路上や公共の場で面識のない相手から、性的な嫌がらせや付きまといなどをされたと感じたことはあるだろうか。「ストリートハラスメント」と呼ばれ、世界的な課題になっているという。

この解決を目指しているのが、フランス発のビューティーブランド「ロレアル パリ」。女性が自身の価値を認め、最大限に発揮することのサポートを使命としていることから、路上や公的な場でのハラスメントを、その大きな障壁のひとつと考えている。

ストリートハラスメントの例
ストリートハラスメントの例
この記事の画像(12枚)

そこで、ウェブサイトの特設ページでハラスメントの再現映像と共に、被害を受けたときの対処法、周囲ができることを発信しているのだ。

被害を受けたら「3つの行動」で対処

まず、被害を受けたときは(1)言葉で抗議する(2)助けを求める(3)記録する。これら3つの行動を勧めている。

言葉で抗議することは大切
言葉で抗議することは大切

言葉で抗議する場合、相手の行動がなぜ不快なのかを伝え、明確な境界線を確保する。その後は相手とやり取りせず、安全な場所に避難してほしいとのことだ。

周囲に助けを求めてもいい
周囲に助けを求めてもいい

周囲に人がいれば、助けを求めても良いという。その際は相手から何を言われたか、されたかを正確に話し、服装などの特徴も伝える。しばらく一緒に居てもらっても良いという。

そして状況が安全なら、場所と相手がわかるように撮影し、公的機関などに報告するなどの対応を検討しても良い。ただし、周囲が撮影する場合は被害者の意向を確認してほしいという。

周囲は5つの選択肢からできることを

続いては、ストリートハラスメントの被害を目撃したとき。周囲の人には状況を見て、以下の5つからできることを検討してほしいという。

「気をそらす」の例
「気をそらす」の例

(1)気をそらす:道や時間を尋ねる、間に割り込む、偶然を装って物を落とす、ひっくり返す、被害者のそばに立つ

(2)誰かに頼む:近くにいる人に声をかけて状況を知らせ、何とかできないかと尋ねる。または、近くにいる公的な立場の人に頼む

(3)記録する:カメラなどで状況を撮影する。ただし、記録したものをどうするかは被害者に尋ねる。許可なく使ったり、投稿したりしてはいけない

「後で行動する」の例
「後で行動する」の例

(4)後で行動する:被害者に声をかけ、状況が許せないこと、被害者に非がないことを伝える。必要なサポートがあるか提案する

(5)直接言う:加害者に直接抗議し、良くない行動だと伝える。ただし、口論をしてはいけない。暴力を避けるため、最後の手段とするべき

加害者は自分の都合や怒りに任せて、逆上することも考えられるが、実際の状況ではどうすればいいのだろう。 ロレアル パリを日本で展開する、日本ロレアル株式会社の担当者に聞いた。

身の安全を最優先に考えつつ加害者に意思表示

――“ストハラ”に該当する、行動にはどんなものがある? 

同意なく相手の体を触る、執拗なナンパをする、偶然を装って身体的に接触する、相手の体型についてコメントするなどがあげられます。基本的に公共の場で起きるもので、被害者と加害者に面識はありません。特定の性別に限らず、誰でも被害者となる可能性もあります。

ストリートハラスメントの例
ストリートハラスメントの例

――被害を受けたときの対処のポイントは? 

被害を受けた、居合わせたどちらも共通するのですが「(加害者を逆上させるなどして)身に危険が及ばないことを最優先」にしてください。周囲に頼れる人がいないなら、加害者との境界線を確保したら、安全な場所に移動してください。

加害者への意思表示が大切
加害者への意思表示が大切

――加害者との境界線はどう確保すればいい? 

自分が「相手の行為に気づき、不快に思っている」という意思表示が大切です。例えば、満員電車で自分の体に手が不自然にあたり続けているとします。そこで「この手をどけてもらえませんか」と伝えると、不快に感じていることを意思表示できます。

危険を冒さなくてもできることがある

――周囲で“ストハラ”を見たらどうすべき?

できることをやっていただくのがベストです。危険を冒さなくてもできることはあります。例えば、加害者に直接抗議しなくても、被害者に時間を聞く、ペットボトルの水を近くでぶちまける(「気をそらす」にあたります)といったことができます。

後から声を掛けることもできることのひとつ
後から声を掛けることもできることのひとつ

――直接的に介入するかどうか、どう判断すればいい?

周囲に人がいるか、加害者と自分の体格差はどれくらいかなどの状況で判断基準は変わります。ご自身の安全を考えて決めていただくと良いでしょう。(加害者が去った後)被害者に「大変でしたね」「一緒に警察にいきましょうか?」などと声をかけることも、ひとつの方法です。

記録した映像や画像の扱いには注意を
記録した映像や画像の扱いには注意を

――周囲の人に意識してほしいことはある? 

悪いのは加害者なので、自分がベストだと考えた行動であればどんな選択をしても、責任を感じないでほしいと思います。映像などを記録した場合、扱いは被害者の意向(警察への被害届の提出の際に証拠として出すなど)に沿ってください。

被害を受けたら立ち直るために考える時間を

――“ストハラ”を受けた、目撃した際の対応で避けてほしいことは? 

ストリートハラスメントの問題に「二次被害」があります。例えば、周囲が「そんな服装してるからだよ」「自意識過剰じゃないの」といった、被害者本人の責任を問うたり、被害を軽視する反応をすると、心がもう一度傷つけられます。

被害を受けた場合、自責を感じることなく考えていただければと思います。周囲は被害を軽視する反応は避けていただきたいです。 


――不快な思いをしてから、立ち直るためには?

傷ついた気持ちを軽視しないでください。立ち直るにはどうすればいいか、考える時間をとることを勧めます。例えば、支えになる友人に連絡をする、家族と話す、自分に肯定的な発言をする、ご飯を食べる、寝る、音楽を聞く、運動をするといったことも考えられるでしょう。



世界各国の言語で見ることができる特設ページでは“ストハラ”の対処法を動画付きでも学べ、累計200万人以上が受講している。気になった人は参考にしてみてほしい。

(画像提供:日本ロレアル株式会社)

この記事に載せきれなかった画像を一覧でご覧いただけます。 ギャラリーページはこちら(12枚)
プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。