イスラエル軍は、イスラム組織ハマスの最高指導者ヤヒヤ・シンワル氏をガザ地区で殺害したと発表した。アメリカのバイデン大統領が停戦を求める一方、イスラエルのネタニヤフ首相は人質全員の解放まで戦い続けると表明している。
「悪に打撃を与えた」イスラエル軍がシンワル氏の殺害発表
イスラエル軍は17日、ガザ地区南部で16日に実施した軍事作戦で、最高指導者のヤヒヤ・シンワル氏を殺害したと発表した。
この記事の画像(11枚)シンワル氏は、2023年10月のハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃の首謀者とされ、イスラエルにとって最大の標的の一人だった。17日、ネタニヤフ首相はエルサレムで声明を出し、「悪に打撃を与えたが、人質全員が戻るまで、全力で戦い続ける」と宣言した。また、アメリカのバイデン大統領はネタニヤフ氏と電話会談し、ガザでの戦闘を「今こそ終わらせ人質を解放する時だ」と強調した。
停戦交渉のため、近くブリンケン国務長官をイスラエルに派遣する方針だ。一方、シンワル氏殺害に関し、ハマス側からの声明などはこれまでのところないという。
顔にスカーフ…シンワル氏殺害直前の様子を公開
このニュースについて、フジテレビ・立石修解説委員室長が解説する。
青井実キャスター:
イスラエルの大規模攻撃の首謀者とされている、ハマスの最高指導者シンワル氏をイスラエル軍が殺害したと発表しました。双方にとっては、どんな意味を持つのでしょうか?
立石修解説委員室長:
シンワル氏は、ガザの現地で自らゲリラ戦を陣頭に立って指揮してきた人物で、ハマスの戦闘員にとっては「カリスマ的存在」と言えます。そのため、ハマスにとっては非常にダメージが大きいとみられています。一方で、イスラエルにとっては最大のターゲットで、これを殺害したということは、この1年で軍事的に最も大きい成果と言えます。
青井キャスター:
イスラエル軍が、シンワル氏の殺害直前の様子を公開しました。映像からどんなことが分かるのか見ていきます。
遠藤玲子キャスター:
映像は、イスラエル軍がドローンで撮影したものです。ドローンが廃虚と化した建物に侵入していき、中央奥のソファに座る男を発見します。スカーフを顔に巻いていますが、これがシンワル氏とみられる人物です。最後の抵抗なのか、左手に持っていた棒のようなものをドローンに向けて投げ込む様子が捉えられています。映像は、ここで一度終わっています。
青井キャスター:
立石さん、この映像から読み取れることは何なのでしょう?
立石解説委員室長:
シンワル氏については、イスラエル軍の精鋭部隊が1年にわたって探してきたものの、捕まえることができていませんでした。唯一、姿を確認できたのは、2024年2月にイスラエル側が公開した映像で、ハマスが造った地下トンネルをシンワル氏が側近らと移動する姿でした。このようにシンワル氏は、巧みに地下のトンネルに身を隠しながら指揮を続けてきました。
それに対し今回の映像では、シンワル氏は1人きりで、壁も完全に破壊されむき出しになった建物に座っていて、銃も所持していませんでした。この映像からは、イスラエルによるトンネル網、つまりハマスの拠点の破壊が徹底的に行われている可能性が読み取れます。
「戦争はまだ終わっていない」
青井キャスター:
シンワル氏の殺害を受け、アメリカとイスラエルの反応を見ていきます。
遠藤キャスター:
アメリカのバイデン大統領は「停戦に向けて前進する時だ」としています。一方で、イスラエルのネタニヤフ首相は「戦争はまだ終わっていない」と発言しています。
青井キャスター:
今後、ガザ地区の戦闘はどうなっていくのでしょうか?
立石解説委員室長:
停戦交渉が進む可能性があるのかについては、むしろ戦闘が強まる懸念もあるとみられています。ガザにはまだ100人以上のイスラエル人の人質がいますが、イスラエル軍は今回のシンワル氏の殺害で軍事作戦について自信を深めています。したがって、人質解放交渉よりも軍事力を使って解放を進める、つまりハマスのせん滅まで目指す可能性もあるとみられます。ハマス側も、人質の即時解放は自らの消滅につながりかねません。そのため、簡単には停戦に向かわないかと思います。
青井キャスター:
バイデン大統領も「停戦に向けて前進する」としていましたが、この先も注視していきたいと思います。
(「イット!」10月18日放送より)