ペットのネコやイヌを家族と思う飼い主にとって、地震の際のペットの避難は自分の身を守ることと同じように大切だ。静岡県内では指定避難所のうち約4割がペットを受け入れる。ペットと一緒に避難所に行く場合に備え、飼い主が日頃からやっておきたいことを動物愛護の専門家に聞いた。
飼い主は避難所で肩身のせまい思い
2024年1月1日、能登半島を襲った最大震度7の地震。石川県内では2月2日の時点で、8029人が1次避難所に身を寄せている。
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避難している人の中には、家族にイヌやネコなどのペットがいる人もいる。このため新潟市では飼い主とペットが同じエリアで生活できる避難所がある。しかし、こうした避難所は限られているのが現状だ。
![2024年1月 石川県輪島市](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/a/8/700mw/img_a8830791778059f19242b114dfb4abf8109128.jpg)
他の被災者に迷惑をかけたくないなどの理由から、ペットとともに車中泊をする人も少なくない。
ペットと車中泊をする被災者:
(避難所にイヌは)入れないことはないけど、イヌも人が多いところだとストレスがあるので、家族で一緒に車の中にいます。(避難所で)他の人にもほえてしまうので ちょっとね
ペットの飼い主は肩身のせまい思いをしている。
ペットと一緒に避難所に「同行避難」
![飼い主対象の講習会(2024年1月・静岡県清水町)](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/6/c/700mw/img_6c8a0b07a1d5a594ed688e9e5e3f68cb124724.jpg)
2024年1月中旬 静岡県清水町で、飼い主を対象にペットとの避難について考える講習会が開かれた。講習会では「周囲への配慮を忘れてはいけない」とアドバイスされた。
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静岡県東部保健所 動物愛護班・村松直紀さんは「ペットを飼うという権利とともに果たさなければいけない義務を常に意識して、災害に対する十分な備えを行い、飼い主としての責任を果たす心構えを持って」と呼びかけた。
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自宅にペットが取り残されたり飼い主とはぐれ放浪したりした東日本大震災の経験を踏まえ、静岡県は飼い主がペットとともに避難所へ避難する「同行避難」を原則としている。
「同行避難」とは災害時に自宅にとどまることが危険だと判断した時に、人とペットの双方の被害を避けるためにペットを連れて行う避難行動のことだ。
![人とペットをすみ分けする避難所が多い](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/d/a/700mw/img_dabec60897edb4b6677d95b8f82a4022139258.jpg)
東部保健所・村松直紀さんは「ペットと一緒に避難してきたらどこでも好きなところで飼育していいわけではなくて、(避難所)責任者の許可を取って決められたペット飼育スペースでお世話することになる」と説明する。
避難所には動物が苦手な人やアレルギーがある人がいることなどから、トラブルを回避するためにも避難所では人とペットの生活空間の「すみ分け」を行う。
ペットを守る日頃の備え
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そして、ペットと一緒に避難する上で重要になってくるのが日頃の備えだ。ペットのための水や食べ物、薬などは、少なくとも5日分は用意してほしいという。
県東部保健所 動物愛護班・村松直紀さん:
自分のペットが何をどれくらい食べたり飲んだりするかわかると思うので(備蓄してほしい)。慣れないものを使うことはすごく大変なので、避難用品を日頃から使っておくことも大事です
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また、不必要に吠えることのないようにしつけることや、緊急時にペットの小屋代わりとなるクレートに慣れさせるトレーニングが大切だと教える。クレートに入ったり、クレートから出たりするトレーニングのやり方も実演された。
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県動物愛護推進員・土屋偉欣さんは「クレートに入っても出られることを教えてあげるやり方で、『クレートは怖いものではない』とわからせることが大切。普段から家でもクレートの活用を取り入れてほしい」と話す。
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さらに「待て」の必要性を伝えることが大事という。避難の際にはぐれてしまったイヌやネコをようやく見つけたが、自分とペットとの間を道路が隔てていて、車が行きかったり瓦礫が散乱したりしている。こうした場合にペットが飼い主の側に来ることは危険なので、飼い主の方から迎えに行くのがいい。そこで「待て」が大事になる。土屋さんは、家の中で「待て」の練習をするように勧めた。
![参加者「主従の関係を築いていれば救える」](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/a/c/700mw/img_ac7b13a3c3631ccb5da7f936742ca01c117835.jpg)
参加者は「我が家のイヌは家族という感覚でいたが、“主従の関係”をきちんと持っていればイヌを救うことになると教えてもらい印象に残った」「備蓄品を用意しようと思った」などと感想を話し、講習会がよいアドバイスになったようだ。
避難所に飼育スペース設営グッズ
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こうした講習会は静岡市でも1月に開かれた。
静岡市内の避難所に配備されたボックスには、ペットの飼育スペースを設営するためのグッズが入っている。2022年から市内76カ所の防災倉庫に配備された。
静岡市では人の居住空間と違う場所に動物の飼育スペースを作る。簡単に設営できるように、ボックスにはマニュアルの他に、区分けに使用するロープやブルーシートなど入っている。
![飼育スペースの設営体験(2024年1月・静岡市)](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/6/7/700mw/img_67fe71f780c28a26332373de251791a3113444.jpg)
実際に飼い主たちが設営を体験してみた。駐輪場の横にペットのスペースを作る。ロープでスペースを区切り、受付の机を置く。確保したスペースで何匹ほどのイヌやネコが収容できるのか、飼い主不明のペットが来たらどうするか想定しながら、スペースを整えていく。
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25分ほどで完成した。
市ではボックスの使用方法を飼い主に知ってもらう訓練を行っている。
![静岡市の飼育スペースは屋外が多い](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/4/0/700mw/img_40f54601a563dce956623a2aa2546685147992.jpg)
県衛生課によると、2023年3月末時点でペットの受け入れが可能なのは県内35市町のうちの31市町だ。指定避難所1698カ所の762カ所で、約4割に留まっている。避難所によっては「同行避難」を受け入れていないのが現実だ。
ペットの飼い主だけではなく、ペットを飼っていない人の理解も求められている。
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静岡市動物指導センターの小野寺あゆ子さんは「避難訓練などで設営用ボックスを見てもらって、動物も避難にくると認識してもらい、受け入れに理解をしていただけたらいいなと思っています」と話す。
いざという時に飼い主自身でペットを守れるよう、日頃からの備えと心構えが大切だ。
そしてペットを家族のように大事にする飼い主の気持ちを、周りの人が理解することも必要なのだろう。
(テレビ静岡)