石川県七尾湾の特産「能登かき」の養殖・販売を行う会社の4代目に石川テレビの稲垣真一アナウンサーが会いに訪れた。ふるさと能登とカキへの思いを聞いた。
地震発生の2日後から出荷を再開
稲垣アナ:七尾市中島町に来ています。こちらでは能登の冬の味覚、能登かきの養殖が行なわれています。きょうは地震を乗り越え、能登の特産品を全国に発信し続けている若き経営者に会いに行きます

まだ寒さが厳しい午前4時半。
稲垣アナ:おはようございます
山口さん:おはようございます
稲垣アナ:すごい雪なんですけど、これでもいつも漁に出ているんですか
山口さん:そうですね。そんなに風が吹かない限りは大雪でも漁に行きますね
稲垣アナ:すごいですね。漁はシーズンになったら週にどのくらい出ているんですか
山口さん:毎日出ています

寒い中でも答えてくれた山口翔太さん(30)。ここ中島でカキの養殖・販売を行っている山口水産の4代目だ。能登半島地震で多くのカキ業者が漁を断念したが、山口水産では被害があったものの能登名産のカキを届けたいという思いから、地震発生の2日後から出荷を再開した。河口から七尾西湾にある養殖場まで船で10分。クレーンでカキをつるしてあるワイヤーを引き上げ、手際良く収穫。1日で1万個ほどを水揚げしている。

稲垣アナ:ものすごい迫力なんですけど
山口さん:2メートルぐらいのワイヤーに取り付けたホタテの殻にカキの赤ちゃんをつけてそれが成長したのがこれです。最初は米粒ほどの大きさでした
稲垣アナ:こんなに大きくなるんですか
山口さん:はい
稲垣アナ:1回上げるとどのくらいのカキが付いているんですか
山口さん:100個ぐらいですかね。ワイヤー1本で

稲垣アナ:今震災から2年目を迎えましたけど、2025年の出来はどうですか。
山口さん:今年は順調に育ってくれています
稲垣アナ:地震の後、海の環境の変化はどうですか
山口さん:海底にたまっていた栄養がかき回されて、むしろカキが成長したのではないかと言われています
漁は約1時間ほど、手際よく行われた。
カキをむくスタッフも被災
まだ夜が明けきらない午前7時前。近くの女性たちが集まり、カキのむき身作業が始まっていた。

稲垣アナ:手際がいいですね
山口さん:プロですから
稲垣アナ:地震があってから作業の変化というのは?
山口さん:ものすごい変化がありまして、むいてくださるスタッフの方が被災して、家がダメになったりとか。そういう理由でむきこさんの数が3分の1に減ってしまったので(作業場は2つあったが)1か所で収まるくらいの人数になってしまった
稲垣アナ:人手が減るということは大変な影響がでますね
山口さん:いただく注文も十分こなせないときもあるので、お客さんにすごい迷惑かけているなという感じがしますね

稲垣アナ:全体的な出荷量としては?
山口さん:むき身は減るんですけど、殻付きの状態で出荷する分は数を頑張って増やしました
稲垣アナ:総じて出荷量は
山口さん:結果的に変わらないかなと思います
稲垣アナ:缶にカキを詰めているときはどのような思いを込められていますか
山口さん:カキを初めて食べる人なんじゃないかなって想像しながら詰めたりしてます
稲垣アナ:どんな感じで味わってほしい?
山口さん:能登かきの特徴としてはカキが苦手な方でも食べやすいっていう。海産物特有のエグみとかが少ないので、スッキリして食べやすいって声が聞けたらなと思ってます
稲垣アナ:ということでカキをいただこうと思うのですが。山口さん、カキってこうやって焼くものでしたっけ
山口さん:ガンガン焼きという調理方法です。缶に入ったカキをコンロの上に置きます。そしてお水を少量、コップ1杯ぐらい入れまして蓋をします。火をかけてあとは待つだけです
約7分ほど待ち、吹きこぼれ出したら火を止め30秒間蒸らす。蓋を開けると湯気とともに海の香りが広がった。

山口さん:においがすごくいいですね
稲垣アナ:広がってきますね。身がぷりぷり、見た目でわかる
山口さん:ブリブリです
稲垣アナ:できたてのカキをいただきますよ。これはうまい。カキが持っているミルキーなジュースが口いっぱいに広がって、飲み物みたいな。おいしいですね、この甘さ

山口さん:めちゃくちゃ濃厚なのに食べやすい
稲垣アナ:そうなんですよ。他の産地のカキとは味に違いが出てくるというのは
山口さん:能登の里山里海から流れてくる豊富な栄養で育つ能登かきですので。育つ環境で味ががらっと変わるので、このおいしさというのが能登かきのおいしさということになります
震災後に見出した光
山口さんにはカキ以上に大事なことがある。
稲垣アナ:先ほどとは表情が違いますね。
山口さん:長男の大智。長女のひかりです。
稲垣アナ:かわいい。
妻・敦子さん:1歳半と2か月です。地震の発災直後は長男をちゃんと育てるのに必死だったんですけど、いつもと違う環境で育てることになったので。しばらくしたら長女の妊娠がわかって自分の周りでは暗いニュースが続いてたんですけど、この子の存在が、希望の光だったので、この子にひかりという名前を付けたんですけど。この子の存在もそうですし、周りの人たちが、いろんな人たちが応援してくださったおかげで今、幸せに過ごせるなと。ちゃんと感謝したいなと思いました

稲垣アナ:赤ちゃんの存在というのは自分の中では感じてますか
山口さん:2人生まれて価値観がすごい変わったというか、人生で優先するべきものが何なのかというのが改めてわかったというような感じですね。この子らは今後、能登で地震があったということを知ると思うんですけど、その中でも、地震を乗り越えた産業を、パパが頑張ってやっているんだということを伝えていきたいと思います
稲垣アナ:どっちかが5代目
山口さん:どっちかなぁ

稲垣アナ:この中島での生業としているカキ、そして能登の未来についてどのように思っていますか
山口さん:復興するためには、地震前から能登の特産品であった能登かきを存続することが必須かなと思ってます。能登かきを食べに能登に行く。能登に足を運んでくださるネタにもなるので、そこから能登って他にいろんなところがあるねっていう感じで、能登かきをきっかけで能登の他の物を知ってもらえればなと思っています
稲垣アナ:これからどんなカキ作っていきたいですか
山口さん:食べた方が美味しさに感動して、それをきっかけにして能登に興味を持ってもらえるようなカキを作っていきたいなと思います
稲垣アナ:そういう意味では全国に発信できるカキ、これからも作っていってくださいね
山口さん:はい
(石川テレビ)