45年の歴史に幕「エスタ」最後の1日

北海道札幌市の複合商業施設「エスタ」。

8月31日に閉店し、45年の歴史に幕を閉じた。

「悲しい、ここで遊んでいたから。なくなったらどうなるんだろう」(岩見沢市から来た人)

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「学生のときにアルバイトをしていた。もう店も変わってしまったけれど、前に働いていたところを見に行こうと思う」(苫小牧市から来た人)

「エスタ」へのメッセージは地下1階のメッセージボードだけでなく、8月23日からは11階のプラニスホールの壁にも書き記され、わずか1週間でエスタへの思い出で埋め尽くされた。

北海道民に愛されてきた「エスタ」。誕生は45年前にさかのぼる。

1978年に札幌駅前の複合商業施設として開業。

キーテナントに「札幌そごう」が入り、オープン初日には約4万人が訪れる華々しい門出となった。

「夫や父がここで『札幌そごう』時代に店を出していた。私の大事な時期、嫁いでから45年の私の人生と重なる」

そう語るのは「札幌そごう」時代、漬物店「やま長」を営んでいた長山佳壽子さん(65)。

現在は「プロント」と「ザ・どん」を経営し、親子3代45年に渡り「エスタ」に関わってきた。

「最初から最後までお世話になり感謝している。2人とも天国に行ったので私が代わりに、きょうは感謝を述べに来た。父の分も、夫の分も『エスタさん、ありがとうございます』と」(長山さん)

「札幌そごう」はバブル崩壊により経営が悪化。2000年の大みそかに、惜しまれながら閉店した。

キーテナントを失った「エスタ」だったが、7か月後には新たなテナントとして「ビックカメラ」がオープン。

2003年には「JRタワー」も開業。JR札幌駅前はにぎわいが増し、身近な存在として親しまれてきた。

しかし、北海道新幹線延伸に伴うJR札幌駅周辺の再開発により、8月31日をもって45年の歴史に別れを告げた。

さまざまな人が、自分なりの”エスタ納め”をしていた。

「札幌ら~めん共和国」には長蛇の列

北海道各地のラーメンを札幌市から全国に発信することをコンセプトに、2004年にオープンした「札幌ら~めん共和国」。

開業わずか1か月で年間目標の4分の1の集客を達成するなど、大成功を収めた。

「みなさんエスタ閉館まで残りわずかです。やり残したことはありませんか? お食事やお買い物、エスタ最終日を心おきなく楽しんでください。以上、森本稀哲でした!」(北海道日本ハムファイターズ 森本 稀哲 コーチ)

最終日のアナウンスは、かつて「札幌ら~めん共和国」のアンバサダーを務めた、北海道日本ハムファイターズの森本稀哲コーチが特別に担当。

「2人ともラーメンがとても好きで、最終日なので最後の思い出作りで来ました。ラーメンで育まれた友情といっても過言ではない」(20代女性)

最終日は長蛇の列が途切れることはなかった。

”プリ納め”する人も

「プリントシールにはまっていたので、あそこに行こうとよく来ていた」(30代女性)

平成の初期に大ブームとなったプリントシール機。

「エスタ」9階の「ナムコ」は北海道最大級の設置数を誇っていた。

「最後のプリを撮りに来ました。めっちゃ、悲しいです。もう、行く場所ないです。うちらの青春」(10代女性)

最終日は”プリ納め”をする若者でにぎわっていた。なかには、

「やり方がわからないね、久しぶりすぎて。助けて!」(40代女性)

約20年ぶりに友人とプリントシール機を楽しむ3人組。

「エスタ最終日なんで私たちの青春を。『あの頃に戻りたいね』って。全然、何もできませんでした」(40代女性)

いつの時代も若者の青春スポットだったプリントシール機。「ナムコ」は9月15日に隣の「東急百貨店」にお引越し。

しかし、同じフロアにある「あそびパーク」は8月31日で営業終了。

子どもたちが”遊び納め”に来ていた。

「悲しい。ここがなくなったら『アリオ』にも同じあそびパークがあるから、そこで遊びたい」(小学1年生)

「エスタとともに卒業」”仕事納め”の人も

そして、お客さんだけではなく”仕事納め”になる人も。

「もう、これで私も卒業です、77歳ですから。十分働かせていただきました」

「エスタ大食品街」の「とんかつ玉藤」で30年以上働く三浦恵美子さん(77)。

「エスタ」の営業終了をもって引退することを決意していた。

最終日の8月31日は、開店からお客さんが途切れることなく訪れていた。

「お客さんに声をかけていただいて、すごくありがたいと思います」(三浦さん)

「きょう、絶対に買わなくちゃと思って。残念ですけれど、また同じような雰囲気で再開できないかな」(来店客)

「エスタ店」で2010年に生まれ、全国の物産展で人気となるほど大ヒットした「カツカレー棒」。

ご飯とカレーを豚のヒレ肉で包み棒状に揚げたもので、1日2000本以上を販売していたという。

最終日は懐かしむ人が多く買い求め、一時完売するほど。

「最後まできちんとやっていきたいと思う。ありがとうございました」(三浦さん)

45年の歴史に幕を下ろした「エスタ」。それぞれが自分なりの”エスタ納め”をしていた。

北海道文化放送
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