教員のなり手不足が深刻な問題となる中、宮崎県内の私立学校は2023年、教員の確保に向け新たな制度を導入した。学校と教員志望者をマッチングする取り組みだ。しかし制度の認知度はまだ低く...
教員のなり手不足の深刻化
6月に行われた宮崎県内の公立学校の教員採用試験。

1次選考の受験者は962人で初めて1000人を下回り、競争倍率は過去最低の2.6倍だった。
こうした教員のなり手不足は公立だけでなく私立学校でも深刻化している。

都城聖ドミニコ学園 持永一美校長は「教員採用試験を複数回行っているところもあるのですが、募集を出したとしても応募がなかったり。特に3月は次年度の教員確保に向けて公立学校と私立学校で教員の奪い合いになっている現状は否めない」と話す。
私立学校ではこれまで、それぞれの学校法人が独自で教員の採用試験を実施してきた。教員のなり手不足が続く中、県内の私立中学校9校と私立高校14校が加入する県私立中学高等学校協会は、2023年8月からある取り組みを始めた。
それが「履歴書預かり制度」である。
履歴書預かり制度とは

これは、協会が私立学校の教員を目指す人の履歴書を一括して受け付け、年齢や専攻科目などの情報をそれぞれの学校に提供。学校のニーズと一致した場合、学校から教員志望者に直接連絡して採用試験を行うという制度だ。
県私立中学高等学校協会 田中浩一事務局長:
協会に申し込むことによって、県内の各私学に連絡がいってマッチングができるので、非常に使いやすいと思います。

都城市出身で英語の教員免許をもつ河﨑太亮さんは、これまで県内の公立中学校などで講師として勤務。協会に履歴書を送ったところ、英語の授業とソフトテニスの指導ができる教員を募集していた都城聖ドミニコ学園とマッチングし、今年度採用された。
都城聖ドミニコ学園 河﨑 太亮教諭:
自分のライフサイクルを考えることができ、転勤がないため授業や部活動でより多く生徒と関わることができるということで私学教諭を目指した。いくつかの学校から連絡をいただいたが、自分で選べるところに魅力を感じた。関わっている生徒が将来の夢を叶えたり、部活動でも目指している結果を残せるように頑張っていけたらと思っている。
協会には、この制度を導入してからの約2年間で20件の履歴書が届き、このうち4人が私立学校の教員になった。しかし、制度の認知度はまだ低いのが現状だ。
履歴書預かり制度の周知
宮崎県内の私立高校には約3割の生徒が進学する。協会では制度の周知を徹底し利用が広がることで教員不足の解消につなげたい考えである。

県私立中学高等学校協会 田中 浩一事務局長:
特に学生の皆さん、それと教員免許は持っているけれども子育てで今辞めている方、他の仕事をしている方なども、この制度でいろいろな選択ができる。この制度が今後、広まっていくことで、いろいろな人が私学に興味を持ってもらって、教員になる人が増えるのではないかと期待しています。
2024度分の履歴書の受け付けは、6月1日からスタートし、2025年3月20日まで、私立学校の教員志望者を募集している。
都城聖ドミニコ学園の持永校長によると、少子化に加え、一般企業の給与や労働時間、福利厚生の改善が進んでいることで、教員養成系の大学であっても企業への就職を希望する学生が増えているという。
教員のなり手不足は、公立学校の問題として取り上げられることが多いが、私立学校でも退職した先生に声をかけたり、今回のような制度を導入したりしてあの手この手で教員の確保に努めているのが実情だ。生徒たちがよりよい教育を受けるためにも、こうした制度の認知度が上がり、学生などの進路選択の一つになってほしい。
(テレビ宮崎)