置き場所や家の雰囲気との調和などの問題から、仏壇を置かない家が増えているそうだ。また少子化などの影響により、仏壇の引き継ぎ手がなく処分を余儀なくされるケースも増えている。こうした問題に、仏壇を手のひらサイズにリノベする取り組み始めた親子がいる。その思いとは。

仏壇を置かない家が増加

仏壇に手を合わせる人
仏壇に手を合わせる人
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信仰の対象となる本尊や先祖をまつり、手を合わせる場所として、自宅などに置かれる仏壇。以前は多くの家にあった仏壇だが、住宅事情やライフスタイルの変化によって、最近では仏壇を置かない家庭も増えている。

稲垣塗装所(静岡市)
稲垣塗装所(静岡市)

静岡市葵区にある稲垣塗装所。“木工の街”静岡で50年以上の歴史を持つ、仏壇の再生工房だ。

稲垣豊社長は「先祖の大事な仏壇をきれいに使ってもらいたいという思いがあり、預かってバラバラにして、(修復して)元通りの形に戻して返すのが仕事」と話す。
「どんなに古く傷んだ仏壇も、きれいに再生させる」を信条に、木工職人とともに仏壇の伝統を守っているそうだ。

分解された仏壇
分解された仏壇

一方で、住宅事情や少子化の影響で仏壇離れが進むとともに仏壇の跡継ぎがおらず「処分しなくてはならない」といった声が、年々増えているようだ。

仏壇を置いている人、置いていない人は、それぞれどう思っているのか。その事情を聞いてみた。

仏壇を置いていない人
仏壇を置いていない人

仏壇を置いていない男性は「実家にあったので(親を)亡くした時に、仏壇を一緒に持って来られれば良かったけど、手が回らずに無くなっちゃった。心のよりどころという気持ちもあるので、あった方がいい」と話してくれた。

仏壇を置いている人
仏壇を置いている人

また仏壇を置いているという男性は「昔の仏壇に比べればコンパクトでモダンなものを選んだ。できるだけ手入れがしやすくて、場所を取らなくてというのが判断基準」とのことだった。「子どもに仏壇を引き継ぐつもりか」と尋ねると、「考えていない。私たちで終わり。もらってくれればいいけど」と答えが返ってきた。

手のひらサイズで問題解消へ

こうした問題を解決しようと、稲垣塗装所は2024年2月 新しい取り組みをスタートさせた。

仏壇をもつ大村記者
仏壇をもつ大村記者

大村秀行記者
処分に困ってしまった大きな仏壇ですが、手のひらサイズへと生まれ変わらせるサービスが始まりました

再生された仏壇
再生された仏壇

「仏壇の日」にあたる2月27日から始めたのが、「結壇(ゆいだん)」と名付けられたサービスだ。注文を受けた仏壇を回収し、お寺で供養したあと職人が解体・加工して手のひらサイズの仏壇へとよみがえらせる取り組みだ。

仏壇の須弥壇部分
仏壇の須弥壇部分

「例えば欄間を中心に作ったり、この須弥壇の彫りの部分を主に使っている。一番印象に残っている所を材料として使って」と稲垣社長が説明してくれた。

再生された仏壇
再生された仏壇

「結壇」のコースは3つ。元の仏壇の一部分を再び活用して箱型にする「梅」。すべてを元の仏壇の部材で作る「竹」。そして、大きさや形に制約がなく、金箔(きんぱく)を施すなどのフルオーダーの「松」。

再生された仏壇
再生された仏壇

専用の位牌(いはい)やおりんなどはオプションで用意されていて、手を合わせ時以外は仏壇の中に収納することが可能だ。さらには、1つの仏壇から複数の小さな仏壇を作ることも可能なので、兄弟や親戚などと分け合うこともできる。

手を合わせる文化を次世代へ

稲垣社長と次男の亘佑さん
稲垣社長と次男の亘佑さん

構想からサービス開始まで約3年かかった。発案したのは、稲垣社長の次男・亘佑(こうすけ)さんだ。現在はIT関係の仕事をしているが、将来 事業を承継することを決めているそうだ。

 
 

稲垣社長の次男・亘佑(こうすけ)さん
自分事として考えた時に大きいサイズは置けないと思って、このサイズだったら納得して置ける、置きたいという思いでこの形にした。これからの世代である私たちが、いままで作ってきた職人たちや文化を繋いでいけたら

長年にわたって仏壇を扱ってきただけに、「手のひらサイズという発案には抵抗があった」と話す稲垣社長だが、最終的には次世代に繋げるための可能性を信じることにしたそうだ。

 
 

稲垣塗装所・稲垣 豊 社長
ここまでコンパクトにするというのは、私たち職人としたら想像できない。だけど次の世代に持っていくには、大きさや形ではなく、手を合わせられる対象があることがすごくいいと思う。仏壇というのは、目に見えないものに手を合わせるもの。手を合わせる文化をずっと繋げていく手伝いができたらと思う

再生された仏壇
再生された仏壇

伝統ある仏壇の歴史や、手を合わせる文化を次世代に繋いでいこうという思い。この取り組みが、新しい選択肢の1つになっていくのかもしれない。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
テレビ静岡

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