緊急避妊薬(アフターピル)は、性行為後、72時間以内に服用することで避妊効果が得られるが、医師の診察が必要になることや金銭的な負担など、障壁を感じる人も少なくない。この緊急避妊薬入手へのアクセスを改善しようとする、岡山市にあるクリニックの“ある取り組み”を取材した。

緊急避妊薬入手に多くの課題残る

緊急避妊薬は、現在の日本では医師の診察や処方箋が必要になる。さらに、公的医療保険の対象外のため、診療代と薬代を合わせて1万から2万円が自己負担となっている。

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また、厚生労働省は2023年11月から、一部の薬局で、医師の処方箋なしでの緊急避妊薬の販売を試験的に認めたが、16歳以上という年齢制限や、対応できる薬局の数が少ないなど、依然として多くの課題が残っている。

オンライン診療で購入可能

岡山市北区のウィメンズクリニック・かみむらの上村茂仁院長は、県内外の中学校や高校などで年間100回を超える性教育の講演活動を行っている。

ウィメンズクリニック・かみむら 上村茂仁院長:
(クリニックに)行けなくて緊急避妊薬がもらえず、人工妊娠中絶した人も何人かいた。(患者は)いろんなことがわからないので、緊急避妊薬は怖い薬ではないか、お金が高いのではないかと、もっと気楽に広がっていく仕組みは作りやすいと思う

望まない妊娠について悩む女性を減らしたいと、上村院長は2021年から、薬局で医師のオンライン診察を受ければ緊急避妊薬を購入できる「おかやまアフターピルプロジェクト」に参加している。

現在は県内を中心に26の薬局と連携し、24時間オンラインでの診療に対応する。

緊急避妊薬は排卵を抑える働きがある飲み薬で性行為後、72時間以内に服用することで避妊効果が得られ、服用が早ければ早いほど高い確率で妊娠を防ぐことができる。

悩みを抱える女性からの相談増

上村院長のもとに届く相談は1カ月で約50件にのぼる。そこでは新たに見えてきた実態も…。

上村茂仁院長:
性被害にあった人の相談も多い。そういう人たちも見つけることができた。思ったよりも多くの患者が性被害にあっていることがこのプロジェクトでわかった

「おかやまアフターピルプロジェクト」に参加する薬局を訪れ、医師のオンライン診療を受ければ、クリニックを受診せずに緊急避妊薬を入手できるため、性被害など人に話しづらい悩みを抱える女性からの相談も増えたという。

上村茂仁院長:
個人情報は100%守られて秘密厳守。お金がなく、その場で払えなくても、その場で薬をもらえる。お金がない人や、性被害にあった人は無料にしようと働きかけている

薬局を「ワンストップセンター」に

望まない妊娠を少しでも減らし、若い世代や性被害に悩む女性を救うために。
上村院長は将来的にすべての薬局でオンライン診療が可能になってほしいという。

上村茂仁院長:
性問題は日本ではタブーだったが、(薬局が)仲立ちになってくれたら。すべての薬局が性被害にあった人に対するワンストップセンターになってほしい

■「おかやまアフターピルプロジェクト」で緊急避妊薬を入手する手順■
「おかやまアフターピルプロジェクト」のウェブサイト(https://okayama-afterpill.com/)に記載されている登録薬局を訪れ、本人確認を行う。
その後、薬局が用意した端末で医師のオンライン診療を受けたあと、その場で当日中に緊急避妊薬を受け取ることが可能。早ければ数十分以内に手渡すことが可能だという。

「おかやまアフターピルプロジェクト」では、性被害に悩んでいる女性や費用を払えない若年層に薬の無償化を図るため、クラウドファンディングも予定している。

(岡山放送)

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