奥能登で循環型の養鶏業を始めたが、地震で避難を余儀なくされた男性がいる。石川テレビの稲垣真一アナウンサーがこの男性に会いに、金沢の山あいを訪ねた。
葬祭業から養鶏業への転身
稲垣アナ:石川県金沢市の静かな山合い、福畠町に来ています。きょうはこちらで奥能登に魅力を感じ、珠洲で人生の新たな一歩を踏み出そうとしていた男性にお話を伺います。

稲垣アナ:あらっ、ヤギがいますよ。よろしくお願いします
高畠さん:よろしくお願いします
高畠正成さん(41)。石川県白山市出身の高畠さんは長年、葬儀社に勤めていた。人の生死にかかわるうちに、生産者の道に進むことを決意。静岡県で卵を生産し、鶏糞を使った肥料で野菜を作り、その端材を鶏のエサにする有畜循環型有機農業を行っている酒井さんと出会ったことがきっかけで、自身も始めるため珠洲に移住し開業。しかし地震で被害を受け、今は金沢で活動している。

稲垣アナ:すごい数のニワトリですね。しかも平飼いなんですね
高畠さん:平飼い養鶏です
稲垣アナ:自由にお食事タイム
高畠さん:こういうの見ていると気持ちがうきうきしてきますよね
稲垣アナ:平飼いをすることの良さというのは?
高畠さん:人を呼べることですね。自分が飼っていて胸が張れるというか、いつでも来ていいよと言える飼い方ということです

稲垣アナ:ニワトリって白いのをイメージしますが、ここのニワトリは黒いですね
高畠さん:純国産鶏で岡崎おうはん。お肉にしても良し、卵を産んでも良しという両方備えたニワトリです
稲垣アナ:今、産まれている卵は?
高畠さん:あります
産卵場にはニワトリが肩を寄せ合うように集まっていた。
稲垣アナ:これは何ですか
高畠さん:卵を産む順番待ちですね。集団行動をしないと落ち着きがないので、同じような行動をする傾向がとても強いです。人間と似ていますよね
能登半島地震直前に珠洲市に移住
高畠さんは卵を1つ手に取り、渡してくれた。
稲垣アナ:あったかい。めちゃくちゃあったかいですね

産みたての卵をいただいた。
稲垣アナ:トロっとしたなめらかさ。圧倒的な栄養の塊をいただいているような感じ。卵の概念をはるかに超えた味ですね。なんの調味料もいらないです

高畠さんは2023年9月、珠洲に移住。耕作放棄地を借り、養鶏と農業を始めた。
稲垣アナ:実際に珠洲で農園を構えて魅力はどんなことろに感じましたか
高畠さん:風景であったり、目に映ってくるものに惹かれることはあるんですけど、そこで育った人たちの人柄、それは自然環境に則しているからこそ、包み込んでくれるような温かさと器というのに惹かれている
稲垣アナ:そこからの地震はつらかったですよね
高畠さん:ニワトリを真っ先に見に行きました。あれだけの地震なのでニワトリを飼っていた鶏舎、最初に外観から見た時に壊れていたんですよね。絶望しましたけども、近づいたときにニワトリが鳴いて近寄ってきてくれたことを今でもすごく覚えています

稲垣アナ:ここのニワトリたちも金沢に二次避難してきたニワトリなんですか
高畠さん:そうですね。一緒に避難してきたニワトリは約20羽、金沢で飼い始めてから増やしたニワトリが約140羽。合計で160羽です。稲垣さんもよかったら抱いてみませんか?
稲垣アナ:いいですか。今までアナウンサーしてましたけど、ニワトリを抱くのは初めてです。あったかい。ククククって鳴いています。話しかけているみたい
高畠さん:やっぱりかわいいですね。
稲垣アナ:かわいいな。頑張ったんや。地震大変やったね。
ニワトリ:クククク

稲垣:地震の時に苦難を乗り越えたニワトリたちと共に、新しいニワトリとともに今ここでやっていると
高畠さん:そうですね。本当にこの場所でできているのは、こちらお世話になっている「ととファーム」の中村博さんであったり、その近くで農家民宿の女将をしている深谷香代さんと。なぐみさんという方がSNSで私がニワトリを将来300羽飼いたいと場所を探しているときに「農家民宿ととのや」につないで、ととファームの中村さんにつないで聞いてくれたのがマッチングのキーワードだったりします。そういったたくさんの良縁に恵まれて今を生きているような
2030年に珠洲に戻る計画
高畠さんに土地を提供している中村博さん。
稲垣アナ:高畠さんが来て何か変わりましたか?
中村さん:人の出入りも多くなったし、一人で畑してても寂しくないしね。楽しみが出てきましたよ
稲垣:若い力が頑張ってくれるって
中村さん:いいことですね

高畠さんはこの農園に多くの人に来てもらいたいと、カフェを開いたり、イベントを企画したりしている。
稲垣アナ:やっぱり珠洲に戻りたいと
高畠さん:そうですね。珠洲に戻るという計画性も自分の中ではたてています。それが2030年
稲垣アナ:5年間どのような形で道のりを考えているんですか
高畠さん:今後広げていきたいなと思うきっかけを与えてくれるのはヤギです。ミルクを使ってスイーツ分野に入っていきたい展望があります。その後はニワトリたちが将来的に卵を産めなくなってきて、そんなときはニワトリたちの肉を活用して、出汁を使ったラーメン分野に入っていきたいと思っています
稲垣アナ:どんどん夢が広がって大きくなった高畠農園で珠洲に戻るということ
高畠さん:そうですね。珠洲にただ戻って事業をするのではなくて、珠洲はどうしても人が減っていく、特に農業人口が減っていく部分があるので、課題であった耕作放棄地という問題に向き合わなければならないと思います。そんな時に必要となるのがヤギです。ヤギはエサを選り好みせずに食べてくれます。耕作放棄地にヤギを放して、食べてもらって、その場所の管理をしてもらう。ヤギ除草隊というのも視野に入れています。そういう部分も入れての2030年。夢に向かってレッツゴーっていう方が周りにどんどん増えてくると思います。そういう時代だと思っています。ぜひ一緒に動いていただける方がいたら、この映像通してでもいいですし、何か感じてもらえることあったらうれしいです

稲垣アナ:これからも頑張ってください
高畠さん:ありがとうございます
(石川テレビ)