保険金の不正請求に除草剤の散布、さらには過度なパワハラ…。多くの疑惑が浮上している中古車販売大手・ビッグモーター。富士店の元従業員がその実態について口を開いた。

富士店は除草剤の散布を否定も…

「正直、自分も撒いた経験がある」。

こう話すのは中古車販売大手・ビッグモーター富士店の元従業員だ。

ビッグモーター富士店
ビッグモーター富士店
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ビッグモーターをめぐっては店の周辺に除草剤を撒き、雑草のみならず街路樹までも枯らしてしまった疑惑が取り沙汰され、一部の店舗では散布を認めている。

元従業員が勤務していた富士店では2020年9月、車を乗り入れるための歩道整備を申請し、静岡県は安全確保のため「高木の伐採」を許可。これを受け店側は2021年1月から3月にかけて工事を行ったが、その後、工事完了後にはあったはずの店舗前の植え込みの一部が枯れたり、なくなったりしていることが発覚した。

店舗前の植え込み(上段:2021年3月/下段:2023年7月/提供:富士土木事務所)
店舗前の植え込み(上段:2021年3月/下段:2023年7月/提供:富士土木事務所)

ただ、県が2023年7月に聞き取りをしたところ「数カ月に1回草むしりやゴミ拾いはした」と説明した上で、除草剤の使用を否定。

県による土壌調査(2023年8月)
県による土壌調査(2023年8月)

しかし、県による調査の結果、植え込みがあった場所の土からは「グリホサート」と「プロマシル」という除草剤に含まれる成分が検出された。県は道路を管理する際に通常は除草剤を使わないため「意図的に散布された」とした上で、川勝知事は9月5日の定例記者会見の中で「警察に被害届を提出する」と明言。また、植え込みの復旧に要する費用と土壌調査に要した費用を請求する考えも示した。

ビッグモーター富士店前から植え込みまで”消えた”
ビッグモーター富士店前から植え込みまで”消えた”

冒頭の元従業員によれば、除草剤の散布は上司の指示に従って行ったことで、除草剤自体は「普通のホームセンターで購入した」という。特に「これを買え」とメーカー等を指定された記憶はない。「ただ『撒け』と言われて、何の悪気もなくといったらあれだが、何も考えずに撒いていた」と振り返る。散布は上司と一緒に行っていたことから、県に対する店側の説明は「嘘だと思う」と指摘する。

“厳しすぎる”環境整備点検

ビッグモーターの除草剤散布疑惑の背景には幹部による店舗巡回、いわゆる「環境整備点検」の存在を指摘する声が多い。

インタビューに応じるビッグモーター富士店の元従業員
インタビューに応じるビッグモーター富士店の元従業員

環境整備点検では月に一度、店舗の清掃状況や売り上げなどについて細部にわたるまでチェックされ、富士店の店長(当時)が環境整備点検を迎えるたびに「頭を抱えている状態。すごくナイーブな状態、ネガティブな状態になり、その付近になると機嫌が悪くなっていく」様子が印象に残っている。元従業員によれば「店の中にある自動販売機に“ほこり”がついていたらマイナス。駐車場に雑草が1つ生えていただけでもマイナス」という異常なまでの厳しさで、例えば雑草に関する指摘を受けた場合「ビフォーアフターの写真を本部に送らないといけないので、生えている写真とその後の抜き取った写真をあげる」という。

また、環境整備点検の際には「机の上に何も置かない、絶対に置いてはいけないルール」があったそうだ。

物の投げつけやLINEでの暴言 さらに…

一方、“パワハラ体質”についても問題視されているビッグモーター。元従業員も上司から「アルコール消毒液を投げられたり、パソコンのマウスを投げられたりした」と話し、マウスについては「お腹のあたりに当たった。怒っていたのかわからないが結構なスピードで投げてきた」ことをよく覚えている。さらに仕事でミスをした際には「死刑にします!」「殺してほしいの?」といった文言がLINEで送られてきたという。

他の従業員にもわかるグループ機能を使って暴言を浴びせられた
他の従業員にもわかるグループ機能を使って暴言を浴びせられた

元従業員は在籍時「いつも『辞めてやろう』『辞めてやろう』という気持ちでいた」といい、ビッグモーターについては「昔から取り残されている、昔の考えが取れていない会社」と斬り捨てた上で「お客様第一というが実際は会社のことしか考えていない」と断罪した。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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