「これは殺人であって、ただのひき逃げじゃないと。凶器を車に変えただけで、これは完全な殺人だと、それはずっと主張してきました」
そう怒りをにじませたのは、2022年6月、大分・別府市で起きた死亡ひき逃げ事件で、大学生だった息子を亡くした父親です。
2022年6月、別府市野口原の交差点でバイクに乗っていた男子大学生2人が車に追突され死傷。警察庁は今月、現場から逃走した八田与一容疑者（27）を、道路交通法違反のひき逃げの疑いで、全国初の重要指名手配しました。
事件発生から約1年3カ月がたった、9月22日。
亡くなった大学生の父親や遺族を支援しているメンバーなどが別府警察署を訪れ、八田容疑者を、殺人と殺人未遂の容疑で刑事告訴。別府署は、告訴状を受理しました。
告訴状では「八田容疑者が故意にはねて殺した可能性が高い」などと訴えており、道路交通法違反から容疑を切り替えるよう求めています。
「めざまし8」は、約1年にわたって独自にこの事件を取材してきた、元徳島県警捜査一課警部の秋山博康氏と共に、現地を取材しました。
直前に被害者と“トラブル” はだしで逃走
事件が起きたのは、2022年6月29日。時刻は午後7時45分ごろ。
赤信号のため、交差点で並んで停止していた男子大学生が運転する2台のバイクに、八田容疑者の車が追突。
現場周辺の防犯カメラには、追突された2台のバイクがはね飛ばされる様子が映っていました。
火花を上げながら道路を転がるバイク。
男子大学生1人が命を落とし、もう1人は、けがをしました。バイクに乗っていた2人は友人同士で、けがをした男性は、八田容疑者とは面識はありませんでした。
一方で、直前に“トラブル”があったといいます。
被害に遭った大学生：
八田がスピーカーですごく大きい音を流していて、それを不審に思った（亡くなった）彼が、八田をちょっと見た。それにカッとなったか分からないが、言いがかりをつけてきてという感じ。本当にそれだけのことでした。
八田容疑者は、時速80㎞以上の猛スピードで追突したとみられ、現場にブレーキ痕や避けようとした形跡はありませんでした。
元徳島県警捜査一課警部 秋山博康 氏：
現場の状況からしたら“わざと”、故意。過失ではないですよね。
ノーブレーキですよ、ノーブレーキ。しかも加速して。（被害者の）証言では、自分らの方に向いてきたと。
車は、交差点の信号機の柱に衝突。八田容疑者は、車を放置したまま現場から離れ、海側に向かって逃走しました。
事件現場から約300ｍ離れた場所にある防犯カメラに残された映像には、走って移動する容疑者の姿が。途中歩いたり、再び走ったりを繰り返し、足元は“はだし”です。
元徳島県警捜査一課警部 秋山博康 氏：
裸足で逃走するなんて、誰が見たって怪しまれるから。多分八田容疑者はこの辺りの土地勘があるんで、今のこの時期（事件当時）だったら、この辺りは人がいないと知っていてこっちに走ったんだろうな。コロナじゃなかったら、観光客などの人通りも多いのだろうけど。
その後、交通量の多い幹線道路を、走って横断。
事件の2日後には、ヨットハーバーの駐車場で着ていたTシャツが見つかりました。
元徳島県警捜査一課警部 秋山博康 氏：
Tシャツを捨てたということは、逃走中に目撃者がいないか、防犯カメラがあるかすぐに分かるので、無意識に脱いで捨てたのでしょうね。
（例えば盗んだ）自転車で自宅に逃げて、逃走資金とか服とか、そういうものを準備して、県外に逃亡した可能性が高いと思います。
警察庁「殺人に近い形態」
遺族らは事件後、殺人容疑などの適用を求める署名活動を行い、21日、集まった5万人を超える署名を大分県警に提出しました。
警察庁は、その犯行や凶悪性などから、「殺人に近い形態」と判断。また、捜査次第では、殺人容疑なども今後検討の対象になるといいます。
ひき逃げには7年の時効がありますが、殺人罪には時効はありません。
亡くなった大学生の父親：
容疑者の逮捕がない限りは、私の気持ちも全然落ち着きませんし、今後一層、大分県警には頑張ってほしいなという気持ちでいっぱいです。
八田容疑者についての情報提供は、別府警察署まで（TEL：0977－21－2131）
(めざまし8 9月22日放送)
