「虚弱性が露呈された」

トランプ米大統領は11月の大統領選を目指して選挙運動を再開し、20日オクラホマ州タルサ市で集会を開いたが思わぬ低調さに終わった。

オクラホマ州で集会を再開したトランプ大統領
オクラホマ州で集会を再開したトランプ大統領
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トランプ選対は来場者を10万人と予想し、会場の19000人収容の屋内競技場では収容できない聴衆のために屋外にモニターも準備したが、実際に集まったのは、地元消防局の調べでは6200人にすぎず、会場には空席も目立った。

集まった人は予想を下回り6200人にすぎなかった
集まった人は予想を下回り6200人にすぎなかった

コロナウイルスの感染を恐れてトランプ支持者の足が遠のいたとも考えられたが、ビデオ中継でみる限りは会場内では大歓声こそ上がったものの、聴衆が同大統領に取り憑かれるようないつもの空気は影を潜めたように感じた。

「トランプの集会は大統領選へ向けての虚弱性を露呈した」

AP通信はこういう見出しの記事を配信し、大統領はコロナウイルス問題や警察官による黒人射殺に端を発した人種差別問題などに触れることなく、中間派の有権者特に女性票を失った。今後何か劇的なことがない限り再選の道は険しいと伝えた。

現在の選挙情勢

そこで現在の選挙情勢だが、米国の大統領選挙は49州+二つに分割されたメイン州の選挙区+ワシントンDCの合計52選挙地区で、それぞれに割り当てられた総数538人の過半数を獲得することで決することを承知した上で、定評あるReal Clear Politicsの分析を参照したい。

Real Clear PoliticsのHPより
Real Clear PoliticsのHPより

それによれば、22日現在民主党のジョー・バイデン前副大統領が大票田のカリフォルニア州やニューヨーク州など19選挙地区で222選挙人の獲得を確実もしくは優勢としており、過半数の270人まで48人と迫っている。

これにに対して、トランプ大統領が勝てそうなのは同じ19選挙地区でも割り当てた選挙人の少ない州なので、今のところ獲得が期待できるのは125人にすぎない。

残り14選挙地区の選挙人191人の行方次第だが、その中の選挙人38人のテキサス州では同州出身の共和党のジョージ・ブッシュ元大統領がバイデン氏を推薦すると伝えられるので、テキサスの他一州で勝敗を決する可能性もある。

トランプ陣営に挽回の余地はあるのか?

一方のトランプ大統領は、集会で「11月の投票日にバカなこと(バイデン 氏に投票すること)をしなければ、来年は米国史上最高の経済になる」と訴えた。現実に議会予算局などが、今年第3四半期ごろから経済がV字回復するという見通しを立てているのであながち過度な期待でもなさそうだ。

また、人種差別に対する抗議行動がエスカレートして再び略奪や放火などが広がった場合、大統領が掲げる「法と秩序の回復」に期待する票が戻るかもしれない。

トランプ大統領(左)とバイデン氏(右)
トランプ大統領(左)とバイデン氏(右)

さらにトランプ陣営が期待するのが、バイデン氏が墓穴を掘ることだ。バイデン氏は最近もコロナウイルスの米国内の被害を「85000人の失業者と数百万人の死者」と失業者と死者の数を逆に言うなど失言が多く「初期の痴呆症」とも言われている。このため民主党ではコロナウイルス対策を理由にバイデン氏が人前に立つことを極力避けているとされるが、トランプ陣営は公開のテレビ討論を少なくとも4回は実施するよう要求してバイデン氏の失言を引き出すことを狙っているようだ。

いずれにせよ、トランプ大統領は現時点で選挙が行われれば2期目の可能性は薄いと考えざるを得ないが、今後4ヶ月余りで挽回する余地も十分ある状況と言えるだろう。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン・図解イラスト:さいとうひさし】

木村太郎
木村太郎

理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。