脱炭素社会の早期実現が求められている昨今、SDGsに貢献するソリューションは日進月歩で開発されている。

脱炭素に貢献するシステムを開発するアイフォーコムホールディングス株式会社は、社会的ニーズの高まりを背景に成長を続けている。

同社が業界をけん引できる理由は、従業員と環境にやさしい働き方、マインド、経営理念にあった。

同社取締役・遠藤理子氏とR&Dセンター センター長・小嶋隆則氏、そして実際に現場で働く若手社員に聞いた。

聞き手:フジ・メディア・ホールディングス サステナビリティ推進室 木幡美子

地域・社会の課題解決からSDGsに取り組む

アイフォーコムホールディングス株式会社取締役・遠藤理子氏
アイフォーコムホールディングス株式会社取締役・遠藤理子氏

――アイフォーコムホールディングス株式会社はどのような会社なのでしょうか。遠藤さんに伺います。

アイフォーコムは1985年に創業したITソリューションの会社です。AIやIoTなどの技術を駆使して、環境やヘルスケア領域、また、街づくりといった公共分野で仕事をしています。

「アイフォーコム(iFORCOM)」という社名は、「アイ(i)=アイデンティティー(独自性)」「フォー(FOR)=フォーサイト(先見性)」「コム(COM)=コミュニケーション」の3つの単語に由来します。

これらは、アイフォーコムの経営スタンスを表していて、プロダクトやシステム開発のみならず、経営戦略や人材育成、社内制度などあらゆる側面においてこの3つに重点を置いています。

目指しているのは、ITを使った社会課題の解決で、みんなが住み良く暮らせる街づくりに技術を生かしたいと考えています。

――脱炭素に貢献するシステムの開発など、SDGsに熱心に取り組んでいるとも伺いました。

活動としては、私たちの会社がある相模原市の「さがみはらSDGsパートナー」に参画して、地域課題の解決に力を注いでいます。

その上で、システム開発力・技術力を生かしてSDGsに取り組んでいます。

弊社は2005年、京都議定書の頃から「脱炭素」に役立つシステムの開発に着手してきました。

当時はまだ「脱炭素」という言葉も聞かれなかった時代です。

――まさに、社名の由来にもある「フォーサイト(先見性)」がかたちになったということですね。

お客さまとコミュニケーションをするなかで、将来的なニーズを弊社としても感じていたのだと思います。

お客さまも「これから地球環境はどうなっていくんだろう?何かしなければ」という思いは抱いていたのです。

そこで私たちは、お客さまが環境負荷の軽減に対し具体的に取り組めるツールを提供してきました。

若い世代を生かしてサービスを創造

アイフォーコム株式会社 R&Dセンター センター長・小嶋隆則氏
アイフォーコム株式会社 R&Dセンター センター長・小嶋隆則氏

――アイフォーコムのサービスについて小嶋隆則さんに伺います。主力製品「エコプロ21」はどんなシステムですか?

主に電気、ガス、水道、熱といったエネルギーの消費量を可視化するサービスです。施設等の電気の使用量をグラフで見えるようにするものになります。

――どのようなメリットがあるのでしょうか。

電気を使っている人に消費量を“見える化”するだけでなく、電気の使い方を改善するコンサルティングを行うことで、電気使用量、CO2の排出量を抑える効果があります。

実際、年間1000万円規模電気代を払っている企業であれば、10%ほどのコスト削減につながります。

「エコプロ21」で電気消費量を“見える化”
「エコプロ21」で電気消費量を“見える化”

――「エコプロ21」の強みはどんなところですか。

同製品には、日本全国2500カ所、海外5カ国の導入実績があります。

そこに蓄積されてきた電力消費に関するビッグデータをAI分析し、電気の使い方を予測する「電力需要予測システム」を開発しました。

それがあれば、近い将来のさらなる省エネ、さらなる脱炭素の取り組みに寄与できると考えています。

――たとえば気温が高くなるとクーラーをたくさん使うだろう、といった予測でしょうか。

まさに、その施設が過去に使用した電力の実績データと外部の気象データを掛け合わせ、明日・明後日の電力消費がどのくらいになるのかを予測し、お客さまにグラフで情報提供をしています。

――電気を使い過ぎた場合は、システムはどう動くのでしょうか。

警報を出す閾値を設定できるのですが、電力消費がその閾値を超えそうになると省エネ担当者にメールでお知らせして、お客様に省エネアクションをとっていただく仕組みになっています。

――その他、アイフォーコムのサービスにはどのようなものがありますか?

太陽光発電とお客様の電気の使用量を予測して、電気が余っているときは蓄電池に蓄電し、足りないときには蓄電池から放電することで、電気を賢く使う事が出来、さらに脱炭素にも貢献できる「ZEB(脱炭素)エナジーDX」や、先ほどお話しした電気の使い方についてコンサルする「エコカイゼン」などがあります。

また、現在、地元自治体と国立東京工業高等専門学校の学生、そして弊社の連携、いわゆる産官学の連携で、フードロス削減に役立つ「規格外野菜」のネット販売システムを構築中です。

農家で収穫される野菜のなかには、大きさがバラバラで店頭に出せない「規格外野菜」があります。

それを有効活用できないかと学生から提案があり、各所と連携して開発を開始しました。

特にこだわっているのは、農家の方の「使い勝手の良さ」です。

そのために、学生たちに柔軟なアイデアを出してもらって開発を進めています。

――若い世代の感性や能力を生かされているのですね。

もちろん地域課題などには会社としても取り組んでいくのですが、やはり若い力が活躍してほしい。

引き続きそういったところを連携し、サービスを創造していきます。

脱炭素に貢献するシステムを創造し続けるアイフォーコム。

そこには、月並みなようでいて忘れられがちな「人を大切にする」「若い力を尊重し、生かす」という文化が根づいている。

目指すのは「笑顔循環型社会」

――ここで再び遠藤さんに伺います。働きやすい職場環境づくりも重視されているそうですね。

アイフォーコムの経営理念は「笑顔創造=(Tech for smiles)」です。

経営理念の「笑顔創造」
経営理念の「笑顔創造」

私たちは進んで笑顔を投げかけるということを指針にし、ICTによって「笑顔循環型社会」をつくっていこうと考えています。

それには、まず社員が笑顔になることが大切で、そのために働き方を「社員にやさしい」かたちにしようと努めています。

そして、社員同士が笑顔を投げかけ合いながら、笑顔をお客様、社会へと広げて、循環が生まれる状況をつくることを目標にしているのです。

――実際にどのような働き方の特徴があるのでしょうか。

たとえば、弊社はコロナ禍以前からリモート会議を推進しています。その上で、新型コロナウイルスの感染拡大以降、さらにそれが進みました。

――そこにも先見性が光りますね。

また、テレワーク率は2022年度で59.5%となっていますが、雑談などの機会が減るため、社内イベントを活発に開くなど、意識的にコミュニケーションがとれるように工夫もしています。

ホテルで行われた新入社員歓迎パーティー
ホテルで行われた新入社員歓迎パーティー

例年、新入社員の歓迎イベントも行っています。
夏は地域の夏祭りに会社として参加し、流しそうめんやスイカ割りをしたりもしています。

社内サークル活動も活発に行われている
社内サークル活動も活発に行われている

――そこはアナログなのですね。

私たちはデジタルを扱う会社ですが、人間は「アナログな存在」ですので、そこはバランスをとるようにしています。

バランスという話でいえば、弊社は各社員が仕事とプライベートの両立も図っています。

有給取得率は70%を超え、社員一人一人が余暇を楽しんでリフレッシュしているのです。

その方が生産性も高まります。

社員からは「入社してよかった」の声も

――働く“人間についても大切に考えているアイフォーコムホールディングス。現場で働く若手社員たちは、どの様に自社のことを見ているのだろうか。

左から土屋春香さん、成田廉さん、濵口健太郎さん
左から土屋春香さん、成田廉さん、濵口健太郎さん

「(入社して部署配属された後の)サポート体制がとても手厚いので、すぐ会社になじむことができました。社員一人一人が問題意識を持っているので、私も成長したいと思える職場になっています」(人材開発部門担当・土屋春香さん)

「もともと医療分野にITで携わりたいと思っていましたが、その願いがアイフォーコムで叶い、やりがいを感じています。フットサルの社内サークルでも充実した時間を過ごしています」(メディアカルソリューション開発担当・成田廉さん)

「エネルギー消費量を“見える化”する仕事をしています。弊社は90%くらいの社員がエンジニアですが、関東以外の方が結構多いです。質問をしても答えてくれる先輩ばかりで、入社してよかったと思います」(エネルギーソリューション開発担当・濵口健太郎さん)

――若い社員を積極的に採用されているのですね。

アイフォーコムは若い社員が多いのですが(社員の平均年齢は38歳)、彼らの豊かな思考力・発想力を商品開発や働き方の改善などに生かすようにもしています。

そんなメンバーと一緒に技術を創造してきたいです。

日本はこれからより顕著に人口減少社会になっていきます。

そのなかでITが果たせる役割はもっと大きくなる。

みんなが笑顔で暮らせる社会づくりを若い世代と共に創っていけたらと思っています。

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