悪質な違反が相次ぐ自転車の取り締まりに、「青切符」が導入される。警察庁は、2024年の法改正を目指す。

日常的に幅広く利用される身近な交通手段、自転車のあり方が大きく変わることになる。

自転車事故が2年連続で増加 死亡重傷事故の7割で自転車側に違反が

警察庁によると、全国の交通事故が減る一方で、2022年の自転車の事故は6万9985件で、2年連続で増加し、歩行者との事故も増えている。死亡や重傷事故は7107件で、このうち7割以上で自転車に安全運転義務違反や信号無視、一時不停止などの違反があった。

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事故に繋がる危険な運転や指導警告に従わない場合は、刑事処分が問われる「赤切符」の対象となり、2022年の1年間で2万4549件が検挙され、この10年間で3倍以上になった。

青切符の対象となる違反や具体的な取り締まり方法は?

現在の「赤切符」は手続きに時間がかかり、違反者にも警察にも負担が大きい上に、実際起訴されるのは1~2%だ。こうした実態を背景に導入されることになった「青切符」。自動車や電動キックボードと同じように、反則金の支払いが求められることになる。

自転車に免許は不要だが、交通ルールの理解があり、原付免許が取得可能で電動キックボードも利用出来る16歳以上が対象だ。

これまでも違反が目立った信号無視、一時不停止、右側通行や徐行せずに歩道を通行、遮断踏切への立ち入りなど100余りの違反が対象で、今回新たに「ながら運転」など携帯電話の使用が盛り込まれた。反則金は5000円から1万2000円程度の見通し。

携帯電話の使用で事故に繋がるような危険な運転は、酒酔い運転や酒気帯び運転と同じ「赤切符」が適用される。酒気帯び運転についても、これまで自転車は対象ではなかったが、飲酒なしの場合に比べて、死亡重傷事故率が2倍近く高いため、今回新たに盛り込まれた。また、自転車での携帯電話使用による事故は増加傾向にあり、2022年までの5年間ではその前の5年間に比べて50%以上増えた。

こうした違反の取り締まりは、主に交通量が多い通学通勤時間帯や夕暮れ時などに、利用者が集中したり、過去にも危険な運転による事故があった場所などで行われる予定。まずは、警察が指導警告するが、従わない場合や事故につながる危険な運転は摘発される。

自転車との間隔に「思いやり」 車側にも罰則規定

また、車道を走る自転車を保護する目的で、自動車が追い抜く際に十分な間隔がない場合には、自動車には安全な速度で走行すること、自転車にはできる限り左端に寄ることを義務づける規制も設けられる。

愛媛県HPより
愛媛県HPより

「十分な間隔」の具体的な距離は法令には明記されないが、車の運転手に自転車を通過する際に「思いやり1.5メートル間隔」を呼びかけている愛媛県の取り組みを参考に、1メートルから1.5メートル程度を想定。自動車側には、「3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金」、自転車側には「5万円以下の罰金」の罰則が設けられる。

実際に自動車と自転車の事故のうち、自転車の右側部分の接触事故が10年前から増え続け、2022年には半数以上を占めた。警察庁はこうした内容を盛り込んだ道交法改正案を2024年の通常国会に提出する方針。

安全教育も強化 世代ごとのガイドライン策定へ

一方、警察庁のアンケートによると、自転車のルールを守らない理由として「ルールをよく知らない」との回答が、4割以上を占めていた。

警察庁は、自転車の安全教育にも重点をおき、今後官民協議会を設置し、世代ごとのガイドラインを策定するほか、社員に安全教育を行う企業に対する認定制度も構築する方針だ。
【取材・執筆:フジテレビ社会部警察庁担当 尾瀬真澄】

尾瀬真澄
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