2025年1月8日、東京都で調査開始以来、最も早い「スギ花粉の飛散開始」が発表されました。大変なシーズンになるのでは…と感じられた方も多かったのではないでしょうか。
暖かい日も増え、いよいよ花粉が大量に飛散する“ピーク”に入ってきています。

花粉に敏感な方は“ダメージ”を減らすために、めがね、マスク、薬など、持てる武器をフル動員されている真っ最中かと思いますが、なんとか気象情報を“味方”につけて、花粉の影響を少しでも軽減できる方法がないか調べてみました。

都心に飛んでくるスギ花粉はどこから?

東京の街中にスギ林はありません。しかし周辺には、北は関東北部の山地、西は群馬県南部~東京多摩方面~神奈川県西部~伊豆半島、南は房総半島と、都心を円で囲うように群生しています。

林野庁「森林生態系多様性基礎調査」より
林野庁「森林生態系多様性基礎調査」より
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どこからでも花粉が飛んできそうな生え方ですが、このうちどの辺りのスギが、都心により影響を与えているのでしょうか?東京都花粉症対策検討委員会に聞くと、「東京と神奈川のスギ」とのことでした。

スギ花粉は何日かけて都心にやってくる?

東京の多摩や神奈川から都心へは、人は乗り物を使って数時間で移動できますが、花粉はどのくらいかけてやってくるのでしょうか。

東京都によると、スギ花粉は軽いため、風に運ばれて200キロ以上飛ぶことがあるそうです。都心から半径200キロというと、関東地方はほぼすっぽりと収まります。スギ花粉一つ一つはかなり小さいため風と共に移動すると仮定すると、例えば10m/s(= 36km/h)の風に乗れば、200キロは約6時間で移動できます。関東に生えているスギからの花粉は、ほとんどの場合、一日かからずに都心まで飛んできてしまいます。

花粉が“飛びやすい”気象条件は?

花粉が飛びやすいのは、(1)晴れて暖かい日、(2)乾燥して風が強い日、(3)雨上がりの翌日、と言われています。

2024年の東京都のスギ花粉の観測値を調べると、全地点の合算が最も多かったのは2月26日でした。この日の東京は、前日からの雨が明け方に上がり、日中は快晴。最高気温は前日より7.5℃も高く、最大風速は10.7m/s、最大瞬間風速は20.2m/sものやや強い風を観測し、上記(1)~(3)のほとんどの条件と重なりました。

真剣考案!花粉をなるべく回避する方法

ここまで調べた情報をもとに、花粉を少しでも回避できる方法を考えました。精度を高めるため、東京都保健医療局が持つ過去5年分のスギ花粉の観測データを参考に検証しました。

回避策(1)「雨の日」

雨が降ると、花粉は風に乗って遠くまで飛んでくることはできず、飛散量が抑えられます。また、漂っていた花粉も雨によって落とされ、排水溝へと流されていきます。

しかし、未明に強く雨が降っただけではその日の花粉減少の効果はありません。日中に晴れればそれは「雨上がりの翌日」の状況となり、飛散量は多くなってしまいます。ポイントは雨の「降り方」と「時間」です。

過去のデータより、最も飛散量が抑えられていたのは、日中に長時間、1mm以上の雨(傘が必要なくらいの雨)が降ったときでした。

また、朝~昼前に雨が降ったときは、昼過ぎに止んでも飛散が抑えられていました。花粉が濡れて飛びにくくなっていたと考えられます。

つまり、日中に雨が降るかどうかをぜひチェックしてください。一日中シトシト降るなら、花粉のことだけを考えるならお出かけにベスト。降り出して少し経ってから外出すれば、空気中の花粉が雨で流されてさらに良さそうです。半日しか雨が降らなくても、それが朝~昼前なら、午後はお出かけチャンスです。

回避策(2)「風が弱い日」

風が強いと周辺に舞い上がっている花粉だけでなく、遠くから花粉が飛んできて総量が多くなるでしょう。過去のデータより花粉の飛散が多い日は最大風速が5m/s以上の日が多かったです。風速5m/sというと木の枝が揺れるくらい、顔にはしっかり風を感じます。予想風速5m/s未満の時が外出の狙い目です。

回避策(3)「東寄りの風の日」

前述より、都心は東京の多摩方面や神奈川にあるスギ林の影響を受けるので、南西や南南西など“西より”の風の日はお出かけ向きとは言えません。しかし、2024年で最も多く花粉が飛んだ2月26日の風は、北西や北北西から吹いていました。風が強かったことで、群馬県や長野県からも花粉が飛んできた可能性があります。花粉が200キロ以上飛ぶことを考えると、北にも西にも南にもスギ林がある都心はなかなかツライ場所に位置しています。

唯一、東側はスギ林が少なめです。過去のデータでは、西風(北北西~南南西)よりは東風(北北東~南南東)のほうが、大量飛散の日は少なかったです。東からの風が吹くときは冷たい海からの風になり、気温が上がりにくいことも関連しているかもしれません。

結論!お出かけにベストの日は…!

以上、検証の結果、少しでも花粉を回避してお出かけするには、「傘がいるほど雨が降る、弱い風が東から吹く日」がベスト!となります。

もちろん、影響や症状は人により、一概にはこれで解決しないでしょうが、少しでも花粉が少ないであろう日をうまく活用して、このツライ季節を何とか乗り切りましょう!

【執筆:ウェザーマップ・冨永幸 気象予報士/企画協力:フジテレビ・川原浩揮 気象予報士】 

フジテレビ気象センター
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最新の気象・防災情報や、「なぜそういったことが起こるのか?」現象の背景を徹底解説。フジテレビ気象センターに所属する気象予報士9人の他、日本気象協会、ウェザーマップとも連携し、天気を味方につけて毎日が楽しくなる情報や、つい誰かに話したくなるような情報などお届けします。