中東情勢不安から日経平均株価が下落した一方、金の価格が過去最高値を更新。米ドルへの依存を無くす動きや、新たな共通通貨の提案が出ていることから、不変の価値を持つ金が一強状態となっている可能性があると専門家は見ている。

金の価格が過去最高値を更新

中東情勢緊迫化への警戒感から、金の価格が過去最高値を更新した。

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週明けの東京株式市場の日経平均株価は、700円以上値を下げる場面もあり、終値は、2023年10月第2週末に比べて656円96銭安い、3万1659円3銭だった。

一方、中東情勢を受けて、比較的安全とされる金が買われている。

国内の金の販売価格の代表的な指標となる、田中貴金属工業の小売価格は、10月第2週末より262円高い、1グラムあたり1万233円となり、過去最高値を更新した。

9月21日以来、約3週間ぶりの最高値更新となる。

“有事のドル買い”見られず

「Live News α」では、エコノミストの崔真淑(さい・ますみ)さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
金の最高値が更新されました。崔さんは、どうご覧になりますか。

エコノミスト・崔真淑さん:
戦争など地政学リスクが高まると、景気の悪化や先が見えない不安も広がり、安全資産を持ちたいというニーズが高まる。

そこでゴールドが買われやすいのは、歴史的に何度も繰り返してきた。なぜ、ゴールドが安全資産として認められているのか、それは、その不変性が評価されるからです。

堤 礼実 キャスター:
金の変わらない価値とは、どういうことなのでしょうか。

エコノミスト・崔真淑さん:
品質を維持しやすいのがゴールドの強み。例えば、100年前のシルバーは、いまも質を保つのは難しいが、ゴールドは品質が保たれやすい。

また、ダイヤモンドのように、人工的に作れないことも大きな要因である。

ただ、世界の先行きが不透明になると、安全資産への逃避はゴールドだけでなく、アメリカのドルが買われる、いわゆる「有事のドル買い」という現象が起こるケースが多かったが、今回は、そういう現象が起きていないことは注目すべき。

堤 礼実 キャスター:
具体的には、どういうことなのでしょうか。

エコノミスト・崔真淑さん:
アメリカのドルは世界で最も強い通貨。基軸通貨とされ、貿易での支払いもドルが中心になっている。

戦争などによって、世界で先行きが読めなくなると、信頼性が高いアメリカのドルが「買われる」ことが起こりやすい局面となる。

それにも関わらず、今回はゴールド一強状態なのは、注目すべき経済的動向。これは、アメリカのドルの先行きを心配している投資家も出てきていることが影響している。

“金一強”今後も続く可能性も

堤 礼実 キャスター:
アメリカのドルへの信頼が揺らいでいるのでしょうか。

エコノミスト・崔真淑さん:
いまOPEC諸国や、南米の一部の国では、米ドルでなく中国人民元での取引や、新たな共通通貨を生み出そうと、アメリカドルへの依存を無くそうという動きが出ている。

さらには、中国やインドの台頭で、世界の覇権もアメリカ一強とも言えない時代になりつつある。

この動きがどこまで続くかわからないが、こうして経済的動向をとらえて、ゴールド一強が起きているのではないか。

個人投資家にもゴールド投資ができるよう市場整備も進んでいるので、こうした動きはさらに続く可能性がある。
(「Live News α」10月16日放送分より)

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