東北地方を中心に、各地でクマの目撃や襲撃が相次ぐ中、静岡県河津町の山中でクマがシカ対策のくくり罠にかかり、地元住民に衝撃を与えた。なぜなら、伊豆半島ではクマが絶滅したと考えられていたからだ。

伊豆半島でクマ発見の衝撃

10月20日。河津町にある二本杉峠付近で、シカによる被害を防ぐために林野庁・伊豆森林管理署が仕掛けた「くくり罠」にオスのツキノワグマがかかっているのが見つかった。

くくり罠にかかったクマ(提供:体感型動物園iZoo)
くくり罠にかかったクマ(提供:体感型動物園iZoo)
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クマは体長120センチほどで、麻酔で眠らせた後に罠を外し、山へと戻された。

この知らせに河津町の住民には衝撃が走った。

なぜなら、伊豆半島では昭和初期まで野生のツキノワグマが生息していたものの、その後、絶滅したと考えられていたからだ。2年前には、西伊豆町で罠にかかったツキノワグマが発見されているが“迷いグマ”と見られている。ちなみに、伊豆半島でクマが見つかるのはこの時が約100年ぶりのことだった。

河津町で見つかったクマ(提供:体感型動物園iZoo)
河津町で見つかったクマ(提供:体感型動物園iZoo)

河津町に60年以上住んでいるという男性は「天城は安心な山だと思っていたが、山はつながっているのでエサを求めて来られるとちょっと怖い」と口にし、クマが見つかった山のすぐそばに住んでいるという女性は「イノシシが出たことはあるけれど、クマがいるなんて想像もしなかった」と驚きの表情を浮かべた。

2023年に入り複数の目撃情報 定住は?

ただ、伊豆半島では2023年に入り、中央部に位置する伊豆市や南端の南伊豆町でもクマの目撃情報が寄せられているほか、今回発見されたクマは「個体識別できるタグが確認できていない」ことから2年前に西伊豆町で見つかったクマとは“別”と見られている。

人の知らない間にクマが伊豆半島に“定住”した可能性はあるのだろうか?

静岡県自然保護課の小澤真典さんに話を聞いてみると「静岡県では南アルプスと富士山のふもとに個体群としてクマがいると言われている」とした上で、今回のクマについて「若いオスなので、親から離れて山づたいに来た場所が“たまたま”伊豆半島だったのではないか」と推測する。

静岡県自然保護課・小澤真典さん
静岡県自然保護課・小澤真典さん

また、仮にメスであれば繁殖している可能性も捨てきれないことから調査の検討が必要だと言うが「東北地方でクマが出現したタイミングと重なったために『静岡まで南下して来ているのでは?』と危険視する人もいるが、そういうケースには当たらないと考えられる」と断言する。

とはいえ、再び野に放たれたクマが人里に下りてくる可能性はないのか。

小澤さんは、この点についても過度な心配は要らないとしている。というのも、河津町で罠にかかったクマは、果実や野菜といった「人為的なエサに誘引されて引き寄せられて来ているわけではないし、集落に現れているわけでもないので、直接的に危険性はない」とのことだ。

ただ被害を未然に防ぐためにも、エサとなる生ゴミや落下した果実などは放置せずに処分するよう呼びかけている。

(テレビ静岡)

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