「写真の面割(めんわり ※確認作業)なんていい加減なものなんだ。特徴的な髭面のオウム真理教幹部について最初は『間違いない』と言っていた目撃者が、後々に『断言できない』と証言を変えてくることもあったんだから」

筆者が栢木に「15年、あっという間でしたか?」と尋ねると、「そうだね。色々なことをやってきたけど、起訴に至らなかった。『敗軍の将、兵を語らず』です」と、そこから栢木の口が重くなった。
警視庁の勇み足
この事件捜査には15年間で延べ48万2千人の捜査員が投入された。
前述の佐藤氏や栢木だけでなく、多くの捜査員が人生をかけて犯人逮捕を追及したが、事件は未解決に終わった。中には志半ばで命を落とした者もいる。

文字通り警察の威信をかけた捜査だった。それが故に、最後の最後で勇み足が出てしまった。
警視庁は公訴時効成立にあたって犯人特定に至らなかったにも関わらず、オウム真理教による犯行だと発表する。
公安部は「実行犯特定に至らなくても、犯行を行った可能性のある団体について公表することは前例がある」として意地を張った。
オウムの後継団体はこれを不当だとして名誉棄損で国賠訴訟をおこし、警視庁に賠償金100万円の支払いを命じる判決が最高裁で確定した。

国賠訴訟の判決は警視庁の発表について以下の様に指摘している。