海中に放置された網に絡まり溺れ死んだウミガメ。沖縄で海洋ごみが原因で命を落とすウミガメが後を絶たない。そんなウミガメを守ろうとビーチクリーン活動を続ける人たちがいる。
彼らの活動を支援する研究所からは、プラスチックを燃やしても煙が出ない特殊な焼却炉を無償で提供を受けている。
『自然環境を守ろう』と共感した人達が志を一つに日々、活動している。
体長10センチのウミガメの体内に60個のマイクロプラスチック
2025年2月8日、恩納村(おんなそん)で行われたビーチクリーン活動。

ビーチにはペットボトルや発泡スチロールなど、さまざまなごみが打ち上げられている。
沖縄沿海保全同友会 石塚茉尋さん:
これは養殖用の網を浮かせるためのブイです。台風などで外れて、ここまで流れ着いてしまうのです

海洋保全に取り組んでいる沖縄沿海保全同友会の石塚茉尋(まひろ)さん。石塚さんはダイバーとして海中に沈んだごみの回収にも取り組んでいる。
沖縄沿海保全同友会 石塚茉尋さん:
これらの白い小さな破片はすべて発泡スチロールです。魚やカメが簡単に飲み込んでしまい、体内に蓄積されていくマイクロプラスチックになってしまいます

2025年1月に読谷村(よみたんそん)のビーチで発見された体長10センチほどの生後1年未満とみられるウミガメの死がいが見つかった。
体に損傷はなく、死因を調べるために解剖したところ、発泡スチロールのかけらや、たばこの包装に使われている、プラスチックシートなど60個以上のマイクロプラスチックが腸の中に詰まっていた。

沖縄沿海保全同友会 石塚茉尋さん:
目の前でこういうものを見ると、本当に悔しくて残念な気持ちでいっぱいになります。でも、誰かが拾わないとこのごみはずっとここに残ってしまう。だから見つけたら拾う。拾えばその場所からはなくなる。それだけを励みに地道に続けています
沖縄沿海保全同友会 カール・バスティアン代表:
この網が大きな問題なのです。サンゴに絡みつくだけでなく、ウミガメや魚、サメ、エイ、そして鳥まで、多くの生き物が被害を受けています

沖縄沿海保全同友会 カール・バスティアン代表:
この網が、満潮で再び海に流されると、また新たな被害が出てしまいます。回収できて本当に良かったです

カールさんによると、流れ着いた漁網は非常に厄介で、サンゴに絡みついてウミガメだけでなく、魚やサメ、エイなど多くの生き物が被害を受けていると話す。

ウミガメの赤ちゃんとの出会いで人生が変わった
2020年に海洋保全の団体を立ち上げ、ウミガメの保護活動に奮闘するカールさん。
そのきっかけは、ある出会いだった。
沖縄沿海保全同友会 カール・バスティアン代表:
本当にかわいらしい姿でした。2020年に初めてウミガメの赤ちゃんと出会って、私の人生は変わりました。長いヒレを動かしながら海に向かっていく姿を見送ったとき、この子を守れたという大きな喜びを感じました。その感動が忘れられず、この活動を始めることにしました。ウミガメが一番好きです

ビーチクリーン活動は、ウミガメをはじめとする海の生き物を守るだけでなく、参加者の意識にも変化をもたらしている。

カールさんの活動に共感し、親子で参加した母親は、「子どもが『カメさんがおなかを痛めるから』とごみを拾うようになり、きれいな海を残すことは子どもたちの未来のためにもなると感じています」と話した。
回収したごみは特殊な焼却炉で処分
ビーチクリーン活動で回収したごみを処理するのが、トマス技術研究所の福富健仁代表だ。
トマス技術研究所 福富健仁代表:
海から回収したごみには塩分が多く付着していて、普通に燃やすと煙が出やすいのです。この焼却炉は発泡スチロールやプラスチックを燃やしても煙が出ない特殊な仕組みを持っています。沖縄の方言をそのまま使って「チリメーサー」と名付けました

ビーチで回収した大量のごみを、煙を出さずに、その場で焼却処理する試みは世界初だ。

トマス技術研究所 福富健仁代表:
カールさんたちとは、ビーチクリーン活動を通じて環境を守り、より良い未来を作っていこうという思いが同じでした。その志に強く共感したのです

ビーチクリーン活動が行われたこの日、近くの海岸で死んだウミガメが発見された。

沖縄沿海保全同友会 カール・バスティアン代表:
本当に悲しい出来事です。人間が原因とは断定できませんが、もしそうだとしたら大変残念です。どうか天国の大きな海で安らかに過ごしてほしいと思います

ウミガメの命を守るため、カールさんたちの取り組みは続いている。
カールさんは、美ら海水族館と連携してウミガメの保護や調査、子ども達への講演などにも取り組んでいて、「沖縄にウミガメの保護区とレスキューセンターをつくることが目標」と語る。
人とウミガメが共生できる海の実現へ、活動の輪は着実に広がっている。
(沖縄テレビ)