24日に肺炎のため亡くなったベストセラー作家・森村誠一さん(90)。執筆の合間を縫って通っていたという静岡県熱海市のカフェでも突然の訃報に触れ、惜しむ声が聞かれた。
仕事場を熱海市に構え作品に…

1965年に「大都会」で作家デビューした森村誠一さん。
1970年代からは熱海市に仕事場を構え、風景や人物像を多くの作品に活かした。2005年のインタビューでは、熱海を愛する理由について「なんともいえないおおらかな空気で、ストレスを解消するものを持っている」「観光で成り立っている土地なので、いろいろなタイプの一過性の人が来るのでおもしろい」と語っていた。

2002年からは市の依頼で、熱海の活性化に貢献するための観光小説「アタミステリー紀行」を10年にわたり、毎年 執筆した。ここでも一番にこだわったのが風景描写だ。森村さんは「風景というのは水と緑と山がないと美しくない」とした上で「この風景の三大要素が熱海にはそろっている」と話し、実際にある建物や場所を数多く作品に登場させた。
苦味の強いコーヒーを好んだ森村さん

執筆に忙しい森村さんだったが、その合間には仕事場近くにあるカフェ・デュ・シュマンに足しげく通ったという。同店のマネージャー・杉本憲治さんによると「裏メニュー的な、森村さんにだけ出しているコーヒー」があったそうだ。

森村さんが好んだのは“ニレブレンド”と呼ばれる苦味が強いコーヒーで、店手作りのケーキと一緒にお決まりの席で味わった。

ここ3~4年は新型コロナウイルスの影響で来店することはなかったが、コロナ禍以前は毎年元日に店を訪れていた森村さん。スタッフとの記念撮影に気軽に応じるなど気さくな人柄だったということで、杉本さんも「穏やかで、いつもニコニコしていて、本当に残念でならない」と悼む。その上で「熱海市にとっていろいろなことにすごく貢献してくれ、市にとってもプラスになったのではないか」と感謝の思いを口にしていた。
(テレビ静岡)