秋田市にある秋田大学の野球場は老朽化が進み、大学は取り壊しを検討している。学生にとっては大学側からの急な通告で、納得がいかない学生が多く存続を求める活動が活発化している。その動きは学内にとどまらない。
突然の取り壊し案 代替案も課題が…
秋田大学の野球場は、硬式・準硬式・軟式野球部の3つの部活、合わせて約100人が利用している。このうち週3回以上は硬式野球部が練習している。
この記事の画像(11枚)野球場は建設から74年たっていて、水はけの悪さやナイター照明の破損など老朽化が見て取れる。そんな中でも、野球部員が自ら積極的に整備・修繕にあたりながら練習に打ち込んでいるが、ある日突然大学から呼び出された。
硬式野球部の主務を務める若狭ひなたさんは「9月19日に代表者が呼び出されて、理事から『野球場を取り壊す方向で動きます』と伝えられた」と当時を振り返る。
大学側が提案したのは球場の取り壊し。大学の財政が厳しく、設備が改修できないという理由だった。その上で、閉校した秋田市の下北手小学校・中学校のグラウンドの利用を提示されたが、急な通告に部員たちは納得できなかった。
硬式野球部の嶋田青空主将は「勉強しながら野球に打ち込んできた部分も多いので、野球場が取り壊しになると今までやってきたものが崩れるような感じがして、正直『壊してほしくない』という思いが強い」と切実な思いを語る。
代わりのグラウンドは、ネットの低さや広さに問題があり、硬式野球に耐えられる環境ではない。
主務の若狭さんは「やっぱりショックが一番大きくて、これからどうしていくんだろうとか、不安な気持ちになった」と話す。
「大好きな野球を続けてほしい」
部員全員で話し合い、球場の存続を大学に求めるため、オンラインで球場の取り壊しに反対する署名活動を始めようと決めた。
中心となって署名集めに動いた若狭さんは「みんなが野球を頑張っているのを一番近くで見てきたのでこれからも続けていきたいし、みんなに大好きな野球を続けてほしいので、野球場を残すために頑張っていきたい。皆さんに協力してほしい」と呼びかける。
活動で集まった署名は6500を超え、10月30日に3つの部活の代表者が秋田大学の上田晴彦理事に意見書とともに手渡した。
上田理事は「学生から意見書なるものを受け取りましたので、これについては真摯に向き合いたい。資金のめどを付けることができれば、球場を維持・管理できるかもしれないが、そうでない場合は非常に難しい状況なので、これについては他の理事、学長含めて考えたい」と受け止めた。
この後も活動に賛同する人が県の内外から続々と現れ、提出には至らなかったものの、さらに1500の署名が学生に寄せられた。
若狭ひなたさんは「思ったよりもたくさんの署名をもらい、自分たちの思いと応援してくれる人の思いが大学側に伝わったら良いなと思うし、協力してくれた皆さんに感謝の気持ちでいっぱい」と語った。
野球場改修の優先順位は低いが…
秋田大学の南谷佳弘学長は、学生から反対署名の提出を受けた翌日10月31日の会見で、国からの交付金の減額や物価高で、大学の財政状況が厳しいことを説明した。
一方で、首都圏の一部の大学で実施される授業料の値上げは「実施しない」との考えを強調した上で、野球場の取り壊しへの反対署名が提出されたことについて「十分重く受け止めている。野球場に関しても取り壊しありきではなくて、1番の目標は厳しい財政の中で、授業料を上げないでどこまで頑張れるかというところ。なかなか野球場にかけるお金を今の状況では出せない」と述べた。
南谷学長は、野球場のグラウンド改修費を2億3000万円と試算しているとし、様々な施設が老朽化する中で「野球場は使っている人数が多いわけではないため、優先順位をつけると下位。今手を付けて直すのは難しい」と述べた。
その上で「学生にも大学の置かれている状況を説明し、意見を聞きながら方向性を決めたい」と理解を求めた。
学内にとどまらず反響を呼んでいる球場取り壊しに対する活動。果たして大学側の対応はどうなるのか、今後の動きが注目される。
(秋田テレビ)