように話しました。
北斗晶さん:子供の数が少ないから、それが分散されて定員割れになるわけじゃないですか。子供の数が少ないのに高校が多かったら、このまま行ったらずっと同じ状態のままになるか、もっと子供が減っていって、廃校がどんどん増えていくってことですよね。だからやっぱり先に手を打っとかなきゃいけないんじゃないかなと思います。

■通学時間と技術系学科の存続問題
また北斗晶さんは、自身の体験から、高校の数が減ることによって通学時間が長くなることを心配した。
(Q.学校は減らない方がいい?)
北斗晶さん:学校は減るのは仕方がないと思います。ただ1つ問題が、私、小学校のとき歩いて1時間かかったんです。往復2時間。中学校もそうでした。高校生ぐらいになると通うのも大変なことになるし、遠くなっちゃうのはどうなのかなっていうのはある。
橋下徹氏:これ(通学時間)は15年前に議論した。やっぱり生徒の通学時間ってどれぐらいまで許されるんだろうと。例えば大阪府内の子供たち、『3時間絶対かかる』なんて言ったら、これはだめだと。大体1時間とか1時間半ぐらいは、これは有名私立高校に通う子供それぐらいかけて行っているんで、高校生だったら1時間、1時間半ぐらいのところに高校があればいいと。

橋下徹氏:高校が『なくなる、なくなる』って言われるんですけども、阪南市からなくなるだけですからね。それは各市町村に全部1校1校作らなきゃいけないんですかと。阪南市に住んでいる子供たちが、1時間圏内で行ける学校はいっぱいあるんですよ。
橋下徹氏:あと低所得者で、お金が苦しくて交通費がないというのであれば、交通費を支援すればいいんです。だから維新が教育無償化やるときに、高額所得者にまで全部、授業料何10万円も支援するんだけど、そんなお金があるぐらいだったら、通学費に困っている子供さんの方に支援するとか、そういうお金の使い方すればいいと思うんですけどね。
また、技術系や農業系の学科については「セーフティーネット」として公立が担うべきだと主張した。
橋下徹氏:技術系とか、農業系は残していくとちゃんと方針に入れてます。これはセーフティーネット。だから僕が言ってるのは、普通科で普通の子どもたちが公立、私立関係なく選ぶようなものであれば、これは切磋琢磨で残ったところが残ればいいと。ただ私立がどうしてもやらないところ、こういうのは公立である。これはセーフティーネットですよ。だから私立が農業系とか工業系やらないのであれば、ここは公立がやって、いくら定員が少なくても守るっていうのは当然やるべきです。
(Q.その住み分けは自然とできる?)
橋下徹氏:それはちゃんと分けなきゃいけない。工業系、農業系は残す。

■私立高校の隠れたコスト 国の教育無償化は「欠陥だらけの制度」
関西テレビ・加藤さゆり報道デスクは、私立高校の授業料以外にかかる費用について、「入学金が高いところでは20万円とかかかる」「制服代も公立とはかなり違う」など、実際の負担額は授業料だけではないと指摘し、「ちゃんと理解をして、納得した上で入らないと本当に大変なことになる」と注意を促しました。
自民、公明、維新で合意に至った高校授業料無償化について、橋下氏は「ものすごい欠陥だらけの制度」だと批判的な見解を示しています。
橋下氏は、「授業料の上限制限がないので、たぶん補助金が入れば、私立の学校は授業料上げてきます」と指摘し、便乗値上げのようなことが行われる可能性をあげました。そして、いまの高校授業料無償化政策が、教育格差を拡大させる恐れがあると主張しました。
橋下徹氏:私立の方は修学旅行を始め、いろんな経費がかかるんです。だから保護者負担を一定額にするのと同時に高額所得者の方にどんどん支援金を渡すと、高額所得者の方はその余ったお金で子どもに塾に通わせたりして、どんどん教育格差が広がりますよ。
橋下徹氏:だから今回の自民党、公明党、維新の教育無償化案というのは、日本の教育格差を拡大化させる、ものすごい弊害のある政策だと僕は思います。やっぱり持ってる人には負担をしてもらう。教育格差を縮めるために。

■修正ポイントは「応能負担」と「授業料の上限設定」
この問題の解決策として、橋下氏は「応能負担にして所得が多い人には負担をしてもらう」こと、そして「授業料の上限を決めて便乗値上げをさせない」ことの必要性を訴えました。
橋下徹氏:15年前に僕が考えた時には、予算を増やせばいいということじゃなくて、学校の統廃合の問題だったり、教育の格差を是正する問題だったり、便乗値上げをやめさせようとか、いろんなこと考えたのに、国会議員ちゅうのはやっぱり浅いなぁと思うね。
(Q.今後修正される予定は?)
橋下徹氏:国会議員たちじゃダメなんじゃないの? 僕は一生懸命、Xで書いているけど、フル無視されているからね。
(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」2025年3月12日放送)
