2023年3月に行われた全国高校選抜自転車競技大会で優勝を果たし、8月のインターハイでも優勝が期待される静岡北高校の丸山留依 選手。落車事故を乗り越え、挑戦を続ける親子の絆に迫った。

東海総体を制しインターハイへ

春夏“連覇”がかかる丸山留依 選手(静岡北高校・3年)
春夏“連覇”がかかる丸山留依 選手(静岡北高校・3年)
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6月16日に行われた東海総体 自転車競技・1kmタイムトライアルを圧倒的な速さで制し、インターハイの出場権を手にした丸山留依 選手(静岡北高校・3年)。3月の全国選抜に続き、春・夏連続での全国制覇に向け「満足することなく、もっとタイムを伸ばせるよう頑張りたい」と意気込む。

父であり競輪選手でありコーチでもある啓一さん
父であり競輪選手でありコーチでもある啓一さん

驚くことに丸山選手が本格的に自転車競技に取り組むようになったのは高校に入ってから。わずか2年で全国の頂点に立つほどにまで成長した強さと才能の裏には父・啓一さんの存在がある。啓一さんはまもなくプロ生活30年を迎える競輪選手で、しかも上位3割しか所属できないS級に所属する一流選手だ。丸山選手は競技を始めた理由について「父のレースをよく見ていて、自分もやりたいと思った」と話し、コーチとして二人三脚で歩み続けてきた啓一さんも「親子一緒に切磋琢磨できるという意味で良い時間が過ごせていて、息子が活躍する姿を間近で見られるのはすごくうれしい」と顔をほころばせる。

練習メニューは啓一さんが考案
練習メニューは啓一さんが考案

丸山選手はこれまで啓一さんが考えた練習メニューをベースにして、自転車競技において大切なペダリング技術などの基礎や土台を築いてきた。その甲斐もあって2年生の段階で全国大会を狙えるまでになったが、2022年6月の東海総体で悲劇に見舞われる。

競技生命を危ぶまれた大事故

落車事故で意識不明に
落車事故で意識不明に

団体戦に臨んでいた丸山選手だったが、前方を走る選手の転倒に巻き込まれる形で落車。一命こそ取り留めたものの、5日間 意識の戻らない状態が続き、日常生活に支障をきたすほどの後遺症が残ることも危惧された。丸山選手は落車した時のことも、意識が戻った時のことも記憶がなく、啓一さんは当時の心境を「息子がこれまでのように生きていけるのかという不安が大きく、再び自転車に乗る(競技に戻る)ことはその時点で想像できなかった」と振り返る。

一方、丸山選手はこの時、啓一さんとは“別の不安”を抱えていたという。それはケガや後遺症に対する怖さではなく、“自転車に乗れないこと”への不安だ。「長い間、自転車に乗ることができず、そこで乗りたいという気持ちがもっと強くなった」と話し、驚異的な回復を見せる。啓一さんは「競技をやめてほしい」との本心を抱えていたが、自転車への思いをモチベーションにリハビリに励む息子を前にすると黙って見守るしかなかった。

事故から1年経たずに全国制覇

丸山選手「父をうれし泣きさせられるように」
丸山選手「父をうれし泣きさせられるように」

そして事故から2カ月後に復帰を果たした丸山選手は、2022年3月の全国選抜で一気に同世代のトップへとのぼりつめる。この結果に「まさか好成績を収められるとは…」と驚きを隠さないものの「父が泣いていて、優勝できてよかった」と笑う。

インターハイまでは約2週間。優勝や目標とするタイム(1分3秒台)を出すことは決して簡単なことではないが「再び父をうれし泣きさせられるようにがんばる」と春の王者として貫録を見せることを誓っている。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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