近年、生涯スポーツとして「アウトリガーカヌー」が人気だ。その安定性や楽しさで愛好者の輪が広がると共に、自然を尊重する精神に触れ、“ゴミ拾い”の習慣が広がっている。
「すごく気持ちよかった」子どもから高齢者まで人気
神奈川県の逗子海岸で行われた、アウトリガーカヌーの体験会。

片側についている「アマ」と呼ばれる浮きが特徴的なアウトリガーカヌーは、もともと南太平洋の島々で用いられていたカヌーの一種だ。安定性が高く、生涯スポーツとして子どもからお年寄りまで親しまれている。

体験会には幼児から70代まで、88人が参加した。
10代の男の子は「こぐのが楽しかった」、40代の男性は「あんなに遠くに行けるとは思っていなかったので、すごく気持ちよかった」と話し、笑顔を見せた。

参加者も小さなゴミまで念入りに…広がる“ゴミ拾いの習慣”
エンジンなどの動力を一切使わずに、息を合わせてパドルだけで海を渡るこのスポーツは、自然を尊重する精神を大切にしている。
その一環として、体験会の前には、参加者とスタッフで一緒にゴミ拾いを実施。この日も、海岸にはプラスチックゴミなどたくさんのゴミが散乱していた。

カヌー漕ぎのパドラーたちは、海岸から沖合まで、自分たちでゴミを拾うのが習慣だ。海岸だけでなく、カヌーを漕いでいる時も、海に浮遊しているゴミを見つけると、遠回りをしてでも拾うこともあるそうだ。

日本アウトリガーカヌー協会 代表理事・尾花充さん:
海岸に落ちているゴミを拾うことは、特別なことじゃなくて、常日頃の自分たちの行動の中に染みついている。とても大切なことだし、これからも大事にしていきたいと思います。

ゴミを拾っているパドラーを見て、散歩していた人が一緒にゴミ拾いをすることもあるそうだ。カヌーを通じて、環境を守る活動の輪が広がっている。
【取材後記】
取材を終えて帰ってきたら、腕と首が日焼けで真っ赤になっていた。取材中に、日焼けを心配してくださった人がいたことをふと思い出す。
アウトリガーカヌーは6人で漕ぐチームスポーツ。力が劣る人がいたらみんなでカバーし合い、息を合わせて同じタイミングでパドルを動かす。一緒に漕ぐ仲間に対する気遣いが欠かせないスポーツだ。
その気遣いは、仲間に対してだけでなく、環境に対しても同じだ。 海岸には意図的に捨てられたゴミよりも、流れ着いたゴミの方が多い。生活圏で捨てられ、風で飛んできたものや、海を渡って海岸に上がってくるものもある。
パドラーたちは、日常生活でもゴミが出ないよう意識するようになったという。そして、その習慣はパドラー1人1人にしみついている。
アウトリガーカヌーを通して、仲間と協力すること、環境に配慮することの大切さが、海を訪れる人や次世代に引き継がれていく。
取材・執筆:杉山仁実
(「Live News days」6月14日放送より 一部情報を追加しています)