アメリカのIT大手メタは、政治広告にAI技術を使用した場合に明示を義務付ける方針を2024年初めに導入する予定で、違反した場合には広告掲載拒否と罰則も検討している。グーグルも同様の措置を検討しており、偽情報拡散への対策が急がれる。

メタ「政治広告のAI利用は明示義務」

アメリカのIT大手「メタ」は、フェイスブックなどの政治広告を使用した場合は、明示を義務付ける方針を明らかにした。

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メタは「フェイスブックやインスタグラムで、政治広告や、社会問題への意見広告を掲載する際、AI技術を用いて映像・音声を加工し、実在する人物が実際に行っていない発言や、行動をしたり、架空の出来事を実際に起きたように見せた場合、AI技術を使用したことを明示するよう義務づける」と発表した。

2024年初めに利用規約を改定し、従わない場合は広告掲載を拒否し、違反を繰り返した際は罰則を課すこともあるとしている。

大統領選を2024年に控えるなか、グーグルも11月中旬から政治広告に明示を義務付ける方針で、各社が対応に追われている。

「表現の自由」壊しかねない

「Live News α」では、津田塾大学教授の萱野稔人さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
今回のメタの試み、どうご覧になりますか?

津田塾大学教授・萱野稔人さん:
生成AIによる偽情報の氾濫に対しては、対策が急務であることは明らか
とくに2024年は、アメリカ大統領選や台湾の総統選があり、国際社会に与える影響を考えるなら、それらの選挙をめぐって偽情報や誤情報が増加する可能性が高い。
そうした偽情報への対策の一つが、AIで生成されたコンテンツに、それを明示するラベルをつけることだ

堤 礼実 キャスター:
そうしたラベルをつけることへの懸念などはないのでしょうか?

津田塾大学教授・萱野稔人さん:
2021年には、アメリカで不正確な情報を信じた市民が、連邦議会議事堂を占拠する事件が発生している。偽情報によって選挙結果が左右されてしまうことさえ、可能性としては否定できない。
この点で、偽情報の発信は表現の自由に含まれるのではなく、むしろ表現の自由を壊すものとして考えるべき。
生成AIの発達によって、ますます精巧な偽情報がつくり出される可能性を考えるなら、やはり対策は急務である

生成AI開発のため国際協調が必須

堤 礼実 キャスター:
今回は企業による義務化ですが、政府レベルでの対応については、いかがですか?

津田塾大学教授・萱野稔人さん:
EUも、人工的に生成されたコンテンツにラベルを付けることを義務付けるなどの、包括的なAI規制法案を2024年にも施行する予定。
ただ、こうした規制がどこまで実効性をもつことができるのかは、なかなか見通せない。というのも、たしかに生成コンテンツを検出する技術は日々進化しているが、その一方で、その検出を回避しようとする試みも止まらないからだ。
規制する側とそこから逃れようとする側の、いたちごっこがしばらくは続かざるを得ない。ただし、いたちごっこが続いても、主要国がルール作りで協調できれば、偽情報の拡散力や影響力は小さくなりうる。
生成AIの開発をめぐる国際競争が実りあるものになるためにも、その弊害やリスクを小さくするための国際協調が欠かせない

堤 礼実 キャスター:
AIの技術が発達すればするほど、私たち人間には物事を自分で見極める力が求められます。こうした対策を講じつつ、一人一人が今の時代に沿った目を持つことが求められているようです。
(「Live News α」11月9日放送分より)

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