中国・山東省のシハク市が、“串焼きの町”として、中国全土から人がやってくる人気観光地になっている。

中国で人気が爆発している串焼きの町について、現地で取材中のFNN北京支局の河村忠徳記者がお伝えする。
観光客のお目当は安くて美味しいBBQ
ここは中国の首都・北京から高速鉄道に乗り、約3時間の場所にある山東省のシハク市だ。

人口470万人のシハク市は“平凡な地方都市”とも言われ、ほとんどの中国人にとって訪れることのない場所だった。しかし、2023年3月には、シハク市の人口を超える480万人以上の観光客が訪れ、5月の大型連休の際には中国全土から人がやってきた。
そして今では、中国で「最も有名な旅行先」の一つになり、多くの観光客がこの場所を訪れている。

観光客:
蘇州市から来ました。約10時間かかりました。

観光客:
SNSのPR動画を見て、最近ブームだから来ました。

観光客たちのお目当ては、シハク市で食べられるBBQだ。メイン料理は串焼きで、肉は羊や牛、鳥など。1本の値段は約40円と非常に安い。

もちろんこの肉をそのまま食べることもできるが、シハク市では、ナンのようなものに地元特産のネギをそのまま焼かずにいれて、肉を挟んで串を抜いてから香辛料につけて食べる。肉とネギとナンの組み合わせが、絶妙で美味しいと評判だ。
BBQが「安くて美味しい」だけでなく、全国から観光客が訪れる町になった理由は他にあった。
ゼロコロナとSNSで人気爆発
BBQ会場があるシハク市の隣には多くの大学があり、ゼロコロナ政策を行っていた中国で数千人の学生が隔離対象になり、シハク市の隔離施設に送られた。

そこで配給されていた弁当の中に入っていた串焼きが、美味しいと評判になった。また、隔離を終えた学生に対して地元政府が無料で串焼きを振舞った。

そうしたことが学生の間で感謝の気持ちとして広がり、学生らは連日SNSに動画や写真を投稿した。その結果、動画や写真が拡散し「シハク市の串焼きを一度食べてみたい」と多くの人たちがシハク市に観光で集まるようになったのだ。

地元政府は、このチャンスを逃すまいと、一気にインフラを整えた。まず、多くの観光客を受け入れられるように、巨大なBBQ会場をわずか20日間で完成させた。

そして、これに合わせて最寄りの駅からBBQ会場への低価格(20円~40円程度)のバス路線も整備した。このようなスピード感は、まさに中国ならではだ。

その結果、シハク市は“串焼きの町”として、有名な旅行先の一つとなっただけでなく、今では「町興しの手本」とまで言われるようになった。そして、中国各地の地方政府が自分たちの町でもシハク市のようなブームを起こせないかと「視察」に来るようになった。
人気の裏でトラブルも発生
ただ、取材をしてみると、店側の人材確保が追い付いつかず、一部の店舗では過重労働になっているという。さらに、ある串焼き店では、満席で入れなかったお客と店側との間でトラブルも起きている。

この日は200人までの受付となっており、201人目に並んでいた男性は入ることができなかった。その結果、男性は怒ってしまい、串焼き店の店主が土下座する事態にまでなってしまった。
急ピッチで作っただけに、こうしたほころびが出てきてしまっている。

こうしたケースが増えて観光客が激減してしまうと、一気に作った巨大なBBQ会場やバス路線の維持費などが、地元政府にとって巨額の財政負担になってしまう。
「町興しの手本」とまで言われたシハク市のBBQ人気は続くのか、今後の推移に注目だ。
(「イット!」 8月14日放送より)