10月31日午後、埼玉・蕨市の郵便局で発生した立てこもり事件。逮捕された86歳の男は、過去に郵便局の車両と交通事故を起こし、その対応に不満を持っていたという。
その鈴木常雄容疑者が“拳銃を取り出す”姿を、現場を取材していたカメラマンがとらえていた。
最初は「(容疑者ではなく)解放された人質」だと話す取材カメラマンとともに事件を振り返る。
動機は郵便局の車両との事故か
10月31日午後10時45分頃、蕨警察署に到着した車の中。
この記事の画像(13枚)まっすぐ前を見て、疲れた表情を見せていた鈴木常雄容疑者(86)。
鈴木容疑者は、埼玉・蕨市の郵便局で女性職員2人を人質にして立てこもった疑いが持たれている。さらに隣接する戸田市の病院で起きた発砲事件や、自宅放火についても容疑を認めているという。
「郵便局の人と話したかった」
鈴木容疑者は、2022年に郵便局の車両を相手に事故を起こし、その対応に不満があったという趣旨の説明をしていて、警察は犯行に至った経緯を調べている。
「人質のお爺さんが解放されたかと思った」
蕨市の郵便局で男が人質を取って立てこもった事件は、発生から8時間後に鈴木容疑者の身柄が確保された。
立てこもり事件を取材中、FNNのカメラは建物から姿を現した男が拳銃を手に持つ姿を撮影していた。
“拳銃を手に持つ容疑者”という衝撃的な映像を撮影した、フジテレビ撮影中継取材部の五十嵐誠紀カメラマンの証言とともに、当時の緊迫した状況、そして事件の重大性を見ていく。
ーー撮影した時はどんな状況だったか?
人質のお爺さんが解放されたかと思った。ただ様子がおかしいので、カメラをズームしたら拳銃を出したので、また驚いた次第です。
五十嵐カメラマンはこれまで、オウム真理教の事件や神戸で起きた連続児童殺傷事件、和歌山毒物カレー事件など多くの事件や災害現場を取材してきた経験があったが…
ーー昨日の事件では、どんなことを考えながら現場に向かった?
中に人質がいるかもしれない、放火されるかもしれない。大ごとにならないといいなという思いだった。
ーー空気感はこれまでと違ったか?
入り口付近が見える位置にいて、警察や機動隊の方の動きも見えたので緊張感があった。
取材した際の位置関係は、現場となった蕨郵便局の正面入り口から約50メートルのところに、五十嵐カメラマンら取材クルーが乗った車が止まっていた。
ーーこの位置からの撮影となった理由は?
規制がかかる前に(取材した)駐車場に入ることができた。その場所は、郵便局の正面が確認できる位置だった。上司に連絡し、安全な場所であることを確認して撮影を開始した。
「初めて見た…拳銃…」カメラに緊迫したやりとり
駐車場から撮影していた映像には、当時の緊迫したやりとりが収録されていた。
取材スタッフ:
蕨!蕨!蕨…。
五十嵐カメラマン:
拳銃持って立てこもりだと、相当規制線が広いんじゃない?
そして、郵便局付近の駐車場に車を止める。
取材スタッフ:
怖いな…。
五十嵐カメラマン:
(車は)後ろ向き、後ろ向き!
それで、それで、(外に)出なくていいや。
取材スタッフ:
はい、わかりました。
そして、午後3時半ごろ、容疑者が建物内から出てくる。
取材スタッフ:
警察が「手を上げろ」と言っています。
何か取り出しました。何か手で合図をしています。
何か今出しましたね。
五十嵐カメラマン:
拳銃っぽいの出してた。
取材スタッフ:
初めて見た…拳銃…。
現場の緊迫した様子が伝わる取材映像。この時の様子について、さらに五十嵐カメラマンはこう話す。
ーー鈴木容疑者は何か叫んでいた?
五十嵐カメラマン:
安全のために車の窓を1カ所、5cmしか開けていなかったので聞き取ることはできなかった。
ーー男が拳銃を持っていることは知っていた?
五十嵐カメラマン:
病院の事件と立てこもりの場所が車で10分ほどの近い距離だったので、同一犯かもしれないとは考えは頭にあったが、確証はなかった。
“銃を手に持つ男”の映像は、犯人の表情や銃の扱い方などがよく伝わってくる貴重なものだった。
30年以上の長いキャリアをもつ五十嵐カメラマンに、拳銃を所持した姿を見るのは何回目か最後に聞くと、「拳銃を持った容疑者の撮影はカメラマン歴33年で初めてです。そうそうないと思うが、こういう現場を映像で報道することでわかることは多いと思う。カメラマンとしては撮影できてよかった」と話した。
(「イット!」 11月1日放送より)