■10年前 ゴミムシ愛好家が寄贈 以来収蔵庫に眠っていた

新種「スズカヒメマルクビゴミムシ」提供:橿原市昆虫館
新種「スズカヒメマルクビゴミムシ」提供:橿原市昆虫館
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奈良県橿原市にある昆虫館の収蔵庫で10年間眠っていた「ゴミムシ」の標本の中に、新種が紛れていたことがわかった。

橿原市昆虫館では、貴重な昆虫の資料を後世に引き継ぐという使命の元、およそ10万点の標本を保管してきた。 10年前の2014年、この昆虫館に、全国のゴミムシを採集している市内在住のゴミムシ愛好家から、三重県鈴鹿山脈の御在所岳で採集したという「ゴミムシ」が寄贈された。

以来、昆虫館は、この「ゴミムシ」を「ヒメマルクビゴミムシ」として24時間、温湿度を管理した収蔵庫で保管してきた。

■オスの交尾器が違うことが判明 新種発見

見た目はそっくり でもオスの交尾器が異なる 提供:橿原市昆虫館
見た目はそっくり でもオスの交尾器が異なる 提供:橿原市昆虫館

そんな中、おととし12月、昆虫館が公開している画像などの収蔵データにアクセスし、この「ヒメマルクビゴミムシ」を見た千葉大学の笹川幸治准教授から、「研究用にこのゴミムシを貸し出してほしい」と連絡が入った。

笹川准教授は、「ヒメマルクビゴミムシ」と外見がそっくりなこのゴミムシを解剖。

その結果、オスの交尾器が、これまで知られている種とは違っていたことが判明した。

笹川准教授は、採集された地名にちなみ新種を「スズカヒメマルクビゴミムシ」と命名し、論文を執筆。 権威あるスイスの国際学術雑誌「Taxonomy」から新種「Nebria suzukana」として発表された。

スイスの国際学術誌「Taxonomy」から新種「Nebria suzukana」として発表
スイスの国際学術誌「Taxonomy」から新種「Nebria suzukana」として発表

■「生物の分布を解き明かすカギに」新種発見の意義

開館から35年が経過した橿原市昆虫館。

新種が発見されたのは、今回が初めてとなる。

昆虫館の学芸員池田大さんは、今回の新種の発見の意義について「この虫は飛べない虫なんです。新種は、今のところ鈴鹿山脈一帯でしか見つかっていません。はるか昔に祖先となる種が広くに分布していて、今のような地形になったときに、それぞれの山で取り残された形になります。その取り残された個体たちが、それぞれ、長い年月をかけて別の種類となった可能性があるんです。そのため、こうした新種の発見が、地質学的な新たな発見にも結びつく可能性があります。今の生物の分布を解き明かすカギになるかもしれません」と話した上で「新種が紛れていたことは、たくさんの標本を収集していたからの発見。昆虫館の収蔵庫としての意義がしっかり表に出てうれしいです」と新種発見の喜びを語った。

新種の「スズカヒメマルクビゴミムシ」は橿原市昆虫館で2月23日から25日まで展示される。