ドラマ化された人気漫画「セクシー田中さん」の原作者で漫画家の芦原妃名子さんが亡くなったニュースについて、その経緯をお伝えする。

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木村拓也キャスター:
芦原さんの訃報から一夜が明けて、二つのことがわかってきた。

一つ目が、原作者と脚本家の間に何があったのか。双方がSNSで発信をしているということ。
二つ目が、脚本をめぐりトラブルか?ドラマ化の難しさについて。どんなトラブルが起きていたのかを見ていく。

芦原妃名子さん原作の漫画「セクシー田中さん」とは?

宮司愛海キャスター:
まずは、今回ドラマ化された作品について。芦原妃名子さん原作の漫画「セクシー田中さん」は、小学館の「姉系プチコミック」で連載中だったが、2023年10月に、日本テレビで実写ドラマ化された。

主人公は、昼間は地味なアラフォーOL、裏の顔はセクシーなベリーダンサーの田中さん。そして、その田中さんを取り巻くキャラクターたちの恋模様を描いた作品だ。

作者の芦原さんは「自己肯定感の低さゆえの生きづらさを抱える人たちに優しく寄り添える作品にしたい」と話していた作品だった。

木村拓也キャスター:
非常に人気の漫画で、これがどのようにドラマ実写化されたのか、その構図を見ていく。

原作者の芦原さんが手がける「セクシー田中さん」は、小学館から発行されている。ドラマ化したのは日本テレビで、制作にあたっては脚本家が脚本を書いている。双方の主なやり取りというのは、日本テレビと小学館の間で行われていたとみられている。

「セクシー田中さん」は、2023年の6月にドラマ化の合意があって、10月から12月まで全10話が放送された。この脚本をめぐり、トラブルが起きていたという。

脚本巡って芦原さん・脚本家がSNSに投稿

宮司愛海キャスター:
ドラマ化に関わった作者の芦原さんと脚本家の方、それぞれSNSにある投稿をしていた。

まず脚本を担当した脚本家が、2023年12月24日、最終回の日にした投稿で「最後は書きたいという原作者の要望で事態に困惑」したという。

12月28日には「私が脚本を書いたのは1~8話で最終的に9・10話を書いたのは原作者です」「この苦い経験を次へ生かしこれからもがんばっていかねばと自分に言い聞かせています」などと投稿していた。

つまり、脚本家が最後の9話・10話を外れる代わりに、原作者の芦原さんが脚本を書いていた事をこの投稿で明らかにしている。

榎並キャスター:
この文面を見る限り、脚本家の方は本意では無かったということが表れているようにみえる。

宮司愛海キャスター:
一方で、原作者の芦原さんは、行方不明になる3日前に、SNSにドラマ化をめぐる経緯とトラブルを投稿していた。

小学館と再確認しながら書いたという文章の中で、日本テレビのドラマ制作側に、2つの条件を提示していた事を明かした。

1つは、「必ず漫画に忠実に」忠実でない場合はしっかりと加筆修正すること。

2つ目は、終盤はドラマオリジナルパートにすること。「原作者があらすじからセリフまで用意」するということで、これはドラマオリジナルの部分が、まだ連載中の漫画に影響を及ぼさないためにするもので、場合によっては脚本家自体を芦原さんが執筆する可能性もあるとしていたわけだ。

こうした条件を何度もドラマ制作側に確認していたが、守られなかったとして、芦原さんは残念に思っていたようだ。

“トラブル”の具体的な事例は?

芦原さんは投稿した文章の中で、脚本をめぐるトラブルの具体的な事例もあげていた。

「あえてセオリーを外して描いた展開を、よくある王道の展開に変えられてしまった」こと。
②個性の強い「各キャラクターが原作からかけ離れた別人のキャラクターに変更」されたこと。
「性被害未遂、アフターピル、男性の生きづらさなど、作品の核として大切に描いたシーンが大幅カットや削除される」ということだ。

原作者の芦原さんは、制作スタッフとドラマの内容について一度も直接話をしたことがないとも伝えていた。

元民放ドラマP「原作者が脚本を書くことは異例」

木村拓也キャスター:
原作者が脚本を手がける事について、ある元民放のドラマプロデューサーは、「脚本担当が途中で代わることや、原作者が脚本を書くことは異例」ということだった。

ドラマの制作側が気をつけるポイントは、「作品の本質からぶれない」ことだという。
また、原作から変える濃淡については原作者次第で、原作から変えてもいい人もいれば、中には世界観を変えないで欲しいという人など様々いる。

元民放のドラマプロデューサーによると、今回の「セクシー田中さん」については、多くのテレビ局がドラマ化をしたかった人気作品で、原作者の芦原さんは比較的、条件を提示される方と言う印象を持ったという。

自ら担当の脚本について「力不足が露呈する形となり反省しきり」

原作者が脚本を執筆するという異例の対応になった今回のドラマ化だが、一体何があったのか。芦原さんは、ドラマ終盤で起きたトラブルについても投稿で明らかにしている。

①日本テレビから、8話~10話の脚本がまとめて提出されたこと。
②その脚本は内容が芦原さんのものから大幅に改変されていて、ベリーダンスの表現も間違ったものがあったこと。
③原作者が用意したあらすじや台詞をそのまま脚本に落として欲しい、足りない箇所や変更、意見ももちろん伺うので、脚本として改変した形ではなくて、別途相談してほしい、というような事を返したということ。
④また日本テレビからは大幅に変えられたプロットや脚本が提出されたという。
⑤小学館側が「当初の約束通りに」と日本テレビに連絡し、これが数回繰り返されたと芦原さんは聞いていたという。

それがなかなか変わらないまま4週間が過ぎ、時間的にも限界を感じた芦原さんが、9話・10話、ラスト2話の脚本を担当することにしたという。芦原さんが投稿した文章にはこのように書かれていたのだ。

宮司愛海キャスター:
そして芦原さんは投稿の中で、自ら担当した9話・10話の脚本についてこのように綴っている。

「何とか皆さんにご満足いただける9話、10話の脚本にしたかったのですが…素人の私が見よう見まねで書かせて頂いたので私の力不足が露呈する形となり反省しきりです」

日本テレビは“意向”を伝えられていなかったか

原作者とドラマ制作側で、一体何があったのか?

あるフリーのプロデューサーに取材すると、あくまで日本テレビ側から聞いた話として、「日本テレビは芦原先生の意向を小学館側から正確に伝えられていないようだ」「原作を変えてほしくないことを脚本家も聞いていなかったようで気の毒」などと話していた。

一方、小学館側だが、芦原さんがブログやXで投稿した条件や意向が、日本テレビ側に伝わっていなかったという情報があるという点について確認したところ、「広報室として出したコメントとHPに出したコメント以上のことは答えることができない」という回答だった。
(「イット!」1月30日放送より)

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