住宅火災で逃げ遅れた足の悪い女性。煙が勢いよく吹き出し、テラスでうずくまったまま動けなくなったが、近隣住民と消防隊員の連携により救われた。その救助の瞬間をカメラが捉えていた。

要救助者はいないはずが…

2月28日午前11時過ぎ、福岡県小郡市で、「建物の3階から煙が出ています」との通報が入った。その8分後、消防車が到着。現場をとらえたカメラには、建物の3階から勢いよく吹き出す煙が捉えられていた。

3階から煙が出ている 視聴者撮影
3階から煙が出ている 視聴者撮影
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火事になったのは、3階建ての事務所兼住宅だ。

現場で指揮を執った久留米広域消防本部の塚本稔充消防指令は、現場の状況について「3階部分は全て焼損しているような状態でした」と述べる。また逃げ遅れについては、「最初はいないっていう情報が入っておりました」と話した。

しかし、消火活動を捉えた映像には、消防隊員の「要救ありね!要救あり!」という声が記録されていた。要救とは「要救助者」の事だ。火災が起きた住宅には、住人の女性が1人取り残されていたのだ。

近所の人に話を聞くと、逃げ遅れた女性は足が悪く、逃げ出すのに時間がかかるなか、向かいの家の住民が逃げ遅れている事に気が付き、女性に大声で話しかけて、逃げるように誘導していたという。

立ちはだかる180センチの柵

女性は、燃えさかる3階のテラス部分でうずくまったまま動けなくなっていた。3階は、すでに火が回っていたため救助するには、外からはしごをかけ、地上に下ろすしかなかった。救助活動にあたった緒方義大隊員は、「救助自体はかなり困難なものでした」と振り返る。

現場を捉えた映像には、隣の建物の屋根からはしごをかけて消防隊員が女性のいるテラスに上る様子が映されていた。女性の体にハーネスでロープを付け、高い柵まで持ち上げるが、約180センチのテラスの柵が立ちはだかり、なかなか越えられない。映像には、救助に当たった緒方隊員の「大丈夫!カラダ預けて大丈夫やけん」と女性を励ます声も記録されている。

隊員は柵をなんとか越え、はしごにつかまって女性を支えた。そして通報から約30分後、無事救助に成功した。女性はやけどを負ったが、命に別状はないという。

救助された女性の親族は、「1、2分の発見の遅れでも大変なことになった可能性はあると思います。本当に姉を助けていただいてありがとうございました」と住民と消防に感謝の言葉を述べた。

住民と消防の連携で、一人の命が救われたのだ。