イスラエル軍による空爆などが続くガザ地区から脱出できない住民の人道危機が深刻化している。ガザ地区の病院では、医薬品や食料などが足りておらず、既に極限状態にあるという。

このような状況を受けて、EU(ヨーロッパ連合)はガザ地区への人道支援を急きょ、現在の3倍に増額。一方、世界各地では大規模な抗議デモも行われた。  

“ハマスメトロ”狙い陸上攻撃へ

ガザ地区の状況について、フジテレビ取材センターの立石修室長がお伝えする。

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空爆などが続く中、ガザ地区から脱出できない住民の人道危機が深刻化。イスラエル軍は、ガザ地区北部に住む約110万人の市民に、南部に避難するよう促している。

ガザ地区北部には、ガザシティというガザの中心地があり、ハマスはこの場所を活動拠点にしている。イスラエル軍はこのガザシティを狙って総攻撃を仕掛けると思われるが、その戦闘は複雑なものになることが想定される。

イギリスのデイリーメール紙が作成したハマスの地下トンネルの地図には、ガザシティーを中心に、ハマスが地下鉄のように張り巡らせたトンネルが描かれている。この地下トンネル群は“ハマスメトロ”とも言われている。

そのため、空爆では建物が壊されるだけで、地下に潜むハマスを壊滅させることはできない。そこで、イスラエルはこの地域に陸路で総攻撃をしかけるつもりで、戦いは熾烈(しれつ)なものになると予想される。

ガザの病院には多くの患者が…

一方、地上戦が始まる前から、ガザ地区の病院はすでに極限状態にあると言われていた。

ガザ地区の病院を撮影した映像には、搬送されていく多くの子供たちの姿が確認できる。

医薬品や食料なども足りておらず、深刻な危機にあるという。WHOは「イスラエルの退避命令はこういった病人たちにとっては、死刑宣告に等しい」とイスラエルを強く非難している。

このような状況を受けて、世界各国の対応も変わってきている。

EU(ヨーロッパ連合)は、ガザ地区への人道支援を、現在の3倍の7500万ユーロ(日本円で118億円)まで急きょ増額することを決定した。また、イスラエルがガザ市民に出した退避勧告についても、「短期間での退避は現実的でない」と批判している。

世界各地で大規模抗議デモ

12日、アメリカのバイデン大統領もCBSテレビのインタビューで、ハマスの完全排除は必要だとしながらも、「イスラエルがガザ地区を再び占領するのは、大きな間違い」として、パレスチナ国家の樹立と、イスラエルとの共存を探るべきだとの考えを改めて示している。

スペイン・マドリードでのデモの様子
スペイン・マドリードでのデモの様子

さらに、世界各地で大規模な抗議デモが行われた。  

デモはイギリス、ドイツ、オランダなどの欧州をはじめ、トルコやオーストラリア、アメリカなどでも行われた。ガザ地区への攻撃の非難、そしてパレスチナへの連帯を訴えるものも目立ったが、ドイツやアメリカでは、イスラエルを支持する集会もあった。

ハマスによるテロ攻撃は許せないが、今はイスラエルによるガザ地区への地上侵攻で、市民の被害が拡大することへの懸念が、世界的に高まっている状況と言える。
(「イット!」 10月16日放送より)

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