山にエサが少なくなりクマやイノシシが街におりてくるニュースは、今年よく聞く。ただ静岡県下田市では、イノシシは別の理由で街にやってきていたようだ。飼い主のいないネコのために、街中にまかれたエサだ。駆除する猟師たちは「野生動物がネコエサの味をしると元に戻れない」と話す。

大型イノシシが市街地に出没

下田市の市街地に現れたイノシシ(2023年7月)
下田市の市街地に現れたイノシシ(2023年7月)
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2023年11月 静岡県下田市の市街地に大きなイノシシが現れ、猟師と警察が捕獲を試みた。
イノシシは4カ月ほど前の7月頃から市街地に毎晩のように現れ、住民に不安を与えていた。住民は「何度も見ている」と困惑の表情だ。

下田市民:
(イノシシを)よく見かけます。私は家の前でぶつかっているから。毎日のように家に来ていた

イノシシが出没する場所は、日中に大勢の市民や観光客が行き来する市街地だ。近くにはスーパーや小学校もあって被害が及ぶおそれもある。犬の散歩をしている人がイノシシに脅かされることもあり、捕獲作業が進められた。

地域ネコにあげるエサが原因か

このところ山にエサがなくてクマやイノシシが人里におりてくるニュースをよく聞くが、下田市の場合 市街地に出没する理由は、それだけではないようだ。

路上のエサを食べるイノシシ
路上のエサを食べるイノシシ

駆除を依頼された猟師でふだんは飲食店を経営する男性は「街中に置かれているネコのエサに誘引されて、山からおりてきている」と推測する。
飼い主のいないネコに与えられたエサ。エサを探しに市街地におりてきたイノシシは、ネコのエサの味を覚え、連日出没するようになったとみられる。

下田市では地域ネコを保護する団体がエサやりをしているが、この団体はネコがエサを食べ終わるのを見届けて、残りはかたづけている。
問題となっているのは深夜などにまかれ、そのまま放置されているエサだ。市内の10数カ所で、数人がまいているとみられる。

ネコエサがまかれていた場所
ネコエサがまかれていた場所

捕獲作業を続ける男性が、イノシシがよく出没する、エサがまかれる場所を案内してくれた。下田市の図書館の敷地にまかれたり、他人の敷地に無断でまかれることもあるそうだ。
静岡県には地域ネコのエサやりに関する条例などはなく、県の担当者は「地域でルールを作り、それに従ってほしい」と話す。

静岡県賀茂保健所・山本隆宏主査:
無責任なエサやりは周辺の方も迷惑する場合がありますので、地域でのルール作りが必要になってくると思います

ネコエサ入りの箱ワナにイノシシが

街中での捕獲に使う電気もり
街中での捕獲に使う電気もり

11月5日 イノシシが出没したという情報を受け出動する猟師たち。住宅地では猟銃が使えないため、使用するのは刺すと電流が流れる「電気もり」だ。イノシシを追い詰めるものの、なかなか捕まえることができない。

イノシシを追跡する車から撮影(11月20日)
イノシシを追跡する車から撮影(11月20日)

約2週間後の11月20日にも市街地に現れた。猟師と警察が追い込んでいくものの、フェンスの隙間から逃げられた。

しかし、深夜に限って仕掛けていた箱ワナには、イノシシがかかっていた。
箱ワナはイノシシが警戒して、これまではなかなか入らなかったそうだ。

箱ワナで捕獲されたイノシシ
箱ワナで捕獲されたイノシシ

昆虫のサナギや果物を入れていたが興味を示さなかったため、試しにネコのエサを置いたところイノシシが入ってきた。体重60キロ以上とみられる。ふだんなかなか入らない箱ワナの一番奥まで入り、エサを全部食べてあったことに猟師たちは驚く。

「イノシシはエサやりの犠牲に」

4カ月以上 追い続けた猟師たちは、「イノシシは地域ネコのエサやりの犠牲になった」という。

猟師・大村賢一郎さん(飲食店経営):
ネコのエサがなければ、この子もここへ出てこなかったかな。山で自然に育っていたのかな。この子は本当にネコエサの犠牲になったんだな

猟師・志田昇さん(飲食店経営):
野生動物がこういう(ネコのエサの)味を知ってしまうと、元へ戻れなくなってしまう。そういうところがある

下田市では別のイノシシも出没しているとみられ、住民の不安は続く。
飼い主のいないネコへのエサやりは、地域でルールを作りルールを守っておこなうことが求められる。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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