福井の地域鉄道の駅に設置された自動販売機が鉄道ファンの心をつかんでいる。ファンが求めるのは手のひらサイズの「さびたくぎ」だ。一方、近くの住民は「全然興味がない…」と不思議そうな表情を浮かべる。

選んだ理由は“重さ” 自販機限定グッズ

福井鉄道は1912年(明治45)に創業、110年以上の歴史がある地域鉄道だ。「福鉄」の愛称で親しまれ、今も通勤や通学、買い物など地域の足として活躍している。

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越前市にある福鉄「たけふ新駅」の待合室に置いてあるのが、話題のオリジナル自動販売機だ。カラフルな超低床電車のキーホルダーや、昭和に走っていた「モハ200系」のキーホルダーなどのオリジナルグッズなどを販売している。

その中でひと際異彩を放つのが「自販機限定」の文字。値段は700円。早速、購入してみた。

福井テレビ・時田有美子記者:
購入してみます。なにこれ…?

さびたくぎ…?
さびたくぎ…?

円柱形のアクリル容器から中身を取り出すと、そこに入っていたのは大人の手のひらほどの「さびたくぎ」だった。この正体は…。

福井鉄道・白崎正臣さん:
これは「犬釘(いぬくぎ)」といいます。鉄道廃品で必要のないもの

犬釘とは鉄道のレールを枕木に固定するくぎのことだ。頭の部分が犬の顔のように見えることからその名が付いた。

しかし、通常なら廃棄されるくぎを、なぜ自動販売機で売っているのか?

福井鉄道・白崎正臣さん:
「ジャンジャンキーホルダー」を自販機で販売しようとすると重さが足りなかった。重さに見合う鉄道グッズをいれようと犬釘を選んだ

“おまけ”の犬釘が…

ジャンジャンキーホルダーとは福井市の「赤十字前駅」に設置してある看板を元につくったオリジナルグッズだ。「警報機がジャンジャンなる」という表現が話題になり「これは売れる!」と商品化した。

そして、キーホルダーのおまけとして入れたのが、今回の犬釘だった。

しかし、このさびた犬釘、需要はあるのか?たけふ新駅の隣にある「北府(きたご)駅」で聞いた。

ーー自動販売機で売られているが?

地元の人:
えー、どうして販売してるんですか?ごめんなさい、全然興味ない…

地元の人:
全然いらない

しかし、鉄道ファンの琴線には触れるようで…。

大阪から来た鉄道ファン:
犬釘でしょ。売ってるの?いくら?

思わぬ人気を魅力発信につなげたい

鉄道ファンが興味を示した理由は、この犬釘が今ではほとんど使われていないからだ。より安定した専用ボルトで固定されるようになってから、犬釘は徐々に姿を消している。何十年も地域の足を支え続けてきた貴重な鉄道遺産だ。

このほかにも、電車に電気を供給する電線「トロリ線」とジャンジャンキーホルダーのセットも販売。3月に自販機を設置して以来、県外の鉄道ファンを中心に約200個を売り上げた。

当初メインだと考えていたジャンジャンキーホルダーだが、その「おまけ」が注目される事態となった。「キーホルダーの提案者としては、犬釘などが注目されていてちょっと複雑…」と担当者は打ち明ける。

思わぬ人気となった犬釘。2024年春の北陸新幹線開業で、県外からの観光客が増える可能性が高まる中、今回のヒットを地域の魅力発信にもつなげたい考えだ。

福井鉄道・白崎正臣さん:
福井にある鉄道を全国の方に知ってもらいたい。地域の沿線の人に、福井鉄道が走っているまちに住んでいることに誇りに持ってもらうような会社になりたい

(福井テレビ)

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